GRANDAME-JAPAN 2013 優勝馬のふるさとを訪ねて ロジータふたたび。

2歳シーズン総括(カクシアジ)

3歳シーズン総括(エイシンルンディー)

古馬シーズン総括(アスカリーブル)

2歳シーズン総括(カクシアジ)

「グランダム・ジャパン2013」2歳シーズンは、初戦の「園田プリンセスC(園田)」、4戦目の「プリンセス特別(笠松)」、5戦目の「プリンセスC(水沢)」にそれぞれ遠征して勝利を挙げたカクシアジ(北海道・田中淳司厩舎)が、最終戦を待たずにぶっちぎりの総合優勝を果たした。カクシアジは、地元で行われるダートグレード「エーデルワイス賞(Jpn3)(門別)」も含め、グランダム・ジャパン2歳シーズン指定レース6戦中4レースに参戦。うち3つのレースに優勝したのだから、狙って獲った文句なしのチャンピオンといえるだろう。


  • 初戦の「園田プリンセスC(園田)」に優勝したカクシアジ

  • 第4戦の「プリンセス特別(笠松)」に優勝したカクシアジ

  • 第5戦の「プリンセスC(水沢)」に優勝し、2歳シーズンチャンピオンを確定させたカクシアジ

カクシアジの生まれ故郷は、スティルインラブやダイワエルシエーロなどのクラシックホースを送り出してきた名門・下河辺牧場。「2歳にして長距離輸送も克服し、改めてすごい牝馬ですね」と、数々の名牝を見てきた下河辺さんも感心するほどの活躍ぶりだ。母から闘争心、父から天性のスピードを受け継ぎ、同世代の他地区牝馬たちに影をも踏ませぬ快速ぶりを披露して、2歳女王の座を掴み取った。


カクシアジの生まれ故郷・下河辺牧場

カクシアジの父は、エンドスウィープの後継種牡馬として期待の高いスウェプトオーヴァーボード。産駒には、アーバンストリート(シルクロードS(G3))、パドトロワ(アイビスサマーダッシュ(G3)、キーンランドC(G3)、函館スプリントS(G3))といった芝短距離重賞馬が目立つ一方で、エーシンブラン(兵庫チャンピオンシップ(Jpn2))、ドリームスカイ(東京ダービー)などダートの活躍馬も多い。カクシアジと同世代のノットオーソリティも同父の産駒で、3歳シーズンは南関東牝馬クラシックの主役を張りそうな勢いを見せている。春から始まる「グランダム・ジャパン2014」3歳シーズンでも、父スウェプトオーヴァーボードは注目されることになるだろう。


カクシアジの全妹ビフォーダーク2012(牝2歳、父スウェプトオーヴァーボード)

一方の母ビフォーダーク(父キングカメハメハ)は、競走馬としてデビューすることなく繁殖入りしたが、その母は紫苑Sに優勝して秋華賞(G1)へも駒を進めたサンデーサイレンス産駒のインゴット。その良血は確実に受け継がれ、初仔カクシアジが早速、グランダム・ジャパンの舞台で大きな花を開かせた。

先述の通り、カクシアジの牝系を3代遡るとサンデーサイレンスの名前がある。少し気が早いが、数年後にカクシアジが繁殖入りした時の配合を、JBIS-Searchの「架空血統表」を使ってシミュレーションしてみよう。

例えば2014年度より種牡馬デビューするオルフェーヴルを配合した場合、サンデーサイレンス3×4、ノーザンテースト4×5、Mr.Prospector5×5というクロスが発生する。まさに、近代の日本競馬を牽引してきた血の集合体だ。サンデーサイレンスのクロスを持つ馬は将来的に多く出るだろうが、カクシアジがその先駆けとなる可能性はある。


第3戦の「ローレル賞(川崎)」に優勝したクライリング

また、第3戦の「ローレル賞(川崎)」に優勝、最終戦の「東京2歳優駿牝馬(大井)」でも3着と健闘して「グランダム・ジャパン2013」2歳シーズン総合2位となったクライリングも、カクシアジと同じく北海道・田中淳司厩舎を巣立った良血馬。父は有馬記念(G1)でディープインパクトを負かしたハーツクライ、祖母は米G1を5勝した名牝ターンバックジアラーム、伯父にJRAで7勝を挙げたハレルヤサンデーがいる血統。大きな期待を背負って追分ファームで産声を挙げたが、生まれながらに脚元の不安を抱えており、慎重に育成されながらホッカイドウ競馬からのデビューとなった。


クライリングの生まれ故郷・追分ファーム

5月の門別デビュー戦で、その良血を証明するように5馬身差の快勝を収めたクライリングだが、その後はなかなか勝ちきれないレースが続いた。2勝目が初めての遠征競馬となった「ローレル賞」。ここで1番人気に支持されると、2着馬に1馬身半差を付ける快勝で15ポイントを獲得。その後、川崎の山崎尋美厩舎へ移籍しての転厩初戦「東京2歳優駿牝馬」3着で10ポイントを加算し、カクシアジに次ぐ総合2位となった。

クライリングの血統表には、サンデーサイレンス、トニービン、エンドスウィープと、日本で大成功した種牡馬の名前が並ぶ。カクシアジ同様、こちらも母となる将来が楽しみな存在だ。2013年シーズンより種牡馬入りし、間もなく初産駒が誕生するオウケンブルースリを配合すると、トニービンの3×4というクロスが発生する。トニービンからつながるサイアーラインも細くなり始めているので、そのクロスによってどんな産駒が誕生するのかを見てみたい気もする。

毎年のことだが、牝馬に限らず2歳戦はホッカイドウ競馬デビュー組の活躍が目立つ。全国地方交流競走が多く組まれる「グランダム・ジャパン」シリーズが定着し、海を渡って他地区へ遠征する道営牝馬も増えてきた。今後ますます、その傾向は強くなるものと思われる。「グランダム・ジャパン」の2歳シーズンは秋から始まるが、ホッカイドウ競馬開幕日(4月末)に早くも始まる2歳戦から目が離せなくなりそうだ。


クライリングの母リングジアラーム


グランダム・ジャパン