重賞ウィナーレポート

2024年02月18日 フェブラリーS G1

2024年02月18日 東京競馬場 晴 良 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ペプチドナイル

プロフィール

生年月日
2018年04月24日 06歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:20戦8勝
総収得賞金
278,596,000円
キングカメハメハ
母 (母父)
クイーンオリーブ  by  マンハッタンカフェ
馬主
沼川 一彦
生産者
杵臼牧場 (浦河)
調教師
武 英智
騎手
藤岡 佑介
  • 杵臼生活館の前には、優勝を称える看板も飾られていた
    杵臼生活館の前には、優勝を称える看板も飾られていた
  • テイエムオペラオー以来のG1制覇となった
    テイエムオペラオー以来のG1制覇となった
  • 鎌田信一代表
    鎌田信一代表
  • 鎌田正信共同代表
    鎌田正信共同代表
  • 殊勲の母となったクイーンオリーブ
    殊勲の母となったクイーンオリーブ
  • クイーンオリーブの23(牡、父シニスターミニスター)
    クイーンオリーブの23(牡、父シニスターミニスター)
  • 当歳馬も続々と誕生している
    当歳馬も続々と誕生している

 今年で41回目、G1に昇格してからは28回目を迎えるフェブラリーS(G1)。フルゲート16頭の中には、昨年のJBCスプリント(Jpn1)の覇者であるイグナイターや、JBCクラシック(Jpn1)優勝馬のキングズソード。そして、芝とダート双方でのG1制覇を狙うドゥラエレーデに、昨年のチャンピオンズC(G1)と東京大賞典(G1)で共に2着となったウィルソンテソーロなどが名を連ねた。

 単勝一桁台も4頭と抜けた人気馬がいない混戦を証明するかのように、先行勢と後方勢が一塊となった最後の直線。その中を一気に抜け出してきたのは11番人気のペプチドナイルだった。

 その脚色は鈍ることなく、後方から追い込んできたガイアフォースを1馬身4分の1差振り切っての優勝。ペプチドナイルにとってはこれが初G1制覇であり、初重賞制覇。そして、生産牧場である浦河町の杵臼牧場にとっては、2001年の天皇賞(春)(G1)テイエムオペラオー以降、実に23年ぶりのG1制覇ともなった。

 「その間にもライラック(2022年のエリザベス女王杯(G1))や、トップナイフ(2022年のホープフルS(G1))と惜しいレースもありました。それだけに、またG1馬を送り出せたという感慨はあります」と話すの鎌田信一代表。杵臼牧場は1995年頃に父の鎌田信(のぶ)さんが創業。サンケイ大阪杯などを制したキングラナークや、マルカアイリス(小倉3歳S(G3))、マコトライデン(シリウスS(G3))など、多くの活躍馬を送り出していく。

 その中でも1999年の皐月賞(G1)を制して、初のG1タイトルを牧場に授けたテイエムオペラオーは、その後G1で7勝をあげる活躍で、当時の世界最高となる収得賞金(18億3,518万9,000円)を残している。

 そのテイエムオペラオーの活躍以降、牧場は生産規模を拡大していくのだが、その時に鎌田代表の右腕となっていったのが、鎌田代表の長男で、牧場の共同代表を務める鎌田正信さんだった。

 「それまではサラリーマンをしていたのですが、学生の頃、テイエムオペラオーのレースを競馬場で見ていて、この仕事への憧れを持つようになりました」(鎌田正信共同代表)

 鎌田共同代表は白老ファームで8年ほど勤めた後に、牧場へと戻ってくる。その頃から牧場では昼夜放牧も開始しており、心身ともにしっかりと鍛えられた生産馬たちの中から、2017年の札幌2歳S(G3)の優勝馬でもあるブラックホールなどの活躍馬もコンスタントに誕生していく。

 信一代表と正信共同代表が目指してきた馬作りが、最高の結果として表れたのがペプチドナイルと言えるだろう。そこに経理といった事務的な作業でバックアップしていっただけでなく、時には配合のアイディアなども授けていったのが、信一代表の妻である満寿美さんだった。満寿美さんとともにペプチドナイルの配合を考えた鎌田共同代表は話す。

 「半兄のラストダンスが、ロードカナロアとの配合で短距離色が強く出たので、同じ父系で距離の持つキングカメハメハを配合相手に決めました。産まれてきた頃からスラっとした、綺麗な馬体をしており、当時は芝の中距離馬になるのではと思っていました」(鎌田共同代表)

 デビューからの2戦は芝で使われたものの、ダート転向初戦の3歳未勝利戦を勝利して以降は、ダートの中距離路線で活躍を続けていく。2023年の夏には大沼Sに続いて、マリーンSも勝利。この連勝で「北海道ダート三冠」制覇がかかったエルムS(G3)では13着に敗れるも、昨年のペテルギウスSでオープン3勝をあげて、改めて成長力の高さを示すと、4度目の重賞挑戦となるフェブラリーS(G1)へと臨んでいった。

 この日、競馬場に正信共同代表を送り出した信一代表は、自宅のTVでレースを観戦していた。

 「パドックの振り返りで解説者の方がペプチドナイルを高く評価してくれていたのを聞いて、人気以上に走ってくれるのではないかと思いました。その通りに状態も良かったのでしょうし、直線で抜け出してからは、東京競馬場の直線がとても長く感じました」(鎌田代表)

 その後、牧場にはお祝いの電話や来客が相次いだが、その間にはグリーンチャンネルでの生産者インタビューもあった。

 「何を話したかを思い出せない程に忙しかったですね。G1を勝った喜びと忙しさが、半分半分といった感じでした」(鎌田代表)

 一方、競馬場で歓喜の瞬間に立ち会った鎌田正信共同代表は、生産者として表彰式に臨むこととなった。

 「テイエムオペラオーの頃とは、また違った喜びや感動がありました。この仕事を選んで良かったとも思いました」(鎌田共同代表)

 G1馬となったペプチドナイルの次走は、5月1日に船橋競馬場で行われるかしわ記念(Jpn1)。そこにはフェブラリーS(G1)のリベンジを狙う中央勢に加えて、地方勢からも昨年のダート三冠馬ミックファイアや、地元船橋のエース格とも言える、ギガキングが出走を予定している。

 だが、6歳にして本格化した感のあるペプチドナイルなら、ここでも力の違いを証明してくれるはず。このままG1を勝ち進んだ向こうにあるのは。テイエムオペラオーに並ぶG1 7勝となりそうだ。