2011年06月05日 安田記念 G1
優勝馬:リアルインパクト
プロフィール
- 生年月日
- 2008年05月14日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦2勝
- 総収得賞金
- 396,094,000円
- 母 (母父)
- トキオリアリティー(USA) by Meadowlake(USA)
- 馬主
- (有) キャロットファーム
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 堀 宣行
- 騎手
- 戸崎 圭太
3歳馬による安田記念(G1)という偉業は、リアルインパクトにより叶えられることとなった。
育成先となったノーザンファーム空港牧場だが、実は同じ厩舎で育成されていたのが、今年の牡馬クラシック二冠馬オルフェーヴル。この2頭が大偉業を果たすまでの課程を、調教主任の立場から見つめてきたのが藤田洋一氏だった。
「リアルインパクトもオルフェーヴルも、怪我無くあの舞台に立てたことが大きかったと思います。それも全て幼少の頃から持っていた素材を、生産やイヤリングのスタッフが無事に育成厩舎まで送り届けてくれたからなのでしょうし、また、2頭共にアクシデント無く、ここにいた時間を過ごしてくれました」(藤田氏)
そのリアルインパクトだが、セレクトセール2009に上場されたものの買い手が付かず、その後、キャロットクラブの募集馬としてラインナップされたという経緯がある。「セレクトセールの頃はちょうど馬体のバランスを崩していた時期で、だからこそ他のディープインパクト産駒に評価が集まってしまったのだと思います。ただ、育成厩舎に来てからはバランスも良くなってきて、それに応じて動きも良くなってきました」(藤田氏)
リアルインパクトの兄がオーシャンS(Jpn3)に勝利など、芝スプリント路線で活躍を続けるアイルラヴァゲイン(牡9、手塚厩舎)。藤田さんが管理している厩舎にも休養で訪れたことがあるというが、リアルインパクトは気持ちにゆとりも感じられ、キャンターの伸びやかな動きからも兄より距離適正はあるのではとの思いを持つようになっていた。
その期待通りに、東京競馬場の芝1400mで行われたメイクデビューを勝利すると、京王杯2歳S(G2)に出走。だが、そこで同じ空港牧場の坂路を駆け上がったライバルの前に苦渋を味わうこととなる。
「2着となったこのレースの優勝馬が、同じ空港牧場で育成していたグランプリボス(牡3、矢作厩舎)でした。グランプリボスにはこの後も朝日杯FS(G1)、そしてニュージーランドT(G2)にNHKマイルC(G1)と、4度に渡って先着を許していますし、いつか勝ちたいと思っている馬ですね(笑)」(藤田氏)
だが、3着に敗れたNHKマイルC(G1)では、スムーズな競馬ができれば世代でもトップクラスのマイル適正があることを証明してくれていた。これまでの歴史が物語っているように、3歳馬が勝利をおさめるのは容易なことでは無いと感じていたが、安定したレースぶり、そして斤量の差を生かせるのなら、いいレースを見せてくれるのではとの期待もあった。
好位置をリアルインパクトが回ってきたとき、もしやと思いTV画面を凝視した、先頭に躍り出た瞬間は幾度となく「行け!行け!」との声が出た。TVの画面ではアナウンサーが信じられないかのような様子でリアルインパクトの名前を呼んでいる。だが、信じられないのは、藤田氏も一緒だった。
「変な言い方かも知れませんが、勝ってみて、勝ったなと確認した感じです。それがG1レースだったというのか。確かにメイクデビュー以降は勝ってなかった馬ですからね」(藤田氏)
日本競馬史に名前を残した2頭を手がけてきたにも関わらず、藤田氏には何か特別なことを行ってきたという思いはない。
「高い素質を持った馬を、例年通りに育ててきただけです。ただ、育成調教の基本は大事にしてきたと思いますし、競馬場で能力を発揮できるだけの基礎体力は備えさせてあげたいと思っていました」(藤田氏)
夏には空港牧場へ帰ってくるプランもあるというリアルインパクトだが、秋に向けて取り組みたいことは?と質問を向けると、「打倒、グランプリボスですかね」と笑う藤田氏。それにしても3歳馬による安田記念(G1)制覇は、今後、短距離路線を目指す3歳馬に新たな道を開いたと言えるし、日本における育成技術の向上がもたらした成果とも言える。
実はリアルインパクトの果たした偉業はそれだけでは無かった。ノーザンホースパークで行われた安田記念(G1)の祝勝会で、ノーザンファーム代表の吉田勝己氏から、藤田氏はある事実を教えられた。「実は安田記念(G1)は、ノーザンファームとしてまだ勝利していなかった最後の平地G1タイトルだったそうなのです。牧場の歴史にとって最後のパーツを埋めることができたのは、やはり嬉しいですよね」(藤田氏)