2023年09月21日 園田プリンセスC(GDJ)
優勝馬:コモリリーガル
プロフィール
- 生年月日
- 2021年03月19日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦3勝
- 総収得賞金
- 24,655,000円
- 母 (母父)
- ガルノーヴァ by スタチューオブリバティ(USA)
- 馬主
- 子守 貴久
- 生産者
- 桑原牧場 桑原 康裕 (むかわ)
- 調教師
- 米川 昇
- 騎手
- 下原 理
『グランダム・ジャパン2023』2歳シーズンの開幕戦「園田プリンセスカップ(園田)」を、ホッカイドウ競馬からの遠征馬コモリリーガルが完勝。2番手追走から手応え十分に4コーナーで先頭に立つと、直線で後続を突き放し、3連勝で重賞タイトルを手に入れた。
コモリリーガルの生まれ故郷は、むかわ町の桑原牧場。鵡川沿いに居を構え、日高道からも紺鼠色の厩舎や放牧地を望める。現代表・桑原康裕さんの祖父である絶蔵さんが1923年に創業。当時は米や乳牛との兼業だったが、康裕さんの父・博さんの代に軽種馬専業となった。過去の生産馬には、1981年の安田記念を制したタケデン、1997年のセントライト記念(G2)を勝ったシャコーテスコ、1997年度のNAR3歳最優秀馬に選出されたトミケンライデンなどの活躍馬がいる。2011年に康裕さんに代替わりし、現在はご夫婦2人で牧場を切り盛りしている。
桑原牧場の生産馬が重賞を制したのは、2005年の桜花賞(浦和)を制したミライ以来、実に21年ぶり。もちろん康裕さんの代となってからは初めてだ。「声が出たよね。妻とは一緒に見ていなかったから『お母さん、勝ったよ』って」と当日のことを思い出し、桑原さんは顔をほころばせた。
コモリリーガルは、桑原さんが2018年ジェイエスの繁殖セールで「配合が面白いと思って」購入した繁殖牝馬ガルノーヴァの4番仔(父バトルプラン)。「生まれた時からすごくいい馬だった。惚れ惚れするような馬体で、バランスが抜群。『今年の一番馬はこの馬だね』と話していたんです」と生まれた当時を振り返る。
その後も順調に育って1歳夏のサマーセールに上場したものの主取り。オータムセールでも最初は声がかからなかったが、再上場にかけられ、子守貴久オーナーが落札した。「レポジトリーで喉に問題があったから、そこが嫌われたのかな。でも、子守オーナーが『それでも馬がいいので挑戦してみたい』と言ってくれて。この間のレースを見ても余力があったと思う。みんなが見向きもしなかった馬が重賞を勝つなんてすごいよね」と、1ハロンの距離延長も初の遠征も克服してタイトルをつかみ獲った生産馬に感嘆する。
母のガルノーヴァは、コモリリーガルの半弟となるガルノーヴァ2022(父パイロ)を出産して10日後、腸ねん転でこの世を去った。生まれてすぐに母を失った当歳馬を、桑原さん夫婦が親代わりになって育てたそうだ。夫婦で協力して2時間置きに人工ミルクをあげ、「母親のいない仔を1頭で集団に入れると、いじめられることもあるからね」との心遣いから1頭だけで放牧。運動不足にならないよう、桑原さんが放牧地を一緒に走って成長を促したという。そうして手塩にかけたガルノーヴァ2022はすくすくと育ち、今年8月のサマーセールでオーナーが決まると牧場を巣立っていった。
桑原牧場は、今年が創業100年のメモリアルイヤー。「数年前から『100年のメモリアルには創業者(祖父)に良い報告ができるよう、走る馬が出てきたらいいね』と話していたんです。良くないことがつづいてろくな年じゃないなと思っていたけど、リーガルが勝ってくれて花を咲かせてくれたよ」と桑原さんは感慨深い表情で話す。100年前に礎を築いてくれた祖父に手を合わせ、いつもお参りしている北海道神宮にも足を運んで感謝を伝えたという。
5年ほど前から土壌改善を始め、飼料も改良するなど徐々に改革を行ってきた桑原さん。久々の重賞制覇はその努力の証だろう。「子守オーナーや育成をやってくれた門別牧場さんも喜んでくれてよかった。周りの人が喜んでくれるのが何より。みんながみんな走るわけじゃないから、ご迷惑をかけて申し訳ない気持ちになることもしばしば。だから、走ったからって浮かれてもいられないし、悲しいことがあっても悲しんでばかりいられない。気を引き締めてやらないとね」と話す桑原さんは、周囲の人の喜ぶ顔を夢見ながら地道に努力を重ねている。