2023年12月10日 阪神ジュベナイルフィリーズ G1
優勝馬:アスコリピチェーノ
プロフィール
- 生年月日
- 2021年02月24日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:3戦3勝
- 総収得賞金
- 263,215,000円
- 父
- ダイワメジャー
- 母 (母父)
- アスコルティ by Danehill Dancer(IRE)
- 馬主
- (有) サンデーレーシング
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 黒岩 陽一
- 騎手
- 北村 宏司
アスコリピチェーノの騎乗育成を手掛けてきた、ノーザンファーム空港の東谷智司厩舎長は、G1に出走した暁には競馬場まで応援に行くことを決めていた。
「育成馬であるモリアーナが秋華賞(G1)に出走した時にも行こうとは思っていたのですが、黒岩先生の初G1制覇を自分たちの手掛けた馬で叶えて欲しいとの思いはありました」(東谷厩舎長)
黒岩調教師と東谷厩舎長は普段から頻繁に連絡を取り合っているだけでなく、重賞での活躍馬が出た際には、騎乗スタッフを招いて祝勝会も開いてくれていた。
新潟2歳S(G3)から3か月半ぶりのレースとなった阪神JF(G1)ではあったが、ノーザンファーム天栄で調整されていた10月下旬、東谷厩舎長は送り出した2歳馬の近況を確かめに行った際に、アスコリピチェーノにも騎乗していた。
「こちらにいた頃とは違って、重賞馬の背中になっていました。レースを使ったことで、気負った様子もなく、むしろ落ち着き払っていました。コントロールも利いて、乗りやすい馬にしてくれていた天栄のスタッフや、黒岩厩舎の皆さんには感謝しかなかったですね」(東谷厩舎長)
その際には天栄の厩舎長だけでなく、騎乗していたスタッフからも、阪神JF(G1)に向けて、どのような調整をしていくかとの話を聞いていたという。その成果が証明されたかのように、パドックを周回するアスコリピチェーノは、東谷厩舎長から見ても万全の状態だと感じられた。
「ひいき目無しでいい状態に見えました。それにも関わらず、黒岩先生や北村(宏司)騎手も実にリラックスしていて、『他の厩舎の馬も良く見えるなあ』とも話していました。だからこそアスコリピチェーノもこれだけの仕上げをしてもらいながらも、リラックスしているのは、こうした環境で管理してもらっているからではと思えました」(東谷厩舎長)
レースの前には北村騎手から、「馬の能力を信じるだけです」との言葉も聞いていたという東谷厩舎長は、更に勝利への期待が膨らんでいく。北村騎手はアスコリピチェーノを難なくゲートから出していくと、道中は中団を追走。1000m通過が58秒2と速い流れでも折り合いの良さは変わることなく、最後の直線へと向かっていく。
その時、北村騎手は馬群に僅かな隙間を見つけると、アスコリピチェーノの進路を向けていく。そのゴーサインに反応すると、外から並びかけてきたコラソンビートと併せ馬をするかのように、ゴール板へと脚を伸ばしていく。
その2頭の争いに内から迫ってきたのが、後方にいたステレンボッシュ。だが、アスコリピチェーノはその動きにも即座に反応するように、更に末脚を加速させ、クビ差追撃を振り切って見せた。
「ステレンボッシュを応援に来ていたノーザンファームの関係者ともレースを見ていたのですが、向こうから『差せ、差せ!』との言葉が聞こえてきたので、それに負けないようにと『そのまま!そのまま!』と叫んでいました」(東谷厩舎長)
その言葉が届いたかのような粘りを見せたアスコリピチェーノではあったが、勝ち時計の1分32秒6はレースレコードと、勝負根性だけなく、高いスピード能力も有していることを証明してみせた。
東谷厩舎長が口取りへと向かった時、馬場に入る手前で黒岩調教師が近寄ってきた。2人は喜びを分かち合い、そして互いの仕事を称え合うかのようにハグを交わし合った。
「黒岩先生のG1初制覇をアスコリピチェーノで果たせて、本当に良かったと思えました。そこに至るまでには黒岩厩舎の皆さんや、天栄のスタッフたちが、ベストな状態に仕上げてくれたからであり、また北村騎手や木實谷場長など、この馬に関わったホースマン全てがコミュニケーションを深めながら、1つのチームとなった成果だとも思っています」(東谷厩舎長)
先日発表された2023年のJRA賞発表でも、アスコリピチェーノは最優秀2歳牝馬に選出。今年の牝馬クラシック戦線でも更なる活躍が期待される。
「まずは無事にその舞台へと進んでもらいたいです。レースの後、黒岩先生にはまた、祝勝会を行ってもらいましたが、それがアスコリピチェーノの活躍によって、これからも続いて欲しいなとも思っています」と笑う東谷厩舎長。この後は桜花賞(G1)を目標に調整されていくと、所属するサンデーサラブレッドクラブのホームページで発表があったが、レコード勝ちを果たした舞台と同じレースで、再びその強さを証明してくれるに違いない。