2013年06月06日 兵庫ダービー(DW2013)
優勝馬:ユメノアトサキ
プロフィール
- 生年月日
- 2010年04月01日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:17戦7勝
- 総収得賞金
- 17,230,000円
- 母 (母父)
- ボヤージ by クロフネ(USA)
- 馬主
- 市川 智
- 生産者
- ハクツ牧場 (新冠)
- 調教師
- 新子 雅司
- 騎手
- 坂本 和也
兵庫の3歳クラシック三冠は「菊水賞」「兵庫チャンピオンシップ (Jpn2)」「兵庫ダービー」で形成されるが、一冠目の「菊水賞」を制した牝馬ユメノアトサキが、次走に「グランダム・ジャパン」シリーズの「のじぎく賞」へ出走して優勝。そして「兵庫ダービー」へと駒を進め、1番人気の支持に応えて見事にダービー馬の栄冠も勝ち獲り、兵庫競馬における変則三冠を成し遂げた。
ユメノアトサキの生まれ故郷は、新冠町のハクツ牧場。重賞を3勝し、2003年の有馬記念(G1)でも5着(優勝馬シンボリクリスエス)した経験のあるウインブレイズも同牧場の生産馬だ。また、南関東重賞の常連だったウエノマルクンや、昨年のグランダム・ジャパンシリーズ「留守杯日高賞」を制したミスシナノなど、地方競馬へも多くの活躍馬を送り出している。
「レースは1番人気で逃げるかたちでしたから、道中のマークが厳しくなるだろうと思いながら見守っていました。何度か競りかけられましたが、最後は突き放しましたね。本当に嬉しくて、レースのビデオを何度も見返しました。坂本和也騎手の気迫あふれる騎乗も見事でしたし、馬もよく初距離をこなしてくれました。想像以上に強い勝ちっぷりで、ユメノアトサキの底力を改めて感じました」と、愛馬のダービー優勝を手放しで喜ぶのは、ハクツ牧場の村田紀次さん。「生産馬によるダービー制覇は、中津ダービー以来です」と、兵庫ダービーの成績表を眺めながら感慨深く話してくれた。その以前にダービーを制した生産馬とは、1992年の中津ダービーを制したホクセイエイカン。実に21年の月日を経て、ハクツ牧場から2頭目のダービー馬が誕生したことになる。
ユメノアトサキの母はクロフネ産駒のボヤージ。中央で7戦して勝利を挙げることはできなかったが、生まれ故郷のハクツ牧場へ戻り、2009年より繁殖生活に入った。そして、サウスヴィグラスとの交配で最初に産み落とした仔がユメノアトサキだった。「ボヤージは未勝利馬ですが、新馬戦(2着)の内容から能力のあることはわかっていました。ユメノアトサキは初仔でしたので、やや小さ目の体つきに出たものの、機敏な動きをしていました。血統的にダートが合うと思いましたし、幼少期から父サウスヴィグラス譲りのスピードを感じさせていました。実はオーナーに購入していただいた際、“ラブミーチャンみたいに化けるかもよ”と話していたほどの馬だったんです」と、ユメノアトサキの牧場時代を振り返る村田さん。その素質を見抜く目は、間違っていなかったようだ。
村田さんは、種牡馬としてのサウスヴィグラスを高く評価する。せりの際も特にサウスヴィグラス産駒へは注目し、その共通する動きや特徴を研究しているそうだ。「せりに上場されたり、競馬場で走っているサウスヴィグラス産駒の姿を見ていると、頑丈で息の長い活躍を期待できる馬が多いですね。そして、絶対的なスピード能力は確実に受け継がれていますし、本当に頼もしい種牡馬です」と、昨年の地方競馬リーディングサイアーに輝いたサウスヴィグラスに全幅の信頼を置いている。
ハクツ牧場では現在、ユメノアトサキの全弟に当たるサウスヴィグラス産駒の当歳馬が、昼夜放牧で鍛えられながらすくすくと育っている。「ボヤージの仔としては初めての牡馬です。バランスが良く、立派なトモをしています。素質はかなり高いと思っています」と、姉に続く活躍に期待を懸ける村田さん。今年もボヤージには、サウスヴィグラスを交配したそうだ。
ユメノアトサキは、7月10日に大井競馬場で行われる3歳ダート王決定戦「ジャパンダートダービー(Jpn1)」へ出走登録がある。「兵庫代表馬として、胸を張って走ってきて欲しいです」とエールを送る村田さんも、忙しい日々の牧場作業の合間をぬって、なんとか現地へ応援に駆けつけたいと思案しているそうだ。『夢のあとさき』~素敵な馬名を命名された牝馬は今、さらに大きな夢をつかもうと突き進んでいる。