重賞ウィナーレポート

2025年12月14日 阪神ジュベナイルフィリーズ G1

2025年12月14日 阪神競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:スターアニス

プロフィール

生年月日
2023年02月04日 02歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:4戦2勝
総収得賞金
84,768,000円
馬主
吉田 勝己
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
高野 友和
騎手
松山 弘平

 2024年の初頭。ノーザンファーム早来の山根健太郎厩舎長は、共に働くスタッフに対して、「育成馬の阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)優勝」を厩舎の目標として掲げていた。その年の年末。その大きな目標はスターアニスによって実現される。

 「阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)にできる限りの育成馬を送りだすために、滞りなく育成をするだけでなく、その舞台に進めるためには我々にできることは何だろうかと突き詰めてきました。それだけにこの勝利には物凄い達成感がありました」(山根健太郎厩舎長)

 目標を達成するにはただ、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)を勝つだけではない。「できる限りの育成馬を送り出す」という目標については、このレースで1番人気を集めたアランカールも、山根厩舎の育成馬であり、18頭の出走馬のうちの上位人気2頭が、同じ育成厩舎の管理馬ともなった。

 ノーザンファームでの繁養は祖母のラタフィアから始まる、スターアニスの血統だが、その母となるエピセアロームと、当時育成スタッフだった山根健太郎厩舎長は、直接的な接点が無かった。

 「エピセアロームは自分の所属していた、当時の日下厩舎の育成馬ではありましたが、自分が海外研修に行かせてもらった頃には、既に栗東へと移動していました」

 エピセアロームの産駒に携わるのもスターアニスが初めてであったが、早い段階から能力の高さを感じ取っていた。

 「イヤリングから移動してきた時期も早かっただけでなく、とにかく馬が立派でした。内面的には幼さも残っていながらも、走りの足取りには芯の良さが感じられていて、カチッとした走りもできていました」

 スターアニスは早期デビューの目処も立つようになってからも、よく食べ、よく運動も行えると、健康優良児としても評価されていく。その時、同様に2歳戦の早い時期からの活躍が目されていたのが、牧場時代の僚馬であるアランカールだった。

 「スターアニスやアランカールだけでなく、この3歳世代は乗り慣らしの頃からかなり手応えを感じて育成していた世代となります。その期待は厩舎のスタッフにも伝えていましたし、厩舎としての目標を叶えるために、みんなも頑張ってくれていました」

 先に頭角を現したのは7月のメイクデビュー福島で鮮烈なデビューを果たしたアランカールだった。一方、デビューこそ6月のメイクデビュー小倉となったスターアニスではあったが、初勝利となったのは続く小倉の2歳未勝利戦となる。ただ、2着に7馬身差という勝ちっぷりの良さが評価される形で、続く中京2歳S(G3)では1番人気を集めていた。

 「母は芝のスプリントを中心に活躍した馬であり、父のドレフォンは芝、ダートの条件を問わず、そして距離もある程度はこなせる馬だったので、入厩する前に高野先生と話した際にも、『まだ未知数な部分はありますが、この体型とスピード能力ならば、芝の短いところから行けると思います』とは伝えました。デビュー戦は残念な結果となりましたが、2戦目の勝ち方は想像以上の走りでした」

 中京2歳S(G3)では、勝ったキャンディードの末脚に屈する形となったが、それでも3着以下との着差は7馬身と力の違いを証明していく。阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)でもアランカールが抜けた1番人気となったが、スターアニスもそれに迫っていたのは、前走の内容が高く評価されたとも言える。

 育成馬2頭がしのぎを削る形となったが、この日の阪神競馬場のパドックには山根健太郎厩舎長の姿があった。

 「アランカールも素晴らしい状態でしたが、スターアニスはここをピークに持ってきたと思えるほどの仕上げに見えました。馬も集中力を高めながらパドックを周回していたので、北海道で応援してくれていた厩舎のスタッフにも『2頭ともにかなり状態がいい』と連絡をしました」

 ゲートが開くと、アランカールが最後方からのレースとなった一方で、スターアニスは中団からレースを進めていく。前半の1,000m通過は57秒3と比較的速い流れとなる中、直線を迎えて横に広がった馬群から抜け出てきたのはスターアニス。その外からは後方一気にかけたアランカールも脚を伸ばしてくるも、スターアニスは大きなストライドで、後続との差を広げていった。

 「鞍上の松山弘平騎手が仕掛けを待っていてくれたので、進路ができた時にはこれは来るなと思いました。あとは頑張ってくれとの思いだけでしたが、ここで勝ちきってくれたのは、今後に向けても大きいと思います」

 アランカールも18番手からの捲りで5着と、能力の高さを証明するレースとなった。2026年のクラシックでもライバル関係となりそうな2頭であるが、晴れてG1ウィナーとなったスターアニスが、現時点におけるクラシック最有力馬になったのは間違いない。

 「2頭ともに能力と才能を信じて、ノーザンファームしがらきに送り出した馬であり、そして、高野先生と斉藤先生とも頻繁に連絡を取り合った馬でもあります。その僕の言葉や、自分たち牧場スタッフの仕事を信じてくれて、目標である阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に送り出してくれたのは、感謝しかありません。引き続き関係者の皆さんには今後もよろしくお願いします、とお伝えしたいです」

 そして、この勝利は共に働く山根健太郎厩舎のスタッフにとっても、仕事に対する自信と、達成感を共有できる結果となった。

 「牧場に帰ってきてからスタッフと会いましたが、みんないい顔つきになっていたのは、達成感だけでなく、この結果がいい刺激にもなっているのだと思います。これも活躍してくれている馬のおかげです」

 チームとしての意識の高さは、更なる活躍馬の誕生にも繋がっていく。明け3歳世代だけでなく、2026年にデビューを待つ2歳世代からも、山根健太郎厩舎の出身馬から目が離せそうにない。