重賞ウィナーレポート

2025年03月29日 毎日杯 G3

2025年03月29日 阪神競馬場 曇 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ファンダム

プロフィール

生年月日
2022年02月13日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:3戦3勝
総収得賞金
68,872,000円
サートゥルナーリア
母 (母父)
ファナティック  by  ジャスタウェイ
馬主
(有) キャロットファーム
生産者
(有)社台コーポレーション白老ファーム (白老)
調教師
辻 哲英
騎手
北村 宏司
  • 地方交流重賞では勝馬も誕生している
    地方交流重賞では勝馬も誕生している
  • 放牧地の向こうには太平洋が広がっている
    放牧地の向こうには太平洋が広がっている

 社台コーポレーション白老ファームにとって、今年の中央重賞初勝利をとなったのが、デビューからの3連勝で毎日杯(G3)を優勝したファンダムとなった。

 「牧場にとっても、待ちに待った重賞勝利となりました」と話すのは、社台コーポレーション白老ファームの吉武幾夫統括主任。実は今年に入ってから社台コーポレーション白老ファームの生産馬は、ファンダムが勝利するまでに、中央競馬の重賞で2着となった馬が5頭もいたからだ。

 そしてこの勝利は、ファンダムの祖母に当たるグレイトフィーヴァーの牝系にとっても、待ちに待った重賞勝利となった。1997年にフランスで産まれたグレイトフィーヴァーは、社台コーポレーション白老ファームに導入されると、堅実な仔出しを残していきながら、7番仔のアーデントが弥生賞(G2)で3着になるなど、5勝をあげる活躍を見せる。

 また、10番仔のシャルールは福島牝馬S(G3)、クイーンS(G3)でいずれも2着となっており、孫の代からもシュペルミエールが日経新春杯(G2)で3着。モンドデラモーレはファルコンS(G3)で2着、カニキュルもフローラS(G2)で3着など、重賞級のポテンシャルを確実に伝えながらも、重賞の壁だけは乗り越えられずにいた。

 連勝の勢いのままに、その壁をやすやすと乗り越えたのがファンダムとなる。母ファナティックはグレイトフィーヴァーに、社台コーポレーション白老ファームで誕生したジャスタウェイとの配合馬。現役時に1勝ながらも、通算6戦で2着が3回、3着が1回と高い連対率を残してきた。

 繁殖入りしてからは、こちらも社台コーポレーション白老ファームを代表する名馬であるオルフェーヴルを配合された、フラワーカンパニーを1番仔として送り出し、サートゥルナーリアを父に持つファンダムは2番仔となる。

 「フラワーカンパニーはいかにも初仔らしい小柄な馬でしたが、ファンダムは産まれながらに立派な馬体をしていただけでなく、グレイトフィーヴァーの牝系らしく、その後もしっかりと成長してくれました」(吉武幾夫統括主任)

 そして、ファンダムは父サートゥルナーリアにとっても、中央競馬では初めての重賞勝馬となった。

 「種牡馬としてのサートゥルナーリアは、父であるロードカナロアの特徴も産駒に反映されるのではと思っていましたが、ロードカナロア産駒との比較では、まだ馬体がしなやかに出た印象を受けました。ファンダムもそうでしたが、馬体がスリムに出た馬も多く、ロードカナロア産駒よりは距離適性は広くなるのではと思っていました」

 吉武幾夫統括主任はファンダムが白老ファームYearlingに移動してからも、その姿をチェックしていただけでなく、キャロットクラブの募集馬ツアーでも会員から質問を受けた際には、そのセールスポイントを語っていた。

 育成先となるノーザンファーム空港での調整も順調に進んだファンダムは、2歳の5月に管理が行われる辻哲英厩舎へと入厩。その後はノーザンファーム天栄での調整を挟んだ後、8月に辻哲英厩舎へと再入厩。9月のメイクデビュー中山に出走すると、見事に初陣を飾る。

 「新馬戦では先行しながら押し切るレースぶりが、溜めて切れる脚を使ってくる、グレイトフィーヴァーの牝系らしくない走りをしていると思いました(笑)。ただ、レコード決着となったように、この時期の中山芝1,600mにおいて、1分32秒台の時計で走ってきた姿には驚かされました」

 次走となったジュニアCには、同じ社台コーポレーション白老ファーム生産馬かつ、同じ牝系のモンドデラモーレも出走、2頭で人気を分け合う形となったが、その人気通りにファンダムが1着、モンドデラモーレが2着となった。

 「ジュニアCに出走していたモンドデラモーレも、産まれた頃から期待をしてきた馬であり、ここで2頭がぶつかってしまったかとは思いました。結果はワンツーフィニッシュで嬉しかったですが、モンドデラモーレはその後のファルコンS(G3)でも2着と、能力があることを改めて証明してくれたと思います」

 2番人気で臨んだ毎日杯(G3)だったが、これまでの2戦とは違い、陣営は後方待機策を選択する。ただ、逃げたガルダイアの作り出したペースは、1,000m通過は60秒5と比較的ゆったりとした流れとなっていく。

 ファンダムは第4コーナー通過の時点で最後方。しかも馬群の内目に進路を取っており、直線では8頭の馬たちがその前で壁になるような展開ともなる。だが、鞍上の北村宏司騎手は馬群のほつれを確認した上で外に進路を向けると、そこからファンダムは一気に末脚を伸ばしていく。最後は図ったかのように逃げ粘るガルダイアを差し切って、デビューから3連勝での重賞制覇を成し遂げた。

 「スローペースとはいっても、ある程度は流れていただけに、展開は向くのではとも思っていました。ただ、直線では内側のポケットに入ってしまったようにも見えましたし、外に出してからの末脚には驚かされました」

 その走りは、吉武幾夫統括主任が思っていた「グレイトフィーヴァーの牝系」らしい末脚ともなった。これまでのグレイトフィーヴァーの血を引く馬たちは、見事な末脚を披露していても、勝ちきれなかった産駒が多かったが、ファンダムは重賞制覇の向こうにあるG1制覇も意識できるような末脚を示したともいえる。

 過去の勝馬を見ても、出世レースとしても名高い毎日杯(G3)。この後のファンダムは、どの舞台で活躍していくのか、非常に楽しみになってくる。

 「この後の大きなレースは左回りで行われていくだけに、右回りしか経験していないファンダムがどんな走りをするかが鍵となってきますが、末脚勝負となった場合でも、長い直線は向いていると思えるだけに、このまま連勝を延ばしてもらいたいです」と吉武幾夫統括主任。そしてグレイトフィーヴァー系も、この勝利をきっかけとして、一気に重賞勝馬を量産してくれるに違いない。