重賞ウィナーレポート

2024年12月07日 中日新聞杯 G3

2024年12月07日 中京競馬場 曇 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:デシエルト

プロフィール

生年月日
2019年01月17日 05歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:14戦6勝
総収得賞金
143,767,000円
ドレフォン(USA)
母 (母父)
アドマイヤセプター  by  キングカメハメハ
馬主
(株) ラ・メール
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
安田 翔伍
騎手
岩田 康誠
  • 今年の夏はジャスティンパレスの管理も行ってきた
    今年の夏はジャスティンパレスの管理も行ってきた
  • 今年の夏から早来での管理が始まっている
    今年の夏から早来での管理が始まっている

 「二刀流」との言葉を一般的にしたのは、ロサンゼルス・ドジャースに所属する大谷翔平選手であるが、こと競馬界においては、芝、ダートといった異なる条件をマルチにこなす競走馬として、度々表現が用いられてきた。

 その意味では近年の競馬界で、「二刀流」の言葉がピッタリとくるのは、ダートではリステッドのグリーンチャンネルCでのレコード勝ちを含めて3勝。そして、中日新聞杯(G3)で初重賞制覇を果たした、デシエルトと言えるだろう。

 育成を手掛けたのは、ノーザンファーム早来の伊藤隆行厩舎長。これまでに数々のG1馬に携わってきたホースマンでもあるが、デシエルトに騎乗した時、あるG1馬と共通する乗り味の良さと、ストライドの大きさを感じ取った。

 「ルーラーシップも騎乗させてもらった機会がありますが、それと似た感覚がありました。他にも似たような馬がいると思い出していたら、それは全てエアグルーヴの血統馬であり、改めてその遺伝力の強さに驚かされました」(伊藤隆行厩舎長)

 その頃の伊藤隆行厩舎長のデシエルトに対する未来像は、現役時のエアグルーヴや、その血を引く馬たちの走りに現れていた、芝で活躍する姿だった。

 「その一方でドレフォンの遺伝も出てくれば、ダートもこなせるのではとの期待もありました」

 様々な可能性を持ったデシエルトが、まずデビューの舞台に選んだのは、ダート1,800mで行われたメイクデビュー阪神だった。そこで2着に7馬身差という圧巻のレースを見せると、続く3歳1勝クラスでも勝利。ダートでは2戦2勝の成績を残してオープン入りを果たす。

 ここで陣営は目標を芝のクラシック三冠に定めて、若葉Sへと出走。影を踏ませぬ逃げ切り勝ちで、芝適性の高さも証明することになった。

 「春のクラシックでは結果を残すことができませんでしたが、その後のイクイノックスやドウデュースの活躍だけでなく、この年の日本ダービー(G1)出走馬のうち、17頭が重賞馬となったことからしても、ハイレベルな世代だったと思います」

 秋にはダートに戦いの場を移すと、初の古馬との闘いとなったグリーンチャンネルCでは、従来のコースレコードを0秒3更新(1分33秒5)しての勝利。改めてダート適性の高さだけでなく、スピード能力の高さも証明する形となった。

 だが、レース後に左前脚の骨折が判明。復帰まで約1年1か月という長期休養に入る。

 「ノーザンファームに移動してからは、まずリハビリ厩舎で管理が行われた後、自分の厩舎に来たのはその約3か月後となります。復帰まで時間を要したように、回復には時間を要しただけでなく、本格的な騎乗を再開する際にも、念には念を入れながらアプローチを図っていきました」

 デシエルトは復帰戦となった霜月Sを始め、その後のレースでも人気に支持されていく。だが、好走は見せるものの、勝利という結果には繋がらなかった。

 すると、前走のアンドロメダSでは、3歳時の日本ダービー(G1)以来となる芝でのレースに出走。若葉Sを再現するかのように、その時の鞍上である岩田康誠騎手を背に、見事な逃げ切り勝ちを決めた。

 「勝ちきれなかった頃に比べると、アンドロメダSからのデシエルトは、走りたいという気持ちがポジティブに出ているように見受けられました。ダートが合っていなかったというのでなく、芝の中距離の方がハナに立てるので、より自分のパフォーマンスを発揮しやすくなるのかもしれません」

 アンドロメダSでは2着のロードデルレイに、3馬身1/2差を付けての逃げ切り勝ちを果たしたデシエルトであるが、この中日新聞杯(G3)でも二の足を使ってレースの主導権を握っていく。

 前半の1,000m通過は58秒8と速い流れとなるも、そのスピードに陰りは見られない。最後の直線でも後続馬に影を踏ませるどころか、残り一ハロンを前に岩田康誠騎手からゴーサインが出ると、その差を更に広げていった。

 「フルゲートでの競馬にも関わらず、小細工をすることなく、自分のポジティブな気持ちで走り切った姿を見て、改めて絶対能力の高い馬だと思いました。これも、馬の気持ちを尊重させてくれている岩田康誠騎手や、適性を見出してくれている安田翔伍調教師や、厩舎スタッフの皆さんのおかげだと思います。調整をしてもらっている、ノーザンファームしがらきのスタッフにも感謝しかありません」

 来年で6歳を迎えるが、今がまさに全盛期と言えるような走りを見せているだけでなく、来年は芝のG1戦線での活躍も期待できそうだ。

 「これだけのスピード能力があるだけに、更にメンバーが強くなっても楽しみです。その際にも他の馬たちの目標になるとは思いますが、ゴール板まで押し切ってしまうレースを見せて欲しいです」

 大谷翔平選手は今シーズン、打者だけに専念すると、ホームラン、打点、盗塁といった数々のタイトルを獲得。史上初の「50‐50」(50本塁打、50盗塁)も達成した。来年のデシエルトは、芝のレースを中心に使われていくことになりそうだが、そこで幾つのタイトルを取ってくれるか、今から楽しみになってくる。