2010年12月05日 ジャパンCダート G1
優勝馬:トランセンド
プロフィール
- 生年月日
- 2006年03月09日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:14戦7勝
- 総収得賞金
- 633,520,000円
- 母 (母父)
- シネマスコープ by トニービン(IRE)
- 馬主
- 前田 幸治
- 生産者
- ノースヒルズマネジメント (新冠)
- 調教師
- 安田 隆行
- 騎手
- 藤田 伸二
ダートの強豪が集う第11回ジャパンCダート(G1)は、前哨戦のみやこS(G3)を勝利したトランセンドが、好ダッシュからハナ奪うと、追いすがる後続馬を直線で突き放し、初のG1タイトルを手中にした。単勝1番人気での優勝は昨年のエスポワールシチーに続いて2年連続5回目。父のワイルドラッシュにとっては、初のJRA・G1レース制覇となった。
「やっぱり生産馬でのG1制覇は格別ですね」と牧場スタッフの声が弾んだ。今年はトランセンドやアーネストリーのほか、イコールパートナー、ギルティストライクなどが多様なカテゴリーで活躍しているが、生産馬のG1制覇は2005年のヘヴンリーロマンスまでさかのぼらなければならない。
「長かったですよ。でも、長かった分、みんなで心から喜べました」というのはノースヒルズマネジメントの鵜飼祐樹さんだ。当日は、牧場のテレビで大勢のスタッフとともに観戦。スタートから快調に飛ばす同馬に精一杯の声援を送ったという。「ずっとマークされるような形のレースになりましたからね。最後、突き放したかと思ったら、後ろから別の馬が迫ってきて。その時の盛り上がりは凄かったですよ。うまく言葉にできません」といまだ興奮冷めやらぬ様子で話してくれた。
先頭ゴールインを確認したあとは「みんなでハイタッチ。当歳時のトランセンドを知るスタッフは涙を流していました。だから、仕事が終わったあとの祝勝会では、みんな燃え尽きたようになってましたね」と笑った。
それにしても、トランセンドの強さはどうだろう。終始、先頭を譲らずに直線もバテるどころか、しっかりした足取りでゴールを駆け抜けた。「大柄で、馬体のバランスがよく、牧場時代から目立った馬でした。怪我や病気とは無縁で、順調に中期育成を終えて、大山ヒルズに送り出した、という印象しか残っていません」と鵜飼さんは当時をふり返った。ただ、パワーだけは牧場時代から出色だったそうで「いつも元気を余しているような、エネルギーの塊のような馬でしたね。良い意味でのやんちゃなガキ大将」というイメージが強く残っているという。
「母のシネマスコープは、トランセンドのほかサンドリオン(06年紫苑S)も産んでくれて、牧場にとっても宝物のような馬になりましたね」と褒め称える。今年はゴールドアリュールを受胎している。どちらかといえば種牡馬の特性を引き出すというから、再び砂の王者が期待できるかもしれない。
競馬場に応援に行ったというスタッフの松代徹さんは「牧場時代から当歳馬離れしたパワーの持主でしたが、いわゆるうるさい馬ではなかったですね。賢くて、人を見るような馬でした。私にとってはきれいな馬というイメージでしたので、パドックで逞しくなったトランセンドを見て、びっくりしました。あのような素晴らしい馬に携わることができて嬉しいです。これからの仕事の励みになります」と気持ちを新たにしていた。
レース後、伝えられたところによるとトランセンドの目標は海外になった。鵜飼さん、松代さんともに「これで日本一になったわけですから、海外G1制覇を期待してみたい。それは、牧場としての目標ですし、オールウェザーコースでの走りも見てみたい」と夢を広げている。