重賞ウィナーレポート

2011年02月20日 フェブラリーS G1

2011年02月20日 東京競馬場 曇 良 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:トランセンド

プロフィール

生年月日
2006年03月09日 05歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:15戦8勝
総収得賞金
633,520,000円
ワイルドラッシュ(USA)
母 (母父)
シネマスコープ  by  トニービン(IRE)
馬主
前田 幸治
生産者
ノースヒルズマネジメント (新冠)
調教師
安田 隆行
騎手
藤田 伸二
  • 母シネマスコープとシネマスコープの2011(牝、父ゴールドアリュール)
    母シネマスコープとシネマスコープの2011(牝、父ゴールドアリュール)
  • 牧場スタッフの皆さん
    牧場スタッフの皆さん
  • 牧場風景
    牧場風景
  • 牧場のエントランス
    牧場のエントランス

 昨年、ダート界の頂点に立ったトランセンドには、二ヶ月半の休み明けも、逃げ馬には厳しい流れも全く関係がなかった。

 「レースを振り返ってみて、本当に強い馬になったと感心しています。改めて牧場にいた頃のことを思い返しているのですが、強さの要因が今でも分からないほどです」と笑顔を見せるのは、レース当日に6名の牧場スタッフと共に、競馬場まで応援に駆けつけた福田洋志マネージャー。牧場にいた頃はいつも元気いっぱいで目立った怪我もなく、そして賢い優等生だったトランセンドだけに、思い返してもこれといったエピソードは見あたらなかったという。

 「ジャパンカップダート(G1)の後は厩舎で調整されました。安田隆行先生を初め、厩舎の方に大事にしていただいて、順調にレースを迎えることができました。牧場にも調教の内容を伝えるFAXが届くのですが、一週前の追い切りでポリトラックのレコードを記録したように、いい状態でレースに望めると期待をしていました」(福田マネージャー)

 万全の状態で望めたとはいえ、さすがG1ということもあり、フェブラリーS(G1)は決して楽なレースとはならなかった。激しい先行争いを制した向こうに待つのは501mの直線コース。だが、トランセンドの脚色は鈍るどころか、ゴールを目指して更に力強さを増した。

 「改めてトランセンドの頑張る姿には頭が下がります。本当にここまで来ると、我々が送り出したのではなく、我々に与えられた授かりものと言えますね」(福田マネージャー)

 殊勲の母となったシネマスコープは、2月27日にゴールドアリュールを父に持つ牝馬を出産。恵まれた馬体をしており、ダートでの産駒実績が著しい父を持つ血統を考えても、牝馬ながら兄を彷彿とさせるような活躍も期待できそうだ。ちなみに今年はトランセンドの全兄弟となるワイルドラッシュの配合が伝えられている。

 「シネマスコープは仔出しの良さ、子育ての上手さと、繁殖牝馬としては申し分ありません。今年で18歳とすっかりベテランになりましたが、これからも無事に産駒を送り出したいですね」(福田マネージャー)

 生産馬としてはヘヴンリーロマンス(05年、天皇賞(秋)(G1))以来のG1馬となるが、昨年は重賞で2勝(札幌記念(G2)、金鯱賞(G2))したアーネストリー、障害重賞を勝利したイコールパートナー(東京ハイジャンプ(JG2))、ギルティストライク(東京ジャンプS(JG3))と4頭の重賞勝ち馬を送り出している。

 また、大山ヒルズで調教を積まれたラッシュストリートは佐賀記念(Jpn3)を勝利。そしてラヴェリータは名古屋大賞典(Jpn3)と、スパーキングレディーカップ(Jpn3)を優勝しただけでなく、今年はTCK女王盃(Jpn3)と、取材当日に行われたエンプレス杯(Jpn2)も勝利。昨年はグループ関係馬で過去最多となる重賞8勝をあげたが、オープン馬が好調な活躍を見せている今年は、更にその数を更新する可能性が高い。

 その重賞タイトルに、大きな勲章が加わるのかもしれない。3月26日にドバイ・メイダン競馬場で行われるドバイワールドC(G1)の招待を受諾。過去にグループ関係馬ではレギュラーメンバー、ローブデコルテなどが海外のG1レースに挑戦しているが、トランセンドのような牧場生産馬が挑むのは今回が初めてとなる。

 「ドバイの最高峰のレースに招待され、とても光栄です。未知な要素も多いのですが、トランセンドの力を信じたいと思います。ドバイにはノースヒルズと、大山ヒルズから私を含め10名のスタッフが応援に行かせてもらうことになりました。またとない機会ですし、声援を送るだけでなく、自分たちが行ってきた仕事の成果を確認できたらと思います」(福田マネージャー)

 前田幸治オーナーが、強い競走馬をこの地から送り出すために掲げた「チャレンジングスピリット」という言葉。それは牧場スタッフにも浸透し、そして誰もが現在の成績に満足することなく、更に高見を目指している。今回のドバイワールドC(G1)はノースヒルズだけでなく、日本競馬にとっても挑戦と言えるレース。でも、チャレンジングスピリットの申し子であるトランセンドなら、このレースも挑戦には終わらない結果を残してくれるはずだ。