2013年05月04日 京都新聞杯 G2
優勝馬:キズナ
プロフィール
- 生年月日
- 2010年03月05日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/青鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦4勝
- 総収得賞金
- 476,399,000円
- 母 (母父)
- キャットクイル(CAN) by Storm Cat(USA)
- 馬主
- 前田 晋二
- 生産者
- 株式会社 ノースヒルズ (新冠)
- 調教師
- 佐々木 晶三
- 騎手
- 武 豊
ダービーに向けての前哨戦、京都新聞杯(G2)はキズナが最後方待機から鮮やかに差し切り、断然の1番人気に応えた。
本馬の生産は新冠町のノースヒルズ。鳥取県に構える大山ヒルズと連携して生産・育成を行い、これまで数多くの重賞馬を送り出している。現役馬では天皇賞馬ビートブラックや国内外で一線級と戦っているトレイルブレイザー、マイル実績を光らせるクラレント、中距離重賞を沸かせているダコール、ヒットザターゲットといった生産馬がいる。今回の勝利は、同牧場グループとして節目の重賞90勝目となった。
「出産がひと段落していたので、今回のレースはスタッフと共に応援に行くことができました。競馬場で久しぶりの再会を果たせたスタッフは、大変喜んでいました。レースでは豪快に決め手を発揮してくれましたね。きっちり1番人気に応えてくれて、ホッとしました。」と、感想を語ってくれたのは、同牧場ゼネラルマネージャーの福田洋志さん。鋭いキレ味で圧倒するべく、堂々と直線勝負に賭けた武豊騎手の手綱からは、改めて人馬の揺るぎない信頼関係を感じたという。
本馬は名牝ファレノプシスの半弟で、父はディープインパクト。申し分のない血統馬として2010年3月5日、誕生した。同牧場アシスタントマネージャーの岡研二さんは、牧場時代をこう振り返る。「雰囲気のある馬でした。賢くて、自分が何をすべきかをよく理解していましたね。体質は強く、扱いに手を焼くことはありませんでした。」
当歳時~1歳10月まで同牧場で順調に過ごした。ケガらしいケガもなかった。母キャットクイルの馬名から、牧場現場での呼び名は「キャット」。同牧場で栄養コンサルティングを務めるスティーブ・ジャクソンさんは、同牧場の生産馬全てに定期的に評価を付けていて、本馬は常に最上ランクの「A」評価が記録されていた。入厩先となった佐々木晶三調教師もまた、秘めたる才能の高さを称賛していたという。
本馬の母キャットクイルはカナダ産馬で、半姉にパシフィカス(ビワハヤヒデ、ナリタブライアンの母)がいる。母としてファレノプシス(桜花賞(G1)、エリザベス女王杯(G1)など)、サンデーブレイク(ピーターパンS(G2))を生み、23歳となった今も同牧場で元気に過ごしている。また、その娘、孫娘が繁殖牝馬として里帰りし、ファレノプシスを筆頭に、サンデーサイレンス肌のアランダ、4勝馬ヴィクトリアアイ、G1出走歴があるアディアフォーン、ラナンキュラスらが子育てに励んでいる。
「僕が入社した年にキャットクイルは初仔のファレノプシスを出産しました。そのキャットクイルの末っ子でダービーに挑めるなんて、こんな嬉しい事はありません。後継牝馬たちも素質の高い仔を生んでいるので、続いていきたいです。」(福田さん)
皐月賞(G1)を見送り、西の重賞を連勝しての東上。風のように抜き去る末脚は、最高の舞台で試される。
「ダービーでは、彼の力を100%出し切ってくれることを願っています。」と、福田さんはエールを送る。レース当日、東京競馬場へ応援に駆け付ける岡さんは、「パドックで馬を見たら、泣きそうになるぐらい感動すると思います。」と、晴れの日を思い描いている。
東日本大震災があって、日本各地で「絆」という言葉は人々を励まし、勇気づけてきた。同じ意味を宿された駿馬は、いざダービーへ。記念すべき第80回目のダービー、5月26日が近づくにつれ、彼の故郷・新冠で、決戦の地・府中で、そして、全国のお茶の間で、その言葉は熱を帯びて飛び交うだろう。キズナとは。絆とは_。サラブレッドの頂点を決める舞台で、研ぎ澄まされた馬体から繰り出される力強い走りをもって、そのテーマはより深く語られるに違いない。