2020年12月16日 全日本2歳優駿(中央交流) Jpn1
優勝馬:アランバローズ
プロフィール
- 生年月日
- 2018年02月08日 02歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:5戦5勝
- 総収得賞金
- 185,150,000円
- 母 (母父)
- カサロサーダ by ステイゴールド
- 馬主
- 猪熊 広次
- 生産者
- 大狩部牧場 (新冠)
- 調教師
- 林 正人
- 騎手
- 左海 誠二
12月に川崎競馬場で行われた全日本2歳優駿(Jpn1)はアランバローズが優勝。序盤から快調に飛ばし、圧倒的なスピードで逃げ切りVを飾った。
本馬の生産は新冠町の大狩部牧場(渡邉隆夫代表)。創業は1997年で、これまでに京成杯(G3)の勝ち馬クリスタルブラックや2018年のジャパンダートダービー(Jpn1)で入着を果たしたクリスタルシルバー、JRA・3勝クラスで活躍中のオヌシナニモノ、ミヤビパーフェクトなどを生産している。
レースを振り返ったのは同牧場取締役の椎名仁さん。「前走1600m戦をクリアできたので、距離は大丈夫だと思っていました。中央、地方の実績馬が揃っていましたが、2番人気に推されましたし、パドックや返し馬も落ち着きがあり、好勝負できるだろうと期待していました。前走は番手からの競馬でしたが、今回はスタートからハナに立って、ゴールまであれよあれよという感じで…ゴールの瞬間は万歳をするような気持ちでしたね。脚質に幅が出て、一戦ごとに強い走りを見せてくれています」
レース後、同牧場にはお祝いの花やお酒などが届けられ、新冠町のレ・コード館には、大きな優勝垂れ幕が作られた。今回の勝利は牧場としても初のビッグタイトルで、事務所には垂れ幕の写真が飾られた。
「何度もレースリプレイを見ましたし、特別な勝利です。スタッフにとっても大きな励みになります。あれから預託のお問い合わせも増えました。2020年は中央、地方で重賞を勝てましたし、他にも生産馬がよく走ってくれて、全体的にも成績の良い年になりました」(椎名さん)
さて、本馬は2018年に同牧場で誕生。当歳の夏まで順調に過ごしたという。「初子の分小柄で、かたちの良い馬でした。母馬と同じく、扱いやすかったです。サマーセールでは競り上がってくれました。アランバローズのような小柄な馬は、セールでは敬遠されることもあるのですが、デビューからダートで強い走りを見せてくれて、体の小ささは関係ないのかなと思っているところです」(椎名さん)
サマーセールでは918万円(税込)の値が付き、猪熊広次オーナーが購入。セール終了後は浦河町の山口ステーブルに移動となり、デビューへとつながった。
ひとつ、能力検査のエピソードにも触れておきたい。能力検査後、椎名さんに一本の電話が入った。「たまたまお付き合いのある調教師さんから電話がかかってきまして。“能検を受けた馬に化け物みたいな馬がいる。すごい時計で走っている。大狩部牧場の生産馬ですよ”と。今でもその電話をよく覚えています」(椎名さん)
さて、さらにさかのぼって、本馬の母馬カサロサーダについて紹介したい。2017年のジェイエス繁殖馬セールの出身馬で、ヘニーヒューズを受胎、本馬がお腹にいる状態でセールに上場した。当時、大狩部牧場ではお付き合いをしている池田喜吉オーナーの要望を受け、新しい繁殖馬を2頭購入するためセールに参加し、そのうち購入した1頭がカサロサーダだった。上場208頭の中からの発掘だった。カサロサーダの競走成績は、JRA・1勝と、とりわけ目立ったものではないが、祖母はアルゼンチンのG1・2勝馬という良血。落札価格は1,242万円(税込)だった。
「池田オーナーの要望で、ダート向きの産駒を意識できる馬を買う予定でした。予算もあり、狙っていた馬を買うことができました。これまで牧場として海外のセールに何度も出かけて、馬を見てきたことも生かされたと思います。私自身は最初の頃、海外の馬すべて良く見えたのですが、回数を重ねて、馬の違いや特徴が少しずつわかるようになりました」(椎名さん)
カサロサーダは同牧場で繁殖生活を続けており、小柄で大人しい馬だという。現在はファインニードルの子を受胎している。明け2歳に父ザファクターの牝馬、明け1歳に父タリスマニックの牡馬がいる。
「子出しの良いお母さんですね。2歳の子は育成牧場に移動しています。アランバローズにもよく似ていて、わりと大きな馬ですね。1歳の子は父タリスマニック譲りの派手な顔立ちで、目立った体つきをしています。順調に育っていますよ。ともに期待は大きいです」(椎名さん)
さて、2歳戦唯一のビッグタイトルを引っさげ、「NARグランプリ2020」では2歳最優秀牡馬に満票で選ばれた本馬。2021年も主役となる可能性は高いだろう。牧場の皆さんは静かに次なる戦いへ思いをはせている。
「今後も無事に競走生活を歩んで欲しいです。3歳の大きなレースを一つでも勝てれば最高ですね。牧場としては今後も、牧場にいる馬たちをよく観察し、変化がないかどうか確認し、日々馬と話をすることを続けていきたい。コロナが収束して、競馬場に行けるようになれば、代表に応援に行って欲しいです」(椎名さん)