重賞ウィナーレポート

2025年01月25日 小倉牝馬S G3

2025年01月25日 小倉競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:シンティレーション

プロフィール

生年月日
2019年01月15日 06歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:16戦5勝
総収得賞金
133,126,000円
ロードカナロア
母 (母父)
ファシネートダイア  by  アグネスタキオン
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
池上 昌和
騎手
杉原 誠人

 昨年までの愛知杯(G3)と同じ1月に施行されただけでなく、ハンデ戦のG3レースとして、今年から開催されることとなった小倉牝馬S(G3)。その記念すべき第一回のレースは、まさかの1着同着となった。

 同着となったその1頭が、最後の直線で先に抜け出しを図っていたシンティレーション。デビューから16戦目、重賞に挑戦すること5回目にして掴んだタイトルは競馬史だけでなく、ファンにもその走りをしっかりと刻むことになった。

 「レース当日は出張でノーザンファーム天栄にいました。レースの前に馬体チェックが終わり、に向こうの厩舎長たちとみんなでレースを見ていたのですが、ゴールの瞬間は周りが騒然となっただけでなく、その時は交わされたと思いました」とは厩舎長時代にシンティレーションを手掛けた、ノーザンファーム早来の佐藤洋輔調教主任。シンティレーションは2歳の10月にアルテミスS(G3)へと出走。3歳のフラワーC(G3)でも3着に好走しているが、育成時の印象はその仕上がりの良さとまた違った印象を持っていたと話す。

 「乗り出した頃の印象も悪くなかったですし、調教の動きも目を引いていましたが、それでも線の細さが気になるというのか、まだ良くなってくる馬だと思っていました」(佐藤洋輔調教主任)

 仕上がりの順調さを証明するかのように、3月末には管理先となる 池上昌和厩舎に入厩すると、4月上旬にはゲート試験を合格。その後、牧場へと戻ってきて、デビューの態勢を整えていく。

 「ゲート試験を受けて牧場へと戻ってきてから、馬が大人びたような印象を受けました。動きもしっかりとしており、これなら新馬戦からいいレースを見せてくれるのではと期待をしていました」

 メイクデビュー函館こそ2着に敗れたものの、続く札幌での2歳未勝利戦を勝利。そして重賞にも出走していくのだが、同じように勝ち上がってきた馬たちが、更なる成長をレースの中で示していく一方で、シンティレーションは勝ちきれないレースが続いていく。

 「高い能力は備わっていたと思いますが、成長曲線はゆっくりだったのでしょう。フラワーC(G3)の後は成長も見越して休養に入りますが、結果的にはそこでじっくりと態勢を整えられたことが、現在の活躍に繋がっていると思います」

 復帰を果たした4歳時は未勝利に終わるも、5歳初戦となる2勝クラスの東雲賞を勝利。その年の夏には3勝クラスの新潟日報賞を勝利してオープン入りを果たすと、10番人気での出走となったアイルランドT府中牝馬S(G2)では後方から一気の追い込みで2着に入着。上がりタイムは勝ち馬となったブレイディヴェーグと同じ、上がり最速(32秒8)を記録した。

 「オープン入りするまでは歯がゆいレースこそ続いていましたが、新潟日報賞の勝ち方も良かっただけに、アイルランドT府中牝馬S(G2)は期待をしていました。成長だけでなく、経験を重ねながら末脚も磨かれていただけに、速い流れとなる重賞では、更にいい走りができるとも思っていました」

 初のG1挑戦となったエリザベス女王杯(G1)ではあったが、直線の度重なる不利もあって10着に敗退。だが、不利が無ければあわやと言わせたほどのレース運びを見せた。

 「陣営がG1でも戦えると思ってこの舞台に挑戦させてくれたのが嬉しかったです。結果的に残念なレースとはなりましたが、その悔しさを小倉牝馬S(G3)で晴らしてくれるのではないかと思っていました」

 道中はインコースに進路を向けながら、後方へと待機。縦長となった馬群が凝縮されていく時に、ポジションを上げていき、前を行くクイーンズウォークを交わして先頭へと躍り出る。ただ、それを見計らったかのように、後続勢も一気に襲い掛かり、その中にいたフェアエールングが、最後に一延びして鼻面を並べた。

 「勢いは向こうでしたが、杉原誠人騎手がしっかりと首を伸ばしてくれました。そのタイミングがバッチリだったと思います」

 6歳1月にしての初重賞制覇。本格化の証をしっかりと感じさせたレースでもあるが、クラブの規定で今年3月末での引退が決まっている。

 「ここで引退するのは勿体ないなとの気持ちもありますが、6歳まで確実に競馬をしてくれながら、初重賞制覇を果たしたのは、とてもドラマティックだとも思いました。引退を前に重賞の名前を血統に残せたのも嬉しかったですし、繁殖入りを果たして、子供が誕生した時には、ぜひとも自分が担当している厩舎で手掛けてみたいです」

 14日にはシルク・ホースクラブのホームページ上で、3月8日の中山牝馬S(G3)に向けての調整が行われていることが発表された。ここで有終の美を飾っての引退、そして繁殖入りを期待したい。