重賞ウィナーレポート

2023年06月07日 東京ダービー(DS)

2023年06月07日 大井競馬場 晴 重 ダ 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ミックファイア

プロフィール

生年月日
2020年04月05日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:5戦5勝
総収得賞金
196,250,000円
シニスターミニスター(USA)
母 (母父)
マリアージュ  by  ブライアンズタイム(USA)
馬主
星加 浩一
生産者
高橋フアーム (静内)
調教師
渡邉 和雄
騎手
御神本 訓史
  • 今年1歳になったミックファイアの半妹
    今年1歳になったミックファイアの半妹
  • ミックファイアの半妹はスマートファルコン産駒
    ミックファイアの半妹はスマートファルコン産駒
  • 来年のデビューを目指すミックファイアの半妹
    来年のデビューを目指すミックファイアの半妹
  • 高橋ファームの放牧地
    高橋ファームの放牧地
  • 高橋ファームの放牧地
    高橋ファームの放牧地
  • 高橋ファームの看板
    高橋ファームの看板
  • 高橋ファームの看板
    高橋ファームの看板

 『ダービーシリーズ2023』の第3戦「東京ダービー」は、1.5倍の圧倒的人気に支持されたミックファイアが6馬身差の圧勝。2分04秒8という驚異的なレースレコードを叩き出し、2004年のアジュディミツオー以来19年ぶりに無敗での南関東クラシック二冠を達成した。

 ミックファイアの生まれ故郷は、新ひだか町静内の高橋ファーム。過去に菊花賞(G1)でゴールドシップの3着したユウキソルジャーなどの活躍馬を生産したものの、元来は競走馬の育成に主力を置く牧場だった。それを方向転換し、生産に力を入れ始めたのはミックファイアが生まれる前年の2019年頃から。今では30頭以上の繁殖牝馬を抱え、長男の政弘さん、次男の政則さんが中心となって牧場を切り盛りしている。「単勝1倍台の1番人気になりましたからね。レースが近づいて来ると、心配と緊張がピークに達して吐きそうでした(笑)。普段から生産馬のゲートは怖くて直視できず、スタートしてからひっそりと目を開けるのですが、今回も『なんとかゲートだけはちゃんと出てほしい』と祈るような気持でした」とレース前の心境を話す高橋さん。先頭でゴールするのを見届けたあとは、「本当に夢のような時間でしたね。手の震えが止まりませんでした。すぐに父へ電話したのですが、あまりの感動にお互い言葉が出てきませんでした」と歓喜の瞬間を振り返ってくれた。

 「ミックファイアは幼少期から、とにかくやんちゃな性格をしていました。1歳になる頃にはオンオフがはっきりしてきて、夜間放牧から手入れのために馬房へ戻すとすぐに寝てしまうような馬だったんです。『ここは寝る場所』と自分で決めていたんでしょうね(笑)。馬体の成長は同期の馬たちと比べてもゆっくりで、1歳夏のサマーセールに上場した時点でもまだ薄くてボリュームが足りない印象でした」と牧場時代のミックファイアを思い出す。

 そのサマーセールから約1年後、2歳9月に大井競馬場でデビューを迎えたミックファイア。初戦を5馬身差、2戦目も5馬身差、3戦目は3馬身差でいずれも逃げ切り勝ちをおさめ、3戦3勝で2歳シーズンを終える。当然、クラシックへの期待が高まったが、3歳シーズンが始まるとしばらくレースから遠ざかってしまった。「なかなかレースに出てこないので、『どこか故障でもしたのでは…』と心配していたんです。あとから渡邉調教師に聞くと、2歳時はずっと脚元の不安があって満足な調教ができていなかったそうなんです。そんな状態の中で圧勝をつづけていたのですから、もともと持っている能力は相当高いのでしょうね」と事情を明かしてくれた。

 徐々に脚元の不安が快勝し、強い調教も行えるようになってきた春先。陣営は、ぶっつけで南関東クラシック一冠目の羽田盃出走を目指す方針を打ち立てる。そしてミックファイアは、マイナス16キロの馬体で5か月ぶりに大井競馬場のパドックへ姿を現した。「まずは出走枠に入ることが目標だったので、クラシックに出られたことのうれしさが大きかったですね。まさかここで勝ち負けできるとは思っておらず、『うまく掲示板に載って、ダービーの権利を獲ってくれれば…』という気持ちで応援していました」という高橋さんの予想を遥かに超える走りで、ミックファイアは羽田盃を圧勝。堂々と東京ダービーへ駒を進め、見事に無敗の二冠馬となった。

 「こうして生産馬が結果を出してくれるのは自信にもなりますし、ミックファイアが牧場の名前をメジャーにしてくれたので、我々もより一層努力して次の活躍馬を送り出さなければと身が引き締まる思いです」と未来を見つめる高橋さん。牧場には今年1歳になるミックファイアの半妹(父スマートファルコン)が元気に育っており、彼女も大きな期待を背負って来年デビューすることになるだろう。

 ミックファイアは次走、2001年のトーシンブリザード以来22年ぶりとなる無敗の三冠を懸けて7月12日(水)のジャパンダートダービー(Jpn1)へ挑むことになる。「今度はJRAの強豪馬たちが相手ですから、チャレンジャーのような気持で頑張ってほしいです」と生産馬にエールを送る高橋さん。無敗三冠へのチャレンジも凄いことだが、凱旋門賞馬オールアロングの血を引くミックファイアには世界を舞台とした活躍も夢見たくなる。