2024年10月26日 アルテミスS G3
優勝馬:ブラウンラチェット
プロフィール
- 生年月日
- 2022年04月08日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:2戦2勝
- 総収得賞金
- 36,592,000円
- 父
- キズナ
- 母 (母父)
- フォエヴァーダーリング(USA) by Congrats(USA)
- 馬主
- (有) サンデーレーシング
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 手塚 貴久
- 騎手
- C.ルメール
育成スタッフにとっての喜びを聞くと、自分たちの手元を離れてから、それほど時間が経っていない2歳戦での勝利であり、そして、2歳重賞制覇。そこに、「乗りやすい馬」「賢い馬」などの評価が厩舎関係者や、レースで騎乗したジョッキーから聞こえてきたのならば、その喜びは更に倍増する。
それを全て備えた馬が、アルテミスS(G3)を優勝したブラウンラチェットである。兄は昨年の全日本2歳優駿(Jpn1)とジャパンダートクラシック(Jpn1)を優勝。ケンタッキーダービー(G1)とブリーダーズCクラシック(G1)で3着となったフォーエバーヤングという良血馬。ブラウンラチェットもその期待通りに9月のメイクデビュー中山を勝利。その後、鞍上を務めたルメール騎手から、「スタートから良いポジションを取れました。ずっと冷静に走ってくれて、最後も加速してくれました」との最上級の誉め言葉が聞かれた。
「そのコメントを見た時は、勝ったのと同じぐらいに嬉しかったですね」とはブラウンラチェットの育成調教を手掛けてきた、ノーザンファーム空港の佐藤信乃介厩舎長。血統背景の良さだけでなく、動きの良さも評価される形で、春先の2歳馬でも大きく取り上げられることがあったブラウンラチェットだが、その頃から佐藤信乃介厩舎長は背中の良さにも表れていた、素質の高さを評価していた。
「身体自体はコンパクトであり、その辺の成長をどう促していくのかが課題ともなりました。牧場から移動したのは7月に入ってからとなり、デビューも9月となりましたが、自分のイメージよりも早く競馬を使えるようになったなと思っていました」(佐藤信乃介厩舎長)
その時点での完成度がレースに直結する新馬戦であるが、9月16日のメイクデビュー中山に出走してきたブラウンラチェットは、好スタートから逃げ馬を射程圏内に置く形でレースを進めていくと、直線では颯爽と抜け出して優勝。まさに非の打ち所の無いレースで初戦を飾った。
そのレース後に、鞍上のルメール騎手からは上記の言葉が聞かれただけでなく、管理をする手塚調教師からも、「正攻法の競馬をしてセンスがいい」と高い評価を送っていた。
「牧場では気負うところもあったので、その辺を注意しながら調教を進めてきました。動きの印象からすると、広いコースの方が合っているのではと思っていただけに、中山コースであれだけの勝ち方を見せてくれた時には、改めて能力の高い馬だと思いました」
新馬戦の舞台となった中山1,800mに続き、ブラウンラチェットが挑んだのは東京芝1,600mで行われるアルテミスS(G3)。初戦で折り合いの不安を感じさせないレースを見せたものの、それだけに切れ味勝負となる東京のマイル戦が向かないのではとの不安もあったからだった。
だが、その不安は杞憂に終わる。アルテミスS(G3)でも好位でレースを進めていったブラウンラチェットは、残り1ハロンでルメール騎手からゴーサインが出ると一気に加速。ゴール板までその脚色は衰えず、2着馬に1馬身1/4差を付ける快勝となった。
「この勝ち方を見ていても、メンタルが相当大人びていると思います。まだ、身体も出来きっていない中で、レース間隔が詰まっている不安もありましたが、手塚先生や厩舎の皆さんがしっかりと管理してもらえただけでなく、中間の調整をしてくれたノーザンファーム天栄のスタッフにも感謝するだけです」
半兄のフォーエバーヤングはダートで頭角を現すと、2歳の暮れにはG1級競走を優勝。ブラウンラチェットも次走の阪神JF(G1)でG1制覇の期待もかかる。
「G1を勝てるチャンスがあると思います。ただ、身体の成長が伴って、本当に良くなるのは3歳に入ってからだと思っているので、来年に繋がるレースを見せてもらいたいです」
距離の不安どころか、右回り、左回りの不安も払拭。そこに折り合いの良さともなっている賢さも備えているブラウンラチェットだが、兄と同じ成長曲線を辿っていったのならば、芯の強さを発揮するのは3歳を迎えてから。阪神JF(G1)でも完成度の高さを証明した時に、来年の牝馬クラシック三冠は現実ともなってきそうだ。