2023年04月09日 桜花賞 G1
優勝馬:リバティアイランド
プロフィール
- 生年月日
- 2020年02月02日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:4戦3勝
- 総収得賞金
- 744,440,000円
- 父
- ドゥラメンテ
- 母 (母父)
- ヤンキーローズ(AUS) by All American(AUS)
- 馬主
- (有) サンデーレーシング
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 中内田 充正
- 騎手
- 川田 将雅
名牝ではなく、いずれは「名馬」と言われる馬になるのかもしれない。
牝馬クラシック第一冠となる桜花賞(G1)で、圧倒的な一番人気を集めたのは、昨年の阪神JF(G1)を優勝したリバティアイランド。その阪神JF(G1)と同条件でのレースかつ、その時に見せた圧巻のパフォーマンスも評価される形で、この桜花賞(G1)での単勝オッズは1.6倍という圧倒的な支持を集める。
18頭の出走馬が周回する阪神競馬場のパドック。その中でもリバティアイランドだけを見つめていたのは、騎乗育成を手掛けてきた、ノーザンファーム空港の佐藤信乃介厩舎長だった。
「リバティアイランドのレースを見に行ったのは、今回が初めてとなります。パドックを周回する姿も落ち着いていて、何よりも馬体の充実度が凄いなと思いました」(佐藤厩舎長)
ゲートが開くと、一斉に飛び出していく18頭の若き牝馬たち。その中にはタイミングが合わず後方からの位置取りになる馬もいた中で、リバティアイランドは他の馬など気にしていないかのように、後方待機策を取っていく。
「行きっぷりがそれほど良くないのかな?とも見えました。この日の芝のレースが前残りの傾向だったので、そのポジションでいいのかなとも思いましたが、最後の直線に入ってからも同じような位置取りだった時には、前を捉えるのは難しいのではと考えました」(佐藤厩舎長)
その遥か先では、逃げたモズメイメイをコナコーストが交わしにかかり、その後ろからはペリファーニアが脚を伸ばしてくる。同じノーザンファームの生産馬であり、能力の高さも耳にしていた2頭の脚色の良さもまた、佐藤厩舎長に「負け」という言葉を意識させた。
だが、そこからのリバティアイランドの末脚は見ているものの想像をはるかに超えた。前残りの馬場だったのは明らかにも関わらず、上がり3ハロン32秒9の驚異的な末脚を使い、まさに馬群を飲み込むようにしながら、前の2頭をロックオンしていく。
外からやってきたペリファーニアの追撃を、内のコナコーストが抑えきったと思った矢先、その2頭とは全く別次元の末脚を使ったリバティアイランドが、まさに並ぶ間もなく交わし去っていった。
「ゴールの瞬間は、嬉しいや感動したという気持ちよりも、この人気に応えられるレースをしてくれたことに、どこかホッとしていました」と佐藤厩舎長はゴールの瞬間を振り返る。2着、3着となった2頭はいずれもチューリップ賞(G2)組であり、ほとんど出走馬がトライアルや前哨戦を使ってきた中で、リバティアイランドはまさに一戦必勝のローテーションで栄冠を勝ち取った。
「一生懸命に走る馬だけに、レース後のダメージも大きいはずです。それが分かっていたからこそ、2歳時は間隔を取ってレースを使ってくれていたのでしょう」(佐藤厩舎長)
佐藤厩舎長の横で歓喜の声を上げていたのは、デビュー後の調整を任されてきた、ノーザンファームしがらきの厩舎長だった。
「彼とは頻繁に連絡をとってきてはいましたが、阪神JF(G1)の後にぶっつけで桜花賞(G1)に臨ませるのはプレッシャーもあったと思います。しがらきのスタッフと共に身体の回復をさせつつ、成長も促しながらベストなコンディションで厩舎へ送ってくれたのでしょうし、そこに中内田先生や厩舎の皆さんが最高の状態でレースに臨ませてくれた結果が、あのパフォーマンスに表れたと思います」(佐藤厩舎長)
次走は牝馬二冠のかかるオークス(G1)へと出走。ほとんどの出走予定馬が、今年3戦目、もしくはそれ以上のレースを使って未知なる東京芝2400mに臨むこととなるが、リバティアイランドはまだ2戦目。直線が更に伸びる東京コース、そして、むしろ行きっぷりが出て欲しいような走りなど、距離延長が不安になる要素はまるで見当たらない。
「桜花賞(G1)を十分な間隔を取って勝てたのは大きいと思います。一度レースを使われたことで次走は行きっぷりも良くなってくれると思いますし、今後の楽しみが更に広がりました」(佐藤厩舎長)
オークス(G1)でも無類の強さを見せた時、リバティアイランドには様々な選択肢が出てくるはずである。だが、どんな選択肢を選んだとしても、今回のような規格外かつ、想像をはるかに超えたレースで、我々に勝利を届けてくれるのだろう。