2024年02月04日 きさらぎ賞 G3
優勝馬:ビザンチンドリーム
プロフィール
- 生年月日
- 2021年01月28日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:2戦2勝
- 総収得賞金
- 68,620,000円
- 馬主
- 吉田 和美
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 坂口 智康
- 騎手
- R.ピーヒュレク
デビュー2戦目でのきさらぎ賞(G3)制覇は、2018年に同レースを制したサトノフェイバー以来、史上2頭目の快挙。しかも1分46秒8の勝ち時計は、2016年(サトノダイヤモンド)を0秒1更新するレースレコードとなった。
まさに牡馬クラシック戦線に現れた新星とも言えるビザンチンドリームであるが、その活躍とは正反対と言えるほどに、ノーザンファーム空港での育成時はデビューが危ぶまれた時期もあった。
「左トモに不安があり、育成厩舎にきてからはしばらくの間トレッドミルでの調整を行っていました。騎乗馴致を始めたのは2歳の1月末になってからとなります」と話すのはノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長。日本ダービー(G1)を制したシャフリヤールなど、幾多の活躍馬を送りだしてきた一方で、シャケトラやグロンディオーズといった、長期に渡る休養馬たちの管理も行い、そして重賞馬となる足がかりを作っていった。
「その頃は無事にデビューさせることだけで精一杯でした。同世代の馬たちは坂路で時計を出している中でも、常に脚元の状況を見ながら、じっくりと進めていきました」(佐々木厩舎長)
牧場内に緑が芽吹き始めた頃、ようやくビザンチンドリームのデビューの目処が立ち始める。移動の話が持ち上がるようになったのは7月に入ってからであり、本州が涼しくなった9月に牧場を旅立っていった。
2歳12月のメイクデビュー阪神で初戦を迎えたビザンチンドリームであったが、佐々木厩舎長や厩舎スタッフからすると、競馬場でデビューする姿を見られただけでも十分過ぎるほどの思いがあった。
ただ、調教でも好時計を記録して、2番人気の支持を集めてこの舞台へと臨んだビザンチンドリームは、スタートのタイミングが合わず後方からのレースとなるも、上がり3ハロン33秒9の末脚を使い、逃げ切りを図ろうとする2着馬に3馬身差を付けての快勝を果たす。
「あんなレースができるとは、全く想像していませんでした。きさらぎ賞(G3)も道中は届かないのではとも思いましたし、ゴール前で追い込んできた時ですら、体勢的に不利なのではと、テレビを変えてしまいました」(佐々木厩舎長)
ゴール前では3頭が横並びとなる大接戦となったが、写真判定の結果、ウォーターリヒトよりもハナ差前に出ていたのはビザンチンドリームだった。
「確定が出た後に牧場のスタッフから次々と電話が来ました。その時に初めて勝っていることを知りました」
その電話の中には、佐々木厩舎長や厩舎スタッフたちがビザンチンドリームをデビューさせるべく、奮闘してきた姿を知る関係者もいた。
「あるスタッフからは、『佐々木君の厩舎らしい馬だね』とも言われました。その言葉を聞いた時、どこか有難い気持ちにもなりました。決して報われることは多くないとは思いますが、それでも自分の厩舎に来た馬たちにはベストを尽くして、まずは無事にデビューをさせてあげたい。ともに働くスタッフたちも同じ思いを持って仕事をしてくれていますし、その思いがビザンチンドリームの走りに繋がっていてくれたのならば嬉しいですよね」(佐々木厩舎長)
次走は皐月賞(G1)に直行することとなったが、デビューから3戦目での皐月賞(G1)制覇となれば、こちらも昨年のソールオリエンス以来の最小キャリアとなるだけでなく、史上21頭目となる無敗の皐月賞馬ともなる。
「ゲートの出が良くないところは、まだ心身ともに成長しきっていないのでしょうし、まだ走りのバランスも良くなれば、まだいいレースができるはずです。目標とする皐月賞(G1)は初めての関東遠征でもあり、フルゲートとなった中山の2000mをどう克服するかなど課題は残されていますが、サトノダイヤモンドを超えるようなレースをしてくれた走りを見ると、この馬は伸びしろしかないとの期待しかありません」(佐々木厩舎長)
出世レースとしても知られるきさらぎ賞(G3)であるが、2016年の勝ち馬で、後に菊花賞(G1)と有馬記念(G1)を制したサトノダイヤモンドも佐々木厩舎長の元で管理された馬となる。
その厩舎の先輩に迫り、そして追い越していくような走りをビザンチンドリームには見せてもらおう。