重賞ウィナーレポート

2025年12月21日 朝日杯フューチュリティS G1

2025年12月21日 阪神競馬場 小雨 重 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:カヴァレリッツォ

プロフィール

生年月日
2023年02月28日 02歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
93,624,000円
サートゥルナーリア
母 (母父)
バラーディスト  by  ハーツクライ
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
吉岡 辰弥
騎手
C.デムーロ

 2025年シーズン、ノーザンファーム生産馬は国内のG1レースで14勝をあげている。その勝利数には驚かされるが、そのうちの5勝(フェブラリーS(G1)…コスタノヴァ、天皇賞(春)(G1)…へデントール、日本ダービー(G1)…クロワデュノール、菊花賞(G1)…エネルジコ、朝日杯フューチュリティS(G1)…カヴァレリッツォ)の育成を手掛けてきたのが、ノーザンファーム空港のB5厩舎となる。

 この数字の凄さは、特定の馬がG1を何勝もしているわけではないどころか、世代だけでなく、戦っている条件も違っていることだろう。つまりB5厩舎から巣立ったG1馬たちは、個々に合った成長を遂げながら、自分が最も光り輝く舞台で最高の結果を残したということにもなる。

 この結果を個々の馬を見極める管理で支えてきたのが、ノーザンファーム空港B5厩舎を管理する、佐々木淳吏厩舎長である。

 「育成馬の成績だけでいうと、過去最高と言える活躍だと思います。これは厩舎のスタッフと共に、毎世代毎世代の育成馬に対して、みんなで一生懸命向き合ってきた結果が、今年一年に凝縮されたと言っていいと思います」と佐々木淳吏厩舎長は、2025年シーズンにおける育成馬の活躍を振り返る。

 佐々木淳吏厩舎長とこの取材で話を聞かせてもらう度に、個々の管理馬に対する思いや、管理についても事細かく教えてくれるのだが、カヴァレリッツォに関しては、「第一印象としてはトップラインが薄くて、しっかりと運動させながら成長を促していくだけでなく、競走馬としての土台を作り上げていく馬」との印象を持っていた。

 「成長のイメージ的には2歳の早い時期というよりも、3歳、そして4歳になってから更に良くなっていくだろうと思っていました。また、精神的にも幼さをのぞかせていたというのか、繊細な一面もあり、調教を進めていくと飼い葉食いが落ちることもありました。乗り役にはトップラインを意識するだけでなく、お尻の筋肉を付けさせていくような乗り方をして欲しいとの指示も出していました」(佐々木淳吏厩舎長)

 その調教が功を奏したのか、カヴァレリッツォは日に日に良化を遂げていく。調教コースを走る姿には、いつしか佐々木淳吏厩舎長も目を奪われるようになっていた。

 「手先が軽くて、フットワークのいい馬だと感じることが幾度となくあり、その度にスタッフに『この馬、いいよね』と何度も話しかけていたのも覚えています」

 カヴァレリッツォを管理する吉岡辰弥調教師にも、育成時の感想を伝えていったというが、5月下旬に厩舎へ入ってからは気性の良さだけでなく、調教を行ってからも卓越したスピード能力を示すようになり、デビューまでの青写真を瞬く間に描いていった。

 8月のメイクデビュー中京に出走したカヴァレリッツォは、1番人気の支持に応えるかのように、後続に5馬身差を付けての快勝。2戦目はデイリー杯2歳S(G2)へと出走する。

 「当初予定していた移動の計画とほとんどずれがなく、本州へ送り出すことができました。それでも、吉岡辰弥先生はカヴァレリッツォの厩舎に入ってからの成長を、かなり驚いていたと思います。デビュー戦は粗削りなレースともなりましたが、手先の軽さを生かして切れる脚を使ってくれただけに、重賞でもどんな走りを見せてくれるか楽しみになりました」

 デイリー杯2歳S(G2)は、勝ったアドマイヤクワッズとの競り合いに屈する形となったが、それでも3着以下との着差を引き離していたように、重賞級の力を持っていることをまざまざと証明した。

 「アドマイヤクワッズは隣のB6厩舎の育成馬でもあり、悔しさもありましたが、何メートルの範囲で切磋琢磨しあってきた仕事が、互いの育成馬を通して、重賞の舞台で勝ち負けのレースとなったことに対しての充実感はありました。カヴァレリッツォにとっても、ここで賞金を加算できたのは大きいと思いましたし、伸びしろを考えても次のレースでは逆転できるとの期待はありました」

 アドマイヤクワッズとカヴァレリッツォが、共に出走した朝日杯フューチュリティS(G1)。人気はアドマイヤクワッズに譲る形となったが、それでもカヴァレリッツォは差の無い2番人気となる。

 「レース後は飼い葉も落ちたようですが、その中でノーザンファームしがらきのスタッフがしっかりとケアしてくれただけでなく、吉岡辰弥先生や厩舎の皆さんも前走で見つかった課題をクリアするべく、様々な修正を重ねてくれました」

 そして、万全の状態でレースへと臨んだカヴァレリッツォを、勝利へと導いたのが、鞍上を務めたC.デムーロ騎手の好騎乗だった。

 1,000m通過のラップは58秒2と、よどみない流れとなる中、インコースにカヴァレリッツォを導いたC.デムーロ騎手は、最後の直線で他の馬たちが馬場の荒れていない外へと進路を取る中を、最内に進路を向ける。

 「見た目にも馬場が荒れていただけでなく、直前で雨も降っていましたし、普通の騎手ならあの進路取りはしないと思います。ただ、逃げた馬(ダイヤモンドノット)が2着に残るレースとなっただけに、結果的にはあの判断が正しかったのでしょう」

 一番人気のアドマイヤクワッズは馬群の外から脚を伸ばしてくるも、直線に入ってからもダイヤモンドノットの脚色は鈍らない。一方、最内から伸びてきたカヴァレリッツォは、まさに図ったかのようにゴール前で差し切りを決めた。

 「ゴール前ではヒヤヒヤしましたが、それでも能力があったからこそ荒れた馬場も苦にすることなく、最後は差し切ってくれたのでしょう。改めて高い能力を持った馬だと唸らされました」

 この勝利で今年のクラシック出走を賞金面で確定させたカヴァレリッツォであるが、マイルで抜けた実績を残しているとはいえども、距離の不安は感じていないと、佐々木淳吏厩舎長は話す。

 「道中でスタミナを温存で来ていたのならば、絶対に切れる脚を使える走りを見せてくれるはずです。何よりも心身ともにまだ成長できる余地もあるだけに、今年の活躍が楽しみになってきます」

 カヴァレリッツォには今年もG1タイトルが期待できそうだが、同じ3歳世代だけでなく、各世代にもG1を沸かせてくれそうな馬が揃っています、と笑顔で話す佐々木淳吏厩舎長。今年も重賞レースを沸かしているノーザンファームの生産馬たちだが、今年もB5厩舎の出身馬がG1レースを席捲しそうな気がしてくる。