重賞ウィナーレポート

2024年05月19日 オークス G1

2024年05月19日 東京競馬場 曇 良 芝 2400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:チェルヴィニア

プロフィール

生年月日
2021年02月03日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
328,424,000円
ハービンジャー(GB)
母 (母父)
チェッキーノ  by  キングカメハメハ
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
木村 哲也
騎手
C.ルメール

 デビュー前からJRA-VANの2歳馬牧場レポートといった媒体で、能力の高さを期待されていたチェルヴィニアは、その期待通りにデビュー3戦目となるアルテミスS(G3)を優勝。だが、G1初制覇の期待がかかった阪神JF(G1)を左トモの違和感から出走回避すると、復帰戦となった桜花賞(G1)では4番人気を背負うも、13着に敗退する。

 「阪神JF(G1)への出走が叶わなかった時は、さすがにショックでした。ただ、この馬を送り出した自分たちとしては、仕方のないことだと割り切って、あとは木村先生や厩舎スタッフの皆さん、そして、ノーザンファーム天栄のスタッフに万全な状態で復帰させてほしいと思いました」と話すのは、ノーザンファーム早来の山根健太郎厩舎長。桜花賞(G1)は阪神競馬場まで応援に行ったという。

 「牧場から送り出した頃よりも大人びた印象があった一方で、休み明けということもあるのか、闘争心があまり乗っていないようにも見受けられました。大外枠からの発走になったことを含めて、難しいレースになったと思います」(山根厩舎長)

 それに加えて桜花賞(G1)は初めての関西移動、そして初めての右回りという未知なる条件も重なっていた。それを分かっていたのか、続くオークス(G1)で、ファンはチェルヴィニアを2番人気へと支持する。

 「桜花賞(G1)の結果からすると、常識的に巻き返しは厳しいとの見方もあったかと思います。それでも週明けの新聞の印も集まっていただけでなく、レース当日のオッズとその結果を見て、ファンの方は馬券が上手いなあと感服しました」

 その応援の影には、2016年のオークス(G1)で2着に敗れたチェルヴィニアの母、チェッキーノのリベンジを果たしてほしいという思い。そして、母と父ハービンジャーの血統背景や競走成績からも、オークス(G1)で巻き返せるはずという期待もあったのかもしれない。

 「母のチェッキーノも自分が育成スタッフだった頃に関わってきた馬でした。ただ、育成時の印象としては母とはあまり似ていなかっただけでなく、自分自身としてチェルヴィニアはオークス(G1)向きの馬ではないと思っています。その一方で走ることがとても上手だった馬なので、同世代の牝馬たちと比べると、長い距離を走ってくる不安はありませんでした」

 桜花賞(G1)は競馬場へ応援に行っていた山根厩舎長であるが、オークス(G1)は自宅から声援を送ることに決めた。ゲートが開くと、ヴィントシュティレとショウナンマヌエラが主導権争いを繰り広げていく。1,000m通過は57秒7というハイペースとなったが、チェルヴィニアは桜花賞馬となったステレンボッシュをマークする位置で競馬を進めていった。

 激しい主導権争いからショウナンマヌエラがポジションを下げていき、ヴィントシュティレが単騎先頭となるものの、4コーナー手前で一気に後続勢が前を行く2頭を飲み込んでいく。残り200m過ぎで横一線となった中から抜け出してきたのは、二冠制覇を狙うステレンボッシュ。しかし、その外に進路を向けていたチェルヴィニアがゴール手前で鋭く伸びて、最後は半馬身差だけ前に出ていた。

 「直線に入った時の脚の使い方を見た時に、さすがルメール騎手だなと思いました。その仕掛けにチェルヴィニアも反応してくれましたが、先にステレンボッシュが抜け出していただけに、ゴール前は祈るような気持ちでした」

 ゴールの瞬間、山根厩舎長のスマホには、祝福の言葉を伝えるべく、電話、メール、LINEと次から次へと着信が届いた。実は山根厩舎長にとっては、2019年に厩舎を任されて以降、これが育成馬では初めて手掛けた育成馬でもあった。

 「改めてG1を勝つことが凄いと思いました。沢山の方から祝福していただけたことには感謝しかありません。育成馬であるメイケイエールも幾度となくG1では惜しいレースをしてきて、その度に悔しい思いも何度もしてきました」

 メイケイエールは小倉2歳S(G3)で山根厩舎に最初の重賞タイトルをもたらした馬であり、その後もレコード勝ち2回を含めて、通算で重賞6勝の活躍を付けていった。ただ、ラストランとなる今年の高松宮記念(G1)まで、G1には11回挑戦するも、勝利をあげることはできなかった。

 「メイケイエールはあれほどまでにファンに愛された馬でもあり、自分自身としてもとても思い出に残っている馬でした。ただ、競馬の神様がいるとするのならば、メイケイエールだけでなく、母であるチェッキーノの悔しさを晴らすのも含めて、ここまで待っていなさいと言われたような気持ちにもなりました」

 チェルヴィニアの次走は秋華賞(G1)を予定。ここで牝馬二冠制覇を目指していく。

 「先ほどもお話したように、決して2,400mに特化した馬ではありませんし、この馬らしい走りができたのならば、秋華賞(G1)もいいレースをしてくれると思います」と期待を寄せる山根厩舎長。次にG1制覇の喜びを感じられるのは、そう遠いことにはならなさそうだ。