重賞ウィナーレポート

2024年11月16日 東スポ杯2歳S G2

2024年11月16日 東京競馬場 曇 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クロワデュノール

プロフィール

生年月日
2022年03月21日 02歳
性別/毛色
牡/青鹿毛
戦績
国内:2戦2勝
総収得賞金
116,789,000円
キタサンブラック
母 (母父)
ライジングクロス(GB)  by  Cape Cross(IRE)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
斉藤 崇史
騎手
北村 友一

 今年、6月9日に行われたメイクデビュー東京では、芝1,800mの新馬戦で史上最速となるタイムで勝利。そこから約5か月の間隔を取って使った東京スポーツ杯2歳S(G2)では、プラス24kgと成長の跡を示しただけでなく、1番人気に応える見事な走りで重賞を優勝したのがクロワデュノールである。

 デビューから2戦しかしていないにも関わらず、その走りは2歳離れしたスケールの違いを感じさせている。その一方で育成を手掛けてきた、ノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長にとっては、早期デビューだけでなく、この時期の重賞制覇も想像していた以上の走りだった。

 「本州への移動時期こそ3月と早くなりましたが、これは輸送や環境の変化などを経験させて、成長を促したいとの狙いもありました。順調に来ていたのは確かでしたが、キタサンブラック産駒らしいというのか、この時期における成長の波が激しく、調教もメリハリをつけながら進めてきました」(佐々木淳吏厩舎長)

 無事にゲート試験を合格したクロワデュノールは、一度厩舎を離れると、ノーザンファームで調整が行われていく。そこでも順調さは失われることなく、6月デビューのプランが持ち上がるようになっていた。

 「牧場にいた頃から操縦性が高い馬でした。騎乗していても背中越しに人との会話が出来るというのか、こちらの指示を待ってくれる賢さも備わっていました」

 騎乗調教ではそれまで自由に走り回っていた馬たちを、競馬というルールで戦わせるべく、様々な理解を教えていく。当初はほとんどの馬が人が騎乗したことに対する違和感や、他の馬たちが我を忘れて走っていく様を見て、オンのスイッチが入ってしまうのだが、クロワデュノールは人の指示を待てたというのか、鞍上が求める以上の動きはしなかった。

 「ここまでの理解力がある馬が、競馬でどんな走りをするのかが、自分としても楽しみになりました。新馬戦は芝1,800mのレースでしたが、距離の不安は無いと思っていました。ただ、あれだけのパフォーマンスを見せたのは驚きでした」

 3番人気で迎えたメイクデビュー東京。逃げた1番人気のアルレッキーノの後ろからレースを進めたクロワデュノールは、最後の直線で馬体を合わせていくと、残り1ハロン過ぎからその差を広げていく。結果は2馬身半差をつけての快勝であり、勝ち時計の1分46秒7は、東京芝1,800mにおける2歳新馬戦のレコードタイムともなった。

 「人気馬を相手にどんなレースをするのかと思っていただけに、その勝ち方や、勝ち時計は想像を遥かに超えていました。現時点でこれだけの走りをしたのならば、競走馬として完成を迎えた時には、どれだけの走りを見せてくれるのだろうかと、ただただ驚いていました」

 その後はノーザンファーム天栄で再調整が行われるも、馬体の成長の激しい波は、クロワデュノールの馬体を大きく変化させていった。

 「向こうでも成長のイメージを持ちながら進めてくれましたが、そこでも体高が出てくるといった、馬体の変化に合わせるかのように、調教を続けてもらいました。物凄く神経を研ぎ澄ませながら調教を行ってもらったと思います」

 その成長の証こそが、プラス24kgという馬体に現れていた。この東京スポーツ杯2歳S(G2)も逃げたサトノシャイニングをマークする形でのレースとなったが、最後の直線では鞍上の北村友一騎手が手綱を動かすと加速を開始。残り1ハロンで右ムチが入ると更にスピードを上げていき、結果は3/4馬身差をつけてのゴールとなった。

 「長くいい脚をずっと使っていた走りからしても、心臓が相当強いのでしょう。着差は僅差となりましたが、それで勝ちきれたのは、馬にとってもいい勉強になったと思います」

 競馬ではゴール板を過ぎても順位は変わらなかった、という表現が使われるが、東京スポーツ杯2歳S(G2)におけるクロワデュノールの脚色がまさにそれであった。まだ距離があっていいというのか、ゴールの後は鞍上からの指示があれば、まだ長くいい脚を使い続けたと思えるような余裕さえも感じられた。

 ただ、鞍上の北村友一騎手からは先々を期待するコメントだけでなく、「ハミに頼って走っている。まだ100点満点ではない」といった言葉も聞かれていた。

 「まだ未完成な部分が数多く残っている中でのレースだったと思いますし、その中で勝ちきってくれたことが凄いと思いました。それだけに今後のレースで、更に完成していく姿を見せてくれることが楽しみでなりません」

 次走はホープフルS(G1)に出走を予定。戦前の予想では1番人気の支持を集めることになりそうだが、そこでファンは1戦ごとに強くなっていくクロワデュノールの姿を目の当たりにするのだろう。