2025年04月06日 ル・プランタン賞(GDJ)
優勝馬:オモチチャン
プロフィール
- 生年月日
- 2022年05月11日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/芦毛
- 戦績
- 国内:7戦3勝
- 総収得賞金
- 13,185,000円
- 母 (母父)
- バトルキクヒメ by ホワイトマズル(GB)
- 馬主
- 津田 一馬
- 生産者
- 小倉 光博 (静内)
- 調教師
- 田村 彰啓
- 騎手
- 永井 孝典
『グランダム・ジャパン2025』3歳シーズンの第2戦「ル・プランタン賞(佐賀)」を制したのは、兵庫からの遠征馬オモチチャン。スタート直後から逃げる1番人気ドライブアウェイをマークするように先行し、最後の直線で突き放して3馬身差の快勝。デビューから7戦目で嬉しい初重賞勝利を飾った。
オモチチャンの生産者は、新ひだか町静内田原に牧場を構える小倉光博さん。繁殖牝馬10頭を抱える家族経営の牧場で、3年ほど前に小倉スタッドと登記を変更。過去の生産活躍馬には2004年のオールカマー(G2)を逃げ切ったトーセンダンディがいて、オモチチャンはトーセンダンディの姪にあたる。「トーセンダンディが活躍してくれたので、この血統の後継ぎがほしいと思っていたところ、9歳下の全妹バトルキクヒメが繁殖牝馬として牧場に戻って来てくれました。オモチチャンは、そのバトルキクヒメの9番仔です。あとから知ったのですが、ヒデコトブキの牝系はバトルキクヒメしか残っていないそうなんです。大事にしなきゃいけないですね」と小倉光博さんは笑顔を見せる。ヒデコトブキは1969年の桜花賞馬。遡れば1907年にイギリスから輸入されたアストニシメントにたどり着く〝小岩井の牝系〟だ。
「レースは自宅のテレビで見ていました。初の長距離輸送ですし、永井騎手も乗り慣れていない競馬場でしょうから、どれぐらいやれるか半信半疑でした。これまで出遅れて負けてしまったこともあったので、『ゲートをうまく出て強気のレースをしてくれればいいな』と思っていたら、その通りの展開になって。ドライブアウェイを目標にしながら良い位置につけ、3コーナーをまわったあたりで『これは勝てるかもしれないな』と期待が膨らみました。直線では1番人気馬を突き放しましたし、強い内容でしたね」とレースを振り返る小倉光博さん。思い入れの深い血統だけに、その喜びもひとしおだったと言う。
オモチチャンの配合については、面白いエピソードがある。「それまでいろいろと考えながら配合してきたのですが、なかなか結果につながりませんでした。次はどうしようかと悩んでいた時、『いっそのこと今日の3歳未勝利戦を勝った馬の中に新種牡馬がいたら、その種牡馬を配合しよう』と急に思い立ったんです。そしたらなんと、新種牡馬アメリカンペイトリオットの仔が勝ったんですよ。これも何かの縁ですね(笑)」と笑う小倉光博さん。アメリカンペイトリオットはウォーフロントの後継種牡馬として日本に輸入され、2018年からダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスで種牡馬生活を送っている。バトルキクヒメに種付けされた2022年春は、初年度産駒が3歳になったばかり。まだ評価が定まっていなかったタイミングだけに、小倉光博さんが〝縁〟と話すのも頷ける。
「牧場で育っていた頃のオモチチャンは〝脚長で大柄な馬〟という印象でした。1歳夏のサマーセールに上場するまで、大きな怪我や病気もなく順調に育ちました」と幼少期を振り返る。そのサマーセールでも、微笑ましいエピソードがあった。「最初、主取りになったんですよ。がっかりして厩舎に戻ったら津田オーナーがやってきて、『手を挙げたけどスポッターに気づいてもらえなかったんです。買わせてください』と言うんです。自分名義で馬を持つのはこれが初めてだと言っていたので、せりにも慣れていなかったんでしょうね。再上場して、無事に落札してもらいました」とオーナーとの出会いを明かしてくれた。
その後、小国ステーブルに移動して育成が施され、兵庫の田村彰啓厩舎に入厩したオモチチャン。2歳11月に園田競馬場でデビューしてから3歳4月のル・プランタン賞まで7戦して3勝、2着3回、3着1回と1度も馬券対象を外したことがなく、堅実な走りをつづけている。「初めて持った馬がこれだけ走り、オーナーもとても喜ばれています。これからも無事に競走生活を送り、ますますオーナー孝行をしてほしいですね。そして将来は牧場に戻り、この血統をつないでいってほしいと願っています」とオモチチャンにエールを送る小倉光博さん。〝最後の直線、オモチチャンがのびる。どんどんのびる。まだまだのびる〟という実況を、また何度でも聞きたいものだ。