2025年07月11日 兵庫サマークイーン賞(GDJ)
優勝馬:ヴィーリヤ
プロフィール
- 生年月日
- 2021年03月13日 04歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:10戦7勝
- 総収得賞金
- 15,900,000円
- 馬主
- 菊池 靖二
- 生産者
- 上村 勇人 (浦河)
- 調教師
- 田中 一巧
- 騎手
- 杉浦 健太
『グランダム・ジャパン(GDJ)2025』古馬秋シーズンの2戦目「兵庫サマークイーン賞 (園田)」は、地元・兵庫のヴィーリヤ(牝4)が1番人気に応え、道中2番手から直線で抜け出して快勝。今年2月にJRA未勝利クラスから兵庫へ転入後、無傷の7連勝で重賞初制覇を果たした。
ヴィーリヤの生産者は、浦河町に牧場を構える上村勇人さん。元兵庫競馬所属の騎手という経歴を持ち、2011年に騎手を引退したのち、2016年に(株)Maverickを設立。翌年に育成部門を開設し、生産を始めたのは2021年から。ヴィーリヤはその初年度に産まれた産駒となる。初めて上村勇人さん自らが生産から育成まで携わった世代の1頭だ。
「当日は現地まで応援に行きました。レースの2日前にアクシデントがあって怪我をしたと聞いていたので、少し不安もありました。それでも無事に出走することができて、目の前で勝ってくれて本当にうれしかったです」と話し、「今回は初めて経験する1,700m戦でしたが、これまでの1,400mのレースを見ていても一歩の飛びが大きく、周りに合わせて走っているように見えていたので、距離自体は問題ないと思っていました。4コーナーで少し手応えが悪くなった時は『やっぱり怪我をした部分が痛いのかな?』と心配になりましたが、最終的には4馬身差の圧勝で強かったですね」とレースを振り返る。そして、この兵庫サマークイーン賞は上村勇人さんにとっても縁のあるレースだった。「騎手だった頃、この兵庫サマークイーン賞に騎乗させていただいたことがあり、結果は3着でした。いつかは自分が生産した馬で勝てたら良いなと思っていたので、ヴィーリヤが先頭でゴールした瞬間は感激しました」と顔を綻ばせ、「自分でヴィーリヤに乗ってみたいとはまったく思わないですけどね(笑)」と笑う。
ヴィーリヤの母エメンタールベルンは南関東のマイル戦で3勝を挙げ、引退後は岩見牧場で繁殖生活を送っていたが、縁あって上村勇人さんが譲り受けることになった。その初年度にパイロを交配し、産まれてきたのがヴィーリヤである。「エメンタールベルンはそれまで牡馬ばかり産んでいたのですが、もし牝馬が産まれてきたら繁殖として長く残せる血統にしたいと思い、種馬はサンデーサイレンス系以外が良いのかなと考えていました。エメンタールベルンは大柄な馬で、その父馬のディープスカイがダーレーさんで繋養されていたことなどの親和性も考慮してパイロを交配しました」と種牡馬選択の経緯について教えてくれた。
「幼少期のヴィーリヤはとにかく気の強い仔馬でした。お乳を飲みたくて寝ている母馬をわざわざ蹴飛ばして起こしたり、お乳を飲んでいる時に母馬が動いたら怒って尻跳ねしたり(笑)。普段は悪さをすることもなく、他の馬たちとも仲良くしていましたし、大きな怪我や病気もなく健康に育ちました」と牧場で育っていた時期を振り返る。
「今は菊池靖二オーナーが所有している馬ですが、JRA時代は菊池五郎オーナー(菊池靖二オーナーの義父)が所有していました。菊池五郎オーナーはご高齢で、これまでなかなか結果も出ていなかったので、最後にJRAで良い思いをさせてあげたいなと思っていたんです。調教からすごく動いていたので期待はされていましたが、残念ながらJRAで結果は出ませんでした。『このまま繁殖にしようか』という話もあったのですが、田中一巧先生がヴィーリヤを見て「俺がやりたい」と言ってくださり、兵庫競馬への転厩が決まりました。今こうして活躍してくれて、逝去された菊池五郎オーナーも喜んでくださっていると思います」とオーナーとのエピソードを明かしてくれた。
「自ら生産から育成まで携わることで、そのイメージが次の世代の参考になるので、忙しい毎日ですがすごく楽しいです。僕自身の経歴もすべて今に繋がり、ヴィーリヤのような強い馬を出せたのだと思っています。こういう馬にはなかなか出会えないでしょうから、今後もとにかく無事に競走生活を送ってもらいたいです。そして競走馬を引退したら、繁殖としてまたうちに帰ってきてもらいたいですね。いつかヴィーリヤの仔馬が産まれて、また活躍して、そうやってうちの牝系の基盤を築いていけたらと思っています」と将来を見据える上村勇人さん。今後のヴィーリヤの走り、そして上村勇人さんが築き上げていく牝系にも注目していきたい。