2025年10月26日 菊花賞 G1
優勝馬:エネルジコ
プロフィール
- 生年月日
- 2022年04月23日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:5戦4勝
- 総収得賞金
- 318,219,000円
- 父
- ドゥラメンテ
- 母 (母父)
- エノラ(GER) by Noverre(USA)
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 高柳 瑞樹
- 騎手
- C.ルメール
クロワデュノールが勝利した今年の日本ダービー(G1)。そのクロワデュノールを含めて、3頭の育成馬(エムズ、カラマティアノス)を送り出していたのが、ノーザンファーム空港のB5厩舎となる。
実は青葉賞(G2)を制したエネルジコもB5厩舎の育成馬だった。ただ、疲労回復を含めて出走体勢が整わず、優先出走権を得ていた日本ダービー(G1)の出走を回避する。もし出走が叶っていれば、18頭のフルゲートに4頭の育成馬が名を連ねていたという事実は、この世代におけるB5厩舎の管理頭数を考えると驚異的とも言える。
「3歳世代からクラシックに属した活躍馬を次々と送り出せたのは、自分の中では想像以上でした。騎乗馴致を始めた頃はエネルジコのような奥手の馬が多く、全体的な調教のバランスを考えた場合にも、かなりの工夫が必要だと感じていました」と話すのは、育成馬での牡馬クラシック2冠制覇を果たした、ノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長。毎年、場長や育成主任と相談をしながら、大まかな調教方針を組み立てていくというが、細かい管理に関しては厩舎長に委ねられている。
毎年のようにクラシックやG1での活躍馬が輩出されているB5厩舎であるが、3歳世代の育成調教については、佐々木淳吏厩舎長はこれまで以上に細かい個体管理を行っていった。
「エネルジコを含めた個々の馬に対して、厩舎スタッフがしっかりと管理を行ってくれたことが、この世代の躍進に繋がったと思います。エネルジコでいうとその後のノーザンファーム天栄や、高柳瑞樹厩舎とも情報を共有しながら、まさにチーム一丸となった管理もまた、その後の活躍に繋がったのは間違いありません」
レース後にはノーザンファーム天栄で調整が行われていたエネルジコであるが、その際には平澤拓馬厩舎長から、レース前やレース後の状態だけでなく、その調教のプランまでも細かに連絡が入っていた。
「平澤拓馬厩舎長はエネルジコの成長過程も見定めながら、『まだ間隔を取ってレースに使ったほうがいいです』や、『調教の走りを見ていても、広いコースの方が合っている気がします』といった話もしてくれました。こうした考えも関係者内で共有できており、馬に合ったローテーションを組み立てることができました」
その意味では日本ダービー(G1)回避という判断もまた、正しかったことが菊花賞(G1)で証明される。
「初めて入厩して来た頃は弱くて非力な印象があっただけに、青葉賞(G2)を勝って日本ダービー(G1)の権利を取る姿は、まるで想像できませんでした。日本ダービー(G1)を回避したのは苦汁の判断をしたと思いますが、自分としてはここで我慢をしたことが、必ずいい結果に繋がってくると思っていました」
古馬とは初対戦となった新潟記念(G3)では、勝ったシランケドから半馬身差の2着に敗れるも、プラス12kgの馬体重で最後の直線をしぶとく粘り込んだ姿は、順調な調整ぶりをアピールする結果ともなった。
「菊花賞(G1)はその時に増えた分を減らして(マイナス12kg)となりましたが、長距離戦を使うことを考えた場合には、無駄のないフィット感のある仕上げをしてくれたと思っていました」
究極の仕上げとなったエネルジコを、ビクトリーロードへと導いてくれたのが、鞍上を務めたC.ルメール騎手だった。
スタートこそ後方とはなったが、2周目の向こう正面から動き出しを図ると、3コーナーから4コーナーにかけて更に加速。その勢いのままに最後の直線へと入ると、残り1ハロン過ぎで先頭へと躍り出る。
「C.ルメール騎手の判断の素晴らしさ、そして勝負勘の良さが、このレースの全てに反映されていたと思います。菊花賞(G1)の勝ち方を知っているような乗り方であり、自信をもってエネルジコをゴールへと導いてくれました」
鞍上のC.ルメール騎手はこれで菊花賞(G1)3連覇かつ、歴代最多タイに並ぶ5勝目ともなった。まさに「令和の菊男」ともなったわけだが、まるで菊花賞(G1)制覇を逆算したかのような、エネルジコ関係者の管理技術の高さも高く評価されるべきだろう。
レース後の10月30日、所属するシルクホースクラブのホームページ上で、左前浅屈腱炎の発症と、9か月以上の休養を要することが発表された。
「これまで大事に使われてきただけでなく、菊花賞(G1)では最高の結果を残してくれました。その中での怪我となってしまったのは残念ですが、僕らがやることはしっかりとケアして、また強いエネルジコを見せれるように、しっかり馬と向き合っていくだけだと思っています」
11月上旬にエネルジコはノーザンファーム空港へと移動。これからは復帰に向けてのリハビリの日々が始まる。
「エネルジコは自分たちの想像を遥かに超えるポテンシャルを持っている馬です。ただ、そのポテンシャルの全てを発揮できてはいないと思っています。この休養期間で更に競走馬として完成に向かっていくはずであり、その時にどんなレースを見せてくれるのか楽しみになってきます」
復帰の暁にはクロワデュノールだけでなく、エムズやカラマティアノスといった、B5厩舎の育成馬たちと対決する可能性がある。エネルジコにとって心強いのは、佐々木淳吏厩舎長はこれまでにも、長期休養を余儀なくされた馬たちを何頭も復帰させており、その中には重賞勝馬の名前も見受けられる。
エネルジコにとってこの休養期間は、ポテンシャルを最大限に引き出す時間にもなっていくのだろう。復帰が今から待ち遠しくなる。
















