2020年09月06日 新潟記念 G3
優勝馬:ブラヴァス
プロフィール
- 生年月日
- 2016年01月22日 04歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:12戦5勝
- 総収得賞金
- 147,970,000円
- 馬主
- 佐々木 主浩
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 友道 康夫
- 騎手
- 福永 祐一
ヴィクトリアマイル(G1)を連覇したヴィルシーナの初仔であり、そして、トップサイアーのキングカメハメハ産駒。その血統背景からもデビュー前から注目を集めていたブラヴァスであったが、育成を手がけていた木村浩崇厩舎長の当初の評価は決して高く無かった。
「馬っぷりは良かったですが、馴致の段階から堅さがあって、口向きも難しい馬でした。トモも緩かったので、時間をかけて良くなっていく馬だろうと思っていました」
それでも2歳の10月には、デビュー2戦目で未勝利戦を勝利。そのレースぶりには驚いたと話す木村厩舎長であったが、確実に成長を遂げていたことを、調整に訪れていた3歳の夏に感じ取る。
「2歳時よりも馬がしっかりしていましたし、良化のあともうかがえました。その一方で口向きは難しいままで、乗っていたスタッフからも『坂路はいいけど、周回に行くと乗りづらい』と話していました」
これは当時のブラヴァスが、ハミに頼った走りをしていたからだった。管理をする友道康夫調教師は、厩舎へと戻ってきたブラヴァスの調教に、障害練習を取り入れていく。すると前のめりだった走りが、次第に身体が起き始め、それにつれてレースぶりも変わっていった。
「それまではただ、がむしゃらに走っているような感じがありました。それがためが効くようになっていき、勝負所で上のギアを使えるようになっていきました」
古馬となってから大成した母や、木村厩舎長も育成時に幾度となく跨がってきた近親のシュヴァルグランと同じように、ブラヴァスもまた晩成の馬だったのだろう。走り方だけでなく、心身共に完成へと向かっていったことが、重賞での好走という結果にも現れている。
「ここ2戦(新潟大賞典(G3)、七夕賞(G3))の内容が良かったので、ついに本格化したのかなといった印象がありました。長くいい脚を使えるブラヴァス向きの展開になったことも、勝利に繋がった感があります」
前半の1000mが61秒9というスローペースで流れたレースは、最後の直線で逃げたジナンボーを目標に、横に広がった後続勢が一気に襲いかかっていく。ブラヴァスは大外に進路を向け、そこから一歩、また一歩と前を行く馬たちとの差を詰めていき、最後はアタマ差だけジナンボーを交わしていた。
この勝利でサマー2000シリーズのチャンピオンともなっただけでなく、ヴィルシーナに重賞タイトルも授けてみせたブラヴァス。レース後には様々な人からお祝いの言葉をかけられたというが、その中には、育成時に母のヴィルシーナを手がけていた、日下和博調教主任からのこんな言葉もあったという。
「日下さんは『これで種牡馬になれるな』と話してくれました。血統的には十分その資格があると思いますし、だからこそ更に大きなタイトルも勝ってもらいたいです」
3歳時から牝馬クラシック戦線を沸かせてきた母であるが、初めてG1を勝ったのは4歳の時。また、5歳でジャパンC(G1)を優勝したシュヴァルグランは、7歳時のドバイシーマC(G1)でも2着になるなど、息の長い活躍を続けた。晩成の血脈を受け継いだブラヴァスもまた、ここからが競走馬としての真骨頂となるのだろう。ゆくゆくは母と同じG1タイトルを手にして、おじと同じように種牡馬入りする道が、目の前に開けている。