重賞ウィナーレポート

2022年10月09日 毎日王冠 G2

2022年10月09日 東京競馬場 曇 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サリオス

プロフィール

生年月日
2017年01月23日 05歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:13戦5勝
総収得賞金
457,631,000円
ハーツクライ
母 (母父)
サロミナ(GER)  by  Lomitas(GB)
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
堀 宣行
騎手
松山 弘平
  • サリオスは毎年この場所で夏を過ごしてきた
    サリオスは毎年この場所で夏を過ごしてきた
  • 放牧地に降り注ぐ日差しも冬らしくなってきた
    放牧地に降り注ぐ日差しも冬らしくなってきた

 2歳夏の調整から夏シーズンは、毎年のようにノーザンファーム早来の木村厩舎で管理されてきたサリオス。その調教過程や競走結果も踏まえた上で、木村浩崇厩舎長は毎年調教のアプローチを変えてきた。

 「昨年は放牧を取り入れてみましたが、蹄の状態が思わしくなく、ぶっつけでマイルCS(G1)を使うことになりました。今年は装蹄師と相談の上、放牧は行わずに、4週間程はウォーキングマシンとトレッドミルだけの調整を行いました」

 木村厩舎長がその調整に踏み切れたのには理由があった。

 「3歳時に日本ダービー(G1)を使った後が、右トモの疲れも含めて状態が一番良くありませんでした。その時も一か月ほど乗り運動をしなかったのですが、毎日王冠(G2)では優勝してくれました。その時よりも今回は状態も良く、レースまでの目処も立つと思っていましたし、大型馬ですが見た目よりも仕上げやすいので、思い切って乗らないという判断をしました」

 そこには、木村厩舎長のサリオスに対する強い思いがあった。

 「自分の厩舎に初めてG1タイトルをもたらしてくれた馬であり、そして、ここで終わる馬では無いとも思っていました。ここで復活させなければとの思いは強かった一方で、一つだけ気がかりだったのが、思ったように馬体が増えて行かなかったことでした」

 前走の安田記念(G1)、サリオスは日本ダービー(G1)と同じく、528㎏の馬体重で出走している。これは、デビュー以来最低の馬体重でもあった。

 「安田記念(G1)ではパドックでの毛艶は良く見えなかった中でも、3着に入着してくれました。外枠でプレッシャーも無く走れたのも大きかったと思いますが、もし、絶好調ならば勝てていたかもしれないとも思いました」

 いい状態で競馬場に送り出すには、絶好調時の張りのある馬体が理想だった。ただ、7月中旬に乗り運動を開始すると、内臓も活発に動き出したのか飼い葉食いも良くなり、一気に馬体重が増加。その間に幾度となくサリオスを見に来た、堀宣行調教師からも、「もっと馬体重を増やしてもいい」と充実したサリオスの馬体に太鼓判を押したという。

 実はサリオスの馬体の回復には、木村厩舎長の尽力もあった。

 「放牧はできなかったのですが、その一方で、新鮮な青草を食べさせたいと思っていました。仕事が終わった後でも、近くの青草が生えている場所まで行って、刈り取った草を桶の中に入れていました」

 青草は胃の中を綺麗にする作用があるとも言われている。運動で減った馬体重だけでなく、飼い葉から得る栄養を充分に吸収させるためにも、木村厩舎長は毎日のように青草を刈りに行った。

 「林(宏樹調教主任)さんからも、『何をやっているんだ?』と聞かれました。でも、自分がここでサリオスにしてあげられることは、やってあげたいと思っていましたし、次の日の朝に桶が空っぽになったのを見た時には、美味しかったんだなあと嬉しくもなりました」

 そして、木村厩舎長はサリオスの調教内容もこれまでとは変えていった。

 「今回の調教に関しては、右トモの状態も考慮に入れて、坂路での調教を主体にした、インターバルトレーニングを続けてきました。向こうで調教をした際に、堀先生からも『これまでよりも心肺機能ができている』と言ってもらえましたし、『これまでの調整では一番の状態』だと言ってもらえた時には嬉しかったですね」

 これも全て、過去3年の調整を踏まえた上で、また新しいアプローチでサリオスに接してきた結果だった。

 毎日王冠(G2)出走時の馬体重は534㎏。「まだ増えて出走してくるかなとも思っていた」とも木村厩舎長は話すが、それでもパドックを周回する姿は、良かった頃の張りのあるサリオスの馬体となっており、そしてレースでも、最後の直線を力強く伸びてきた。

 「レースを見ていて、久しぶりに泣きそうになりました。自分自身、サリオスから学んだことも多かったですし、ここまでやってきたことが結果となったのも嬉しかったですね」

 そしてレース後、木村厩舎長は再び涙を流しそうになる、それは、堀調教師からの電話でかけられた言葉だった。

 「先生に『ありがとうございます』と伝えると、堀先生は『こんなことはそんなに言わないけど、木村のおかげだよ』と言ってもらえました。堀先生とはリアルインパクトがオーストラリアに遠征した時に、一緒に同行してから良く話すようになりました。馬に対する姿勢や、厩舎スタッフの皆さんの仕事ぶりも知っているだけに、こうした声をかけてもらえたのは、物凄く嬉しかったですね」

 次走はマイルCS(G1)に出走を予定。朝日杯FS(G1)に続くG1制覇を目指していく。

 「凄い馬に携わせてもらえたと思いますし、その頃から種牡馬にしなければいけない馬だとも思ってきました。その意味でもマイルCS(G1)は負けられないレースだとも思っているだけに、最高の結果を期待しています」と木村厩舎長は力強くエールを送った。