重賞ウィナーレポート

2024年10月27日 天皇賞(秋) G1

2024年10月27日 東京競馬場 曇 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ドウデュース

プロフィール

生年月日
2019年05月07日 05歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:12戦7勝
総収得賞金
1,753,479,000円
ハーツクライ
母 (母父)
ダストアンドダイヤモンズ(USA)  by  Vindication(USA)
馬主
(株) キーファーズ
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
友道 康夫
騎手
武 豊
  • 朝日杯FS(G1)の後で届けられたミニゼッケンと、頭絡に付けられていたゼッケン番号のバッジ
    朝日杯FS(G1)の後で届けられたミニゼッケンと、頭絡に付けられていたゼッケン番号のバッジ
  • 多くの活躍馬を見守ってきた、厩舎猫の銀太
    多くの活躍馬を見守ってきた、厩舎猫の銀太

 今年の天皇賞(秋)(G1)における前半の1,000m通過は59秒9。芝2,000mの日本レコード(1分55秒2)を更新した、昨年のラップタイム(57秒7)との比較すると、かなりゆったりとした流れとなった。

 レースの主導権を握ったのはホウオウビスケッツ。その穏やかな流れの中、先行勢は仕掛けのタイミングを計っていた中で、1番人気に支持されていたリバティアイランドも、中団からポジションを上げていく。

 その一方で2番人気のドウデュースは、自らのレーススタイルを貫くかのように、後方からレースを進めていった。

 「応援していただいた皆さんと同じ気持ちだったとは思いますが、前半のラップを見た時には、その位置でいいのか、と思いました」と苦笑いを浮かべるのは、ノーザンファーム空港の木村純一厩舎長。木村純一厩舎長が管理してきた育成馬は、この秋シーズンにおける活躍が目覚ましくなっており、10月に入ってからはシュヴァリエローズが京都大賞典(G2)を優勝。富士S(G2)もジュンブロッサムが勝利している。

 活躍馬たちの姿は写真パネルとして厩舎内に飾られている。ただ、ホープフルS(G1)を制したキラーアビリティと同様に、G1馬の展示スペースとばかりに展示場所を変えているのが、朝日杯FS(G1)、日本ダービー(G1)、有馬記念(G1)と3枚のパネルが飾られているドウデュースだった。

 「ノーザンファームしがらきにおける調整の過程や、入厩後の調教を見ていても中間の過程は申し分ないと思っていましたが、テレビの画面越しに見たパドックの歩様や馬体を見た時には、素晴らしい状態に仕上げてもらえたと思いました」(木村純一厩舎長)

 その時点で勝ち負けのレースになるとの期待は膨らんでいたものの、勝負は水物との言葉もあるように、ゲートが開いてからまさかのスローペースも、まさかの後方からのレースも、木村純一厩舎長は全く想像していなかった。

 直線に入ってからやや、馬群は凝縮したものの、それでもドウデュースの位置取りは後方の2番手。前を走るホウオウビスケッツの脚色にも陰りは見られない。

 そんな中、武豊騎手のゴーサインに答えて加速を始めたドウデュースは、じわじわとホウオウビスケッツとの差を詰めにかかる。残り1ハロン過ぎでムチが入ると、そこから更に加速を開始する。脚色の違いはあきらかであり、前の馬たちを一気に交わし切る。上がり3ハロンのタイムは驚愕の32秒5。勿論これは、天皇賞(秋)(G1)が東京競馬場の芝2,000mで行われてから、史上最速の上がりタイムともなった。

 「直線に入ってからも、まだ動かないのかと思いました。それだけにゲームの世界でしか見たことの無いような、あの末脚は衝撃でした」

 ゲームの世界ならプログラミングで、映像の世界でもあの結末を作り出せるのは可能なのだろうが、実際の競馬で主演のドウデュースと武豊騎手は、ノンフィクションとは思えない程のドラマチックなレースを我々の前に見せてくれた。

 「ヒヤヒヤした部分もありますが、本当に感動しました。自分たちの目標を叶えてくれた日本ダービー(G1)、多くのファンの方が見ている中で勝利してくれた有馬記念(G1)など、ドウデュースのベストレースは幾つもありますが、それを超えるレースとなったのが、この天皇賞(秋)(G1)だと思います」

 次走はジャパンC(G1)に出走を予定。そして、連覇のかかる有馬記念(G1)が現役生活のラストランとなるが、天皇賞(秋)(G1)の後には友道厩舎の大江祐輔調教助手が来場。レースの疲れも無く、元気に次のレースに臨めそうだと告げられたという。

 「ハーツクライ産駒らしい成長曲線が今、ちょうどいい時期に来ているのかもしれません。ジャパンC(G1)も国内だけでなく、海外からも凄い馬たちが出走してきましたが、ドウデュースらしいレースをすれば結果を出せると思いますし、種牡馬としての価値を高めるためにも、ジャパンC(G1)を勝ってもらいたいです」

 ジャパンC(G1)の距離は天皇賞(秋)(G1)より2ハロン伸びるが、舞台は同じ東京競馬場。最後の直線でどんなポジションにいようとも、そこから最も鋭い末脚を使って伸びてくるのはドウデュースなのだろう。