昨年の日本ダービーで歴史的な優勝を飾った本馬は、その後は秋華賞（３着）、ジャパンC(４着)と惜敗を重ねていた。
　常に人気を集めてファンの注目を浴びていたが、前走のヴィクトリアマイルで復活の脚色を見せ、今回の安田記念で１年ぶりの重賞を制した。
　レースの日、当案内所の隣にあるJRAウインズ静内には、何時もより多くのファンが集まっていたが、やはり地元のヒロインを応援するためだった。レースで快勝した瞬間、場内は一瞬静まり、やがて安堵の息が漏れて、レース展開を語り合うファンは一様に本馬の殊勲を賞賛していた。

　カントリー牧場の西山貴司場長にとっても１年間の胸のつかえが取れたようだ。いつも競馬場まで応援に行っていた場長だが「今回は験を担いで、牧場で応援しましたよ。内を走っていたので前がつまらないようにと思っていたら早めに先頭に出て、今度は後ろから来る馬が気になったりしましたが、馬（本馬）がいつもと違い気持ちよく走っていました。こんなレースも出来るのだと思いましたね。ダービー以来、ファンの方に迷惑を掛けていましたから今回の勝利は嬉しいです。」とホッとした様子だ。

　本馬は、宝塚記念のファン投票１位だったが、これを回避した、「疲れもあるようだし、オーナー（谷水雄三氏）と調教師（角居勝彦師）が栗東でじっくりと調整して秋に備えたいと決断したようですね。また、秋にファンの方へ強いウオッカを見てもらえると良いです。」（西山場長）と。この秋は、毎日王冠、天皇賞・秋、ジャパンCの予定だそうだ。

　本馬の母タニノシスター（母の父　ルション）は静内豊畑の本場で今年生れた当歳と放牧地にいる。祖母がエナジートウショウ（祖母の父　トウショウボーイ）で日高に継がれる牝系。近親には、過去にシスタートウショウ（桜花賞他）、シーイズトウショウ（CBC賞他）など、現役馬ではスリーアベニュー（ガーネットS）、トウショウカレッジ（米子S）などが活躍している。
　また兄弟では、３歳の半妹がウオッカに続くズブロッカ（父アグネスデジタル　やはりお酒の名でウオッカにバイソングラスという牧草が１本入っているらしい）。　少し体が薄かったので角居調教師がじっくり育て上げ、この１～２週内にデビューの予定があるそうなので注目される。

　前述の当歳は、本馬の全妹にあたり、７月のセレクトセール（日本競走馬協会主催）に上場される。　本馬の全兄弟を購買者がどのような評価をしてくれるのか試したいという谷水オーナーの意向のようだが、周囲から‘チャレンジ精神’のあるといわれるオーナーの心意気を感じさせる。ディープインパクトの初仔たちの販売成績と共に話題になりそうだ。