重賞ウィナーレポート

2023年04月16日 佐賀ヴィーナスC(GDJ)

2023年04月16日 佐賀競馬場 曇 不良 ダ 1400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ジュランビル

プロフィール

生年月日
2016年03月17日 07歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:41戦5勝
総収得賞金
146,638,000円
キンシャサノキセキ(AUS)
母 (母父)
アリー(USA)  by  Deputy Minister(CAN)
馬主
村上 憲政
生産者
松浦牧場 (新冠)
調教師
福永 敏
騎手
下原 理
  • ジュランビルの伯母テイエムプリンセス
    ジュランビルの伯母テイエムプリンセス
  • 松浦牧場へ里帰りしてアリーの血をつなぐテイエムプリンセス
    松浦牧場へ里帰りしてアリーの血をつなぐテイエムプリンセス
  • 松浦牧場の放牧地
    松浦牧場の放牧地
  • ひとつひとつの放牧地を大きく作っている松浦牧場
    ひとつひとつの放牧地を大きく作っている松浦牧場
  • 松浦牧場の厩舎
    松浦牧場の厩舎
  • 松浦牧場の表札
    松浦牧場の表札

 『グランダム・ジャパン(GDJ)2023』古馬シーズン第1戦の「佐賀ヴィーナスカップ(佐賀)」は、大井からの遠征馬ジュランビルが2番手から抜け出して2馬身差の完勝。2021年10月の天王寺ステークス(JRA3勝クラス)以来となる約1年半ぶりの勝利を挙げ、GDJ古馬シーズンの開幕戦を飾った。

 ジュランビルの生まれ故郷は新冠町の松浦牧場。サラブレッド銀座の入口から北東に20分ほど車を走らせた新栄という地区に居を構え、今年で創業51年目を迎えた生産牧場だ。過去にはコリアカップ(韓国G1)を連覇したロンドンタウン、京成杯オータムハンデキャップ(G3)連覇を含む重賞3勝を挙げたマイネルモルゲンなどの重賞馬を送り出し、現役馬では2020年と2021年に兵庫競馬の年度代表馬に輝いたジンギが地方競馬で活躍を見せている。

 昨年秋から暮れにかけて不振がつづいていたが、先行策で一変してみせたジュランビル。「前で運んでスピードを生かせましたね。地方に移籍してからなかなか結果が出せていなかったけど、今回は良いレースをしてくれました。体調も良かったんだと思います。今年で7歳になりましたが、頑張っていますよね」と同牧場の2代目・松浦快之さんは、JRA重賞で3着が2度ある実力馬の復活に目尻を下げた。

 ジュランビルの母アリーは、2008年のキーンランド・ノベンバーセールで松浦さん自身が購入してきた繁殖牝馬。「当時、デピュティミニスターの血が入っている繁殖牝馬が欲しかったんです。日本で活躍馬が多く出ている血統だし、芝でも走れそうだなと思って購入しました」と繁殖導入の経緯を明かす。アリーの配合相手はキングカメハメハやハーツクライなど芝の中長距離をイメージして選ぶことが多かったが、ジュランビルの父はキンシャサノキセキ。初めて短距離にシフトして生まれた7番仔だった。「それまでの産駒を見て、もうちょっとスピードが欲しいなと思っていました。ジュランビルは牧場にいた時は胴が詰まったような感じでしたが、デビューする頃になると胴が伸びていました。そのぶん距離もオールマイティにこなしてくれていますね」と松浦さんが話すように、古馬となってからは芝のマイル~中距離でも好走。これまでに1億4,000万円以上を稼ぎ出し、同年のサマーセールで取引された牝馬の中では稼ぎ頭になりつつある(2023年8月15日現在)。

 松浦さんは約30年に渡ってアメリカを中心とした海外で馬を買いつづけ、積極的に牧場の血を更新。その繁殖牝馬からつながる血統馬たちが、これまでの松浦牧場を支えてきた。一例を挙げると、モーニングタイドを購入した時にお腹に宿していた仔がマイネルモルゲン(父マウントリバーモア)であり、キャタラクトを購入した時にお腹に宿していた仔フェアリーバニヤン(父オナーアンドグローリー)はのちに繁殖牝馬となってロンドンタウンを産んでいる。「僕は買ってきた馬を最後まで諦めないんです。どこかで走る仔が出るだろうと思って…。自分が海外まで足を運んで、実際に見て触って買ってきた馬への思い入れもありますが」と話す。ジュランビルの母アリーも松浦さんの大きな期待を背負って12頭の仔を出産したが、昨年、父ミッキーアイルの仔を産んだあとに動脈破裂でこの世を去ってしまった。現在はアリーの2番仔テイエムプリンセスが里帰りし、その血を後世へとつなげている。

 合計で72ヘクタールの放牧地を持つ松浦牧場は放牧地を大きく作り、ひとつの放牧地に多くの馬を入れているのが特徴。多くの馬がいっしょに過ごしている方がより活発に動き回り、放牧中にたくさん動いている馬は蹄が削れて削蹄の必要がないそうだ。「買っていただいたお客様に楽しんでもらえる馬づくりをしたいと常々思っているので、体質が弱くて使えないということがないよう、放牧地を大きく作って馬がたくさん動けるようにしています」という松浦さんの信念を体現するように、ジュランビルは7歳8月までに43戦を丈夫に戦い抜いている。「アリーは気の強い馬でしたけど、ジュランビルは牧場にいる時から落ち着きがありました。精神面が安定しているから、これだけ長く走れるんでしょうね」とジュランビルの息長い活躍を分析する松浦さん。馬名の由来になったフランソワ・ジュランビルという薔薇は太陽光が多くなくても育ち、黒星病にも強いという。この先も持ち前のタフな心身で、周囲の人たちに笑顔の花を咲かせてくれそうだ。