重賞ウィナーレポート

2013年05月05日 NHKマイルC G1

2013年05月05日 東京競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:マイネルホウオウ

プロフィール

生年月日
2010年04月23日 03歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:10戦4勝
総収得賞金
174,496,000円
スズカフェニックス
母 (母父)
テンザンローズ  by  フレンチデピュティ(USA)
馬主
(株) サラブレッドクラブ・ラフィアン
生産者
ヒカル牧場 (新冠)
調教師
畠山 吉宏
騎手
柴田 大知
  • 近所の牧場の皆さんと優勝の万歳
    近所の牧場の皆さんと優勝の万歳
  • 母テンザンローズと今年生まれた当歳馬(牝、父ベーカバド)
    母テンザンローズと今年生まれた当歳馬(牝、父ベーカバド)
  • 通称・サラブレッド銀座通りに牧場を構える
    通称・サラブレッド銀座通りに牧場を構える

 「ちょっと人気がなさすぎかな、と思いましたが、G1ですからね。掲示板に載ってくれれば、という思いでした。4コーナーをまわった時、良い感じで上がってきたので、これなら上の着順があるだろうと、期待していました。」

 5月5日、こどもの日、15時40分。ヒカル牧場の吉田忠夫さんは、家族と一緒にテレビ画面を見つめていた。とねっこの時から知る生産馬が直線に向くと、その脚色に胸が高鳴った。

 新冠町高江に構えるヒカル牧場は、繁殖牝馬10頭の牧場。過去には笠松から中央クラシックを沸かせたライデンリーダー、ダート重賞馬ミラクルオペラ、ナリタホマレ、ビッグロマンス、芝の中距離重賞3勝をマークしたサンライズマックスらを生産している。そして今年、生産馬マイネルホウオウが第18回NHKマイルカップ(G1)の覇者となり、昭和43年に生産馬ヒカルタカイが天皇賞(春)、宝塚記念を制して以来、ミラクルオペラで3着、サンライズマックスとライデンリーダーで4着。壁は高く立ちはだかったが、ついに越える瞬間が訪れた。嬉しい中央G1勝利を果たした。

 4コーナー14番手から繰り出したその豪脚を、吉田さんは祈るような気持ちで追っていた。「直線は声が出ましたね。その後は電話が鳴りっぱなしで…馬入れをした後に携帯を見たら、着信履歴でびっしりでした。レース後も多くの方からお祝いをいただき、本当に感謝でいっぱいです。」と、喜びをかみしめる。レース当日は長男の清孝さんが東京競馬場へ出向き、歓喜の瞬間に立ち会うことができた。

 数々の活躍馬を手がけてきた吉田さんにして、本馬の出来栄えには確かな感触があった。

 「素晴らしい馬でした。馬体は少し脚長で、気性は素直。扱いやすかったです。自信を持ってせりに出しました。」と、振り返る。1歳時、HBAサマーセールに上場され、651万円(税込)で落札された。ビッグレッドファームで育成している時は、現地で調教を見学したこともあった。現場スタッフから“心肺機能が高く、先々は重賞を勝てる器”と高い評価を耳にし、吉田さんの自信は確信へと変わっていった。

 本馬の母テンザンローズはフレンチデピュティの血を引く。関係のあった調教師、馬主の方が縁で同牧場の繁殖牝馬となった。吉田さんは、「私は古い血統が好きで、テンザンローズもそうした血統背景が魅力で導入しました。」と、その経緯を明かす。遡れば小岩井農場の基礎牝馬ヘレンサーフに辿り、その血脈からはアカネテンリュウ、オサイチジョージ、ヒシミラクルが生まれている。

 繁殖牝馬としてテンザンローズはこれまで5頭の仔を生んでおり、一昨年に父スクリーンヒーローの牡馬(競走馬名・イダス)、今年は父ベーカバドの牝馬がいる。吉田さんは、「2歳の牡馬は昨年のサマーセールで売れました(1,218万円(税込))。馬っぷりが良く、スピードがありそうです。すでに栗東・領家政蔵厩舎に入厩しているので、順調なら夏にデビューするでしょう。当歳の牝馬も元気に育っています。ともに期待しています。」と、紹介する。さすがG1馬の半弟・半妹と言われるような走りを願って。

 先日、本馬の次走予定は第80回東京優駿日本ダービー(G1)と発表された。同レースへの生産馬出走は初めてとなる。「母系にリアルシャダイが入っているので、ある程度距離はもつのではないかと思います。G1は出るだけでも大変なことですし、ましてやダービーですからね。あとは無事に走ってくれれば、という思いです。」と、吉田さんはしみじみと言葉を連ねる。G1馬ヒカルタカイから名を取ったヒカル牧場の名。その看板にふさわしい輝きを放って、栗毛の優駿は大きく羽ばたく。