2020年10月10日 サウジアラビアRC G3
優勝馬:ステラヴェローチェ
プロフィール
- 生年月日
- 2018年02月19日 02歳
- 性別/毛色
- 牡/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:2戦2勝
- 総収得賞金
- 375,632,000円
- 馬主
- 大野 剛嗣
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 須貝 尚介
- 騎手
- 横山 典弘
ステラヴェローチェがサウジアラビアRC(G3)を勝利した後、そう言えばと思いながら、デビュー前の2歳馬が掲載された媒体を開いた。するとそこには、牧場時代のステラヴェローチェの立ち写真と共に、「バゴの最高傑作になれる馬かも知れません」との育成を手がけた木村浩崇厩舎長のコメントが掲載されていた。
「育成当初から跳びが綺麗な馬で、スピード能力も高かったですし、若いスタッフでも手に余さないような気性の良さもありました」とは木村厩舎長。その期待通りに7月5日のメイクデビュー阪神を快勝。しかしながらそのレース内容は、当初、思っていたような走りと違っていたという。
「自分の中では溜めて切れる馬だと思っていただけに、先行して押し切ったレース内容は、改めて能力の高い馬だと感じていました。ただ、前向きさが出たばかりに、新馬戦の後は牧場で調整させてもらった時には、口向きが難しくもなっていました」
ステラヴェローチェの長所が自在性だと感じていた木村厩舎長は、管理を任された約2か月の間に、折り合いを重視した調教を行っていく。元々、教えられていただけでなく、牧場の環境の良さもあったのか、以前のようにリラックスした走りを取り戻していった。
その頃、同じ木村厩舎で管理されていたのがサリオスだった。木村厩舎長は3歳最強馬の一角であるサリオスに胸を借りるべく、ステラヴェローチェと併せ馬を行う。かたやG1馬で、今年の皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)では2着。一方、ステラヴェローチェはデビューしてまだ1戦しかしてない2歳馬であったが、それでも、坂路の頂上まで食らいつくような走りを見せた。
「ついて行けないと思っていただけに、その走りには驚かされました。その頃には須貝先生からも次走についての話をもらっており、当初は自己条件の紫菊賞(阪神芝2000m)を目標にしていました。ただ、1週早いサウジアラビアRC(G3)でも勝負になると思っていましたし、距離がマイルでも対応できると思っていたので、調教主任を通して先生にお願いをしてみました」
須貝調教師もその申し出を受けたことで、ステラヴェローチェの2戦目はサウジアラビアRC(G3)となった。重賞と言えども1勝馬ばかりのレースにおいて、3番人気の支持を背負ったステラヴェローチェは、雨が降りしきる不良馬場をすいすいと進んでいき、最後の直線では1頭だけ違う脚色でゴール板まで突き抜ける。
「同じバゴの産駒ではクロノジェネシスも力のいる馬場を得意としていましたし、この条件でも力を発揮できると思っていました。ただ、本来は芝のパンパンの馬場の方が更に切れる脚を使えるはずです」
その木村厩舎長の言葉を裏付けるように、騎乗していた横山典弘騎手もまた、「跳びが綺麗な馬であり、この馬場がプラスに働いたとは思わない」と話している。ならば、ためを効かせて、最後の直線勝負となった時には、どんな脚を見せてくれるのだろうかと期待も高まってくるが、それは朝日杯FS(G1)の舞台となりそうだ。
「馬場も問わない活躍ができることはこれで証明されましたし、距離の不安も無いと思っています。この勝利で今後のローテーションも楽になってくると思いますし、次走の走りが更に楽しみになってきました」と笑顔を見せる木村厩舎長。バゴの最高傑作となるためには、まだまだ大きなタイトルが必要となってくるが、成長度、奥深さなど上がり目しかないステラヴェローチェならば、その言葉を現実としてくれるのかもしれない。