2013年06月23日 宝塚記念 G1
優勝馬:ゴールドシップ
プロフィール
- 生年月日
- 2009年03月06日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/芦毛
- 戦績
- 国内:13戦9勝
- 総収得賞金
- 1,397,767,000円
- 馬主
- 小林 英一
- 生産者
- 出口牧場 (門別)
- 調教師
- 須貝 尚介
- 騎手
- 内田 博幸
豪華G1馬が揃った上半期の総決算、宝塚記念(G1)。仁川に大歓声がこだまする中、先頭ゴールインを決めたのは雄大な芦毛の馬体を誇る4歳馬ゴールドシップ。早目進出の競馬で堂々押し切り、横綱相撲で両グランプリ制覇を成し遂げた。
本馬の生産は日高町の出口牧場。過去にはアルゼンチン共和国杯(G2)、セントライト記念(G3)を制し、積極果敢な逃げ馬として名を馳せたレジェンドテイオーや、対照的に後方からの追い込みでオープンクラスまで上り詰めたジョーヤマト、兵庫デビューからJRAに移籍し、今年のオーシャンS(G3)で4着に好走したポアゾンブラックらを生産している。
「当日は現地で見ていました。朝、競馬場に着いたらすごい人で…盛り上がりを感じました。レースは強い内容だったと思います。前走の天皇賞(春)(G1)は負けてしまいましたが、巻き返してくれましたね。最後の直線で後続馬を突き放した時は、涙が出そうになるぐらい嬉しかったです。」と、改めて勝利を振り返ってくれたのは、同牧場の出口俊一さん。フェノーメノ、ジェンティルドンナといった一流馬の対決に観衆の注目が集まる中、現地ではパドックからじっと生産馬に目をこらしていた。
「今回もとにかく無事に走ってくれることを願っていました。パドックでは馬体に張りがあって、動きは機敏に映りました。馬に元気があって、走る気になっているなと感じました。近走とは違って前目の位置からの戦法で、よく結果を出してくれましたね。ゴールの時は本当に感動しました。」
日帰りで観戦だった出口さんは、レース当日の午後11時頃に帰宅した。お祝いに駆け付けた近所の方々が帰りを待っていて、温かな“おめでとう!”の出迎えで玄関に入ったという。携帯電話にはお祝いの着信が相次ぎ、自宅にはお酒やお花が多数届けられた。
本馬は父ステイゴールド、母ポイントフラッグ、母の父メジロマックイーンという血統。父ステイゴールドは2008年当時、昨今の1、2を争う人気種牡馬とは言い難く、自身としては最も産駒数が少ない世代の中に、本馬は含まれていた。
母ポイントフラッグは本馬と同郷で、現役時代は500kgを越す大柄な牝馬として、3歳時にチューリップ賞(G3)で2着に入り、牝馬クラシックに駒を進めた。同牧場で繁殖入りし、5番仔として本馬を生んだ。芦毛同士の母仔は健やかに過ごし、仔は小柄な父ステイゴールド産駒ながら、母に似て大きな馬体に成長した。
「仔出しの良い母馬ですし、500kg台の馬になったのは母馬の遺伝でしょう。また、牧場では昔から良質なエサ、牧草を食べさせることに努め、適切な放牧時間、放牧地の状態を十分考慮して、馬を生産してきました。」という出口さんからは、大きな成果への背景を垣間見る。
一昨年、自身7頭目の仔を出産したポイントフラッグは、今年ステイゴールドを種付けし、無事受胎した。出口さんは、「体調面は良好で、順調に過ごしています。」と、近況を紹介する。母の力もさることながら、素晴らしい実績を残す“ステイゴールド×メジロマックイーン”の組み合わせから、更なる傑作を狙っている。
並みいるライバルに真っ向から勝負を挑み、圧巻の走りで栄冠を獲得した本馬。G1・4勝目のゴールは、時代を代表する馬への扉を確実に開いている。一方で、スターホースを送り出した生産者の胸中は幸福や安堵だけではない。出口さんの言葉は静かに熱を帯びて、取材ノートにペンを走らせる。
「G1馬を生産したからといって、牧場の何もかもが好転していく時代ではないと思います。昔と比べて馬産地は厳しい時代にありますが、そうした中で各牧場が踏ん張って、強い馬づくりを続けていることや、生産者に対しての理解が、もっと深まって欲しいと思います。競馬場ではいつもファンの方から声援をいただき、ありがたいです。励みになりますね。ゴールドシップには、今後も無事に走ってきて欲しいという思いです。日高の生産馬として日高を、由緒ある八大競走を制したG1馬として競馬を、大いに盛り上げる走りを見せて欲しいです。」