3歳シーズン総括(メイレディ)
2010年に牝馬競走の振興と牝馬の入厩促進を目的として地方競馬で始まった世代別牝馬重賞シリーズ 「GRANDAME-JAPAN(グランダム・ジャパン)」も3年目を迎え、そのタイトルを目指して各地区へ遠征する馬たちも多くなり、地方競馬間の交流が活発になってきた。
春に行われた3歳シーズンを見ても、計8レースでのべ19頭の馬が他地区のレースへ遠征。うち半分の4レース※で、その遠征馬たちが見事に優勝を果たしている。地方競馬間の交流が活発になることで、よりレベルの高い競走を多く見ることができるようになるのはもちろん、ホーム&アウェイで別地区のライバル物語が誕生するなど、ファンをワクワクさせるような対戦が実現する楽しみも増えてきた。
- ※若草賞(福山)=優勝馬キミニコイシテ(笠松)
- ※ル・プランタン賞(佐賀)=優勝馬メイレディ(兵庫)
- ※留守杯日高賞(水沢)=優勝馬ミスシナノ(川崎)
- ※のじぎく賞(園田)=優勝馬マーメイドジャンプ(笠松)
2012年シーズンも、開幕戦からその兆候はあった。福山競馬場で行われた「若草賞」には、全国各地から7頭の馬が遠征。そして1~3着を遠征馬が占めることとなる。
優勝したのはキミニコイシテ(笠松)だったが、クビ差2着のメイレディ(兵庫)と、そのまたクビ差3着のマーメイドジャンプ(笠松)が、最後まで「グランダム・ジャパン2012・3歳シーズン」の総合チャンピオンを激しく争った。
メイレディは、第3戦の「ル・プランタン賞(佐賀)」に優勝して15ポイントを加算。一方のマーメイドジャンプは、地元の東海地区で行われた第5戦「東海クイーンカップ(名古屋)」に優勝して10ポイントを獲得。結果的には、この5ポイント差が大きくモノを言うことになる。
その2頭が再び顔を合わせたのが、第7戦の「のじぎく賞(園田)」。ここではマーメイドジャンプがメイレディに1馬身3/4差をつけて優勝したものの、1着と2着のポイント差は3ポイント。マーメイドジャンプは、総合優勝に4ポイント届かずの3位という結果に終わった。
その2頭の争いに割って入ったのが、南関東で圧倒的な強さを見せたアスカリーブル(船橋)。第6戦の「東京プリンセス賞(大井)」、最終戦の「関東オークス(川崎)」を連勝し、27ポイントを獲得。惜しくも総合優勝に2ポイント届かなかったものの、JpnⅡの「関東オークス」を地方所属馬が制したのは、2006年のチャームアスリープ(船橋)以来、6年ぶりとなる快挙。同厩舎先輩のクラーベセクレタ(船橋)や、短距離路線で活躍を続けるラブミーチャン(笠松)らと共に、中央馬と互角に戦える牝馬として、地方競馬を背負っていく存在になっていってくれることだろう。
「グランダム・ジャパン2012」3歳シーズン総合優勝に輝いたメイレディは、浦河・小池博幸さんの生産で、ジェニュインの産駒。父の父はサンデーサイレンスで、母の父には奇跡の馬ラムタラの血が入る血統背景。母系を遡ると、3代母に桜花賞やエリザベス女王杯を制したハギノトツプレデイ、4代母にスワンSや高松宮杯を制したイットーの名前がある。宝塚記念馬ハギノカムイオーや、安田記念&スプリンターズSを制したダイイチルビーなどもこのファミリー出身で、“華麗なる一族”と呼ばれるほど名門の血筋だ。少し気は早いが、引退後に繁殖牝馬となるであろうメイレディに、母親としての期待も高まってくる。
「グランダム・ジャパン」シリーズは“ロジータふたたび”を合言葉として、将来母となる牝馬の価値を高め、その枝葉を広げていきたいという願いも込められていることから、ここではJBIS-Searchの「架空血統表」を使い、メイレディの繁殖牝馬としての可能性を探ってみたい。
サイアーランキング上位馬との配合を試してみることにするが、父にサンデーサイレンスを持つディープインパクトやステイゴールドとは、サンデーサイレンスの2×3というクロスが生じ、血が濃くなりすぎるので除外する。
2012年の総合サイアーランキング2位だったキングカメハメハとの相性を調べると、ミスタープロスペクターの3×5、ノーザンダンサーの5×5×5というクロスが生じる【架空血統表1】。キングカメハメハとサンデーサイレンス直仔の配合からは、ローズキングダムやソリタリーキング、トゥザグローリーといった活躍馬が出ているが、1代を経ていることがどう影響してくるか。ただ、ミスタープロスペクター系のスピードと加速力、ノーザンダンサー系のスタミナとパワー、その両方を受け継ぐような大物が誕生する可能性も否定できない。
一方、2012年の地方リーディングサイアーに輝いたサウスヴィグラスとの配合では、ミスタープロスペクターの4×5、ノーザンダンサーの5×5、ボールドルーラーの5×5というクロスが生じる【架空血統表2】。メイレディ自身も490kg前後と牝馬にしては雄大な馬体を持ち合わせているが、ボールドルーラー系が加わることによって更にパワーが強調され、よりダート色の強い産駒が誕生しそうだ。
2012年の総合サイアーランキング4位シンボリクリスエスとの配合では、ヘイルトゥリーズンの4×5というクロスが生じる【架空血統表3】。シンボリクリスエス×サンデーサイレンス直仔の配合からは、サクセスブロッケンやアルフレードなどが誕生。また1代経たフジキセキ産駒との配合からは、3歳で毎日王冠を制したアリゼオが出ている。それらの実績からすると、マイルから中距離を得意とするスピードタイプのイメージが浮かんでくる。
他にも試してみたい配合は多数あるが、ここには掲載しきれないので、ぜひご自身でJBIS-Searchの「架空血統表」を使い、最良の交配相手を探し当てていただきたい。いずれにしても、名門ファミリー出身のメイレディには、「グランダム・ジャパン2012」3歳シーズンチャンピオンとして、繁殖牝馬となってからも長くその枝葉を広げていく存在になってほしいと願う。