2025年04月20日 皐月賞 G1
優勝馬:ミュージアムマイル
プロフィール
- 生年月日
- 2022年01月10日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦3勝
- 総収得賞金
- 282,579,000円
- 馬主
- (有) サンデーレーシング
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 高柳 大輔
- 騎手
- J.モレイラ
皐月賞(G1)の前日に行われたアンタレスS(G3)。圧倒的な単勝人気を集めていたミッキーファイトが勝利している。ノーザンファームの生産馬としては4月5日以来ダービー卿ChT(G3)(トロヴァトーレ)から中央重賞勝利を伸ばしていたが、4月12日のニュージーランドT(G2)(イミグラントソング)、そして4月19日のアンタレスS(G3)とこの3頭は全てノーザンファームB6厩舎の育成馬でもあった。
「育成馬たちの重賞での活躍は素直に嬉しかったですね。この皐月賞(G1)にもミュージアムマイル、マジックサンズと育成を手掛けた馬を2頭送り出していたので、充実感と共に2頭揃って順調かつここまでしっかりと成績を残してくれたことに感謝もしていました」とノーザンファーム空港の高見優也厩舎長は話す。先に重賞を勝利(札幌2歳S(G3))して賞金面でのクラシック出走を確定させていたのはマジックサンズではあったが、ミュージアムマイルは2歳8月のメイクデビュー中京から着実にクラシックへの階段を駆け上がっていった。
「1歳時に乗り出した時期は他の馬より遅くはなりましたが、その後は順調に調教を進めることができました。気性も良くてその時にいたスタッフが誰でも乗れるような馬でもあり、この活躍をみんなで喜び合うことができました」(高見優也厩舎長)
育成時に乗り役を選ばなかった馬としては、同じ高見優也厩舎長の元で管理をされていた、エフフォーリアとも共通するエピソードと言える。
「牧場を離れた後にはノーザンファームしがらきや、高柳大輔先生の厩舎だけでなく、競馬でも様々な騎手が跨ることになります。その際に乗り役を選ばない馬作りが自分たちの目指してきたところでもあるだけに、それがいい結果に繋がったとするなら嬉しいですね」
当時は気性面の強さこそ覗かせていたが、我慢も効く賢さも兼ね備えていた。「距離はあってもいいのかなと思いましたが、動きには堅さを感じられただけに、切れよりもいい脚を長く使えるタイプになるのではと想像していました」
8月のメイクデビュー中京は芝1,600mのレースで3着に敗退したものの、そこから1ハロン伸ばした10月京都での2歳未勝利戦(芝1,800m)を勝利。続く黄菊賞は同じ京都競馬場ながら芝2,000mでのレースとなったものの、距離延長など感じさせないレース運びで2勝目をあげる。
「デビュー戦は出遅れたのもありましたが、その時以来のマイル戦となる朝日杯FS(G1)でも2着となってくれた時には、G1でも戦える馬であることを確認できました。弥生賞ディープインパクト記念(G2)(4着)は馬場の影響もあったと思いますし、皐月賞(G1)は条件的にも巻き返せる舞台だと思っていました」
この皐月賞(G1)で1番人気を集めていたのはデビュー戦、東京スポーツ杯2歳S(G2)、そしてホープフルS(G1)と3連勝で、この舞台へと臨んできたクロワデュノール。そのクロワデュノールが単勝1.5倍と圧倒的な人気を集めていた一方で、ミュージアムマイルは3番人気ながらも単勝オッズは10.6倍となっていた。
「皐月賞(G1)は追い切りも良かったですし、枠もいいところ(6枠11番)に入っただけにいいレースはできると思いました。また、隣(5枠10番)がクロワデュノールだったのでマークする形でレースを進められたのならば、チャンスはあるのではと期待をしていました」
高見優也厩舎長が想い描いていた、レースプラン通りにミュージアムマイルをビクトリーロードへと導いていったのが、B6厩舎の育成馬ではトロヴァトーレに初重賞制覇をもたらしていたモレイラ騎手だった。
前々でレースを進めていったクロワデュノールから3馬身程後方にポジションを取ったミュージアムマイルは、クロワデュノールが最後の直線で先頭に立とうとした時、その姿をマークするように馬場の真ん中へと進路を取った。
残り1ハロン過ぎで先頭に立ったのはクロワデュノール。だが、それを目標としたかのようにモレイラ騎手はゴーサインを出すと、ミュージアムマイルは一気に加速。その勢いのままに先頭でゴール板を駆け抜けた。
「道中のミュージアムマイルの手応えを見て、直線では確実に伸びてくると思いました。クロワデュノールが抜け出した時には、ここから馬群を引き離していくと思いましたが思ったよりも伸びを欠いていたので、その時に脚色の違いで交わせると思いました」
ミュージアムマイルはデビューからの3戦では上がり最速の脚を使い、その後のレースでも速い上がりを使ってきた。この皐月賞(G1)のゴール前では抜群の切れを見せてはいるものの上がりタイムの34秒1はメンバー中第4位であり、「切れた」というよりも一瞬の瞬発力が際立った走りとなった。
「あれ程までの瞬発力があるとは、育成時からは想像できませんでした。これも『モレイラマジック』なのかもしれません」
デビューしてからは一度も北海道へは戻ってきていないミュージアムマイルであるが、今年の1月にノーザンファームしがらきへ研修に行った際には、実際に背中に跨っただけでなく、管理を行う高柳大輔厩舎の友道優一調教助手とは頻繁に連絡を取り合っていた。
「しがらきで跨った時には一回り身体が大きくなっていただけでなく、育成時に感じられた堅さも解消されていました。友道君はノーザンファームで働いていた頃に、自分の厩舎で一緒に仕事をしてくれていたので、ミュージアムマイルに関しても頻繁に連絡をもらっていました」
レース後、友道優一調教助手からは感謝を伝えるLINEが高見優也厩舎長の元に届けられたという。立場は変われどその頃からの師弟関係で臨むのは、ホースマンの誰もが目標とする日本ダービー(G1)となる。
「吉田俊介さんも話していましたが、名前は『マイル』と付いてはいますが折り合いに不安が無いだけに芝2,400mの距離もぜんぜん持ってくれると思います。そのためにもまずは無事に日本ダービー(G1)を迎えてもらいたいです」
その日本ダービー(G1)は短期免許の関係で、モレイラ騎手からレーン騎手への乗り替わりとなる。ここで牧場時代から培ってきた『誰でも乗れる馬』であることが発揮されることで、レーン騎手を背に最高のパフォーマンスを見せてくれるに違いない。