重賞ウィナーレポート

2023年12月28日 ホープフルS G1

2023年12月28日 中山競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:レガレイラ

プロフィール

生年月日
2021年04月12日 02歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
82,779,000円
スワーヴリチャード
母 (母父)
ロカ  by  ハービンジャー(GB)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
木村 哲也
騎手
C.ルメール

 近年の混合G1レースにおいて、牝馬の勝利は珍しく無くなってきた。だが、2歳混合G1となると勝手が違ってくる。同じ芝のマイル戦で牝馬は阪神JF(G1)、牡馬は朝日杯FS(G1)と区分されていることもあり、出走してくることはまれとなっていることも関係している。

 2018年にはその年のサウジアラビアRC(G3)に勝利した、グランアレグリアが出走。1番人気の支持を集めるも3着に敗れている。2023年にも阪神JF(G1)を除外となったタガノエルピーダが参戦し、勝ったジャンタルマンタルから0秒2差の3着に入着した。他にも過去には好走例こそあれど、一頭たりとして牝馬の朝日杯FS(G1)の優勝馬は出ていない。

 それは2017年からG1に昇格したホープフルS(G1)も一緒だった。その年にはナスノシンフォニー(5着)とリュヌルージュ(11着)が出走するも、以後、2023年まで参戦してきた牝馬はいなかった。

 だが、ついに歴史の扉は開かれた。同じ牝馬のアンモシエラと共に、2023年のホープフルS(G1)に出走してきたレガレイラは、14頭の牡馬(2頭が出走取消)を前に1番人気の支持を集める。

 そのファンからの期待に応えるかのように、先に抜け出した2番人気のシンエンペラーをゴール前で交わしての優勝。84年にグレード制が導入されて以降かつ、朝日杯FS(G1)とホープフルS(G1)に牝馬が出走可能になってから、2歳の混合G1を牝馬が勝利したのは史上初の快挙となった。

 この快挙を予感していたのはファンだけでなく、育成を手掛けてきたノーザンファーム早来の佐藤洋輔厩舎長も一緒だった。

 「抽選となっていましたが、出走できたのならば十分にチャンスはあると思っていました」(佐藤厩舎長)

 レガレイラは春先の2歳馬取材でも、佐藤厩舎長から「期待の一頭」として名前が挙がっていた馬だった。

 「馬体のバランスに秀でていただけでなく、馴致の頃から素質の高さが感じられました。2歳の2月に入った頃に1週間程跨ってみたのですが、速めに行ったときの動きが凄く良かっただけでなく、いいバネをため込んでいるような印象も受けました」(佐藤厩舎長)

 スワーヴリチャードの初年度産駒としても、デビュー前から注目されていたレガレイラだが、その名を一気に高めたのは、7月に行われたメイクデビュー函館となる。逃げたセットアップを直線で並ぶ間もなく交わしていったその末脚は、函館競馬場で行われた芝1800mの2歳新馬戦では歴代最速となる、上がり34秒3を記録した。

 その後、セットアップが2歳未勝利戦に続いて札幌2歳S(G3)も逃げ切り、俄然評価が高まった中で迎えたアイビーSだったが、ここでは先行馬を捕らえられずに3着に敗れている。

 「新馬戦が内容的にも凄い勝ち方だったので、アイビーSも期待していたのですが、小頭数の2歳戦にありがちな、スローペースの上がり勝負となったこともあって、力を出し切れませんでした。ただ、頭数が揃えばレースも流れますし、ここまでの内容を見ても距離の不安は無かったです」(佐藤厩舎長)

 内枠の利を生かしたてヴェロキラプトルと、アンモシエラが先行争いを繰り広げていく中で、縦長となった馬群の後方にレガレイラの姿はあった。3コーナーにかけて馬群が凝縮したと思いきや、次の瞬間、その馬群は拡散するかのように大きく横へと広がっていく。その馬群の大外に進路を向けたのがレガレイラだった。

 「レース後に鞍上のルメール騎手が『2歳戦らしく他の馬がフラフラしていた』と話していたように、進路を探すのに戸惑っていたようでしたが、外に進路を向けてからの伸び脚は凄かったですね」(佐藤厩舎長)

 インコースからはR-NIKKEI杯京都2歳S (G3)の勝ち馬であるシンエンペラーが抜け出しを図るも、レガレイラの加速はそれを遥かに上回っていた。馬体を合わせたはずのサンライズジパングが一瞬で置いていかれただけでなく、ゴール前ではまさに図ったかのように、シンエンペラーを3/4馬身差交わしていく。

 上がり3ハロンの35秒フラットはメンバー中最速。そして、勝ち時計の2分00秒2は、2021年にキラーアビリティが樹立した2分00秒6を0秒4上回る、レースレコードともなった。

 「レースは家で見ていたのですが、残り1ハロンで行けると思いました。それでもゴール前はさすがに声も出たのですが、その声に家族がビックリしていました」(佐藤厩舎長)

 レース後、ノーザンファームの吉田勝己代表はその強さを、2023年の三冠牝馬となったリバティアイランドのようだと称えた。そのリバティアイランドでもまだ成し遂げていない、混合G1での勝利。それを2歳で成し遂げたレガレイラが3歳を迎えて、どれだけのパフォーマンスを残すかとても楽しみになってくる。

 「これから、どんなレースをしてくれるのか自分たちも楽しみになります。育成厩舎としても、この世代からレガレイラの活躍に続く馬を送り出して、更にスタッフの士気が上がってくれればと思っています」

 レース後、サンデーレーシングの吉田俊介代表からは、今後の目標として、ホープフルS(G1)と同条件となる皐月賞(G1)の選択肢を取る可能性が示唆された。牝馬の皐月賞(G1)制覇となれば1947年のトキツカゼ、1948年のヒデヒカリ以来、史上3頭目の快挙となる。ただ、競馬史の歴史を塗り替えたレガレイラならば、歴史的名牝と肩を並べるのは、むしろ、たやすいことなのかもしれない。