2022年08月11日 ブリーダーズGC(中央交流) Jpn3
優勝馬:グランブリッジ
プロフィール
- 生年月日
- 2019年04月29日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:7戦4勝
- 総収得賞金
- 341,852,000円
- 母 (母父)
- ディレットリーチェ by ダイワメジャー
- 馬主
- サイプレスホールディングス合同会社
- 生産者
- 金舛 幸夫 (三石)
- 調教師
- 新谷 功一
- 騎手
- 福永 祐一
『グランダム・ジャパン2022』3歳シーズンの最終戦「関東オークス(Jpn2)」を制したグランブリッジが、古馬シーズンの「ブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)」でも古馬勢を一蹴。ショウナンナデシコが女王として君臨する牝馬ダートグレード路線に、勢いのある3歳馬の新星が現れた。
グランブリッジの生まれ故郷は、新ひだか町三石の金舛牧場。1970年代~90年代にかけてアラブの活躍馬を多数送り出してきた生産牧場で、代表生産馬の戦績を見ると足利、福山、上山、益田など今はなき地方競馬場の名前がずらりと並ぶ。二代目の場主・幸夫さんと奥様の洋子さんがご夫婦2人で牧場を営んできたが、2019年に幸夫さんが体調を崩して急逝。洋子さんが1人で牧場を切り盛りしなければならなくなった。「本当に急なことだったので、とまどいました。結局、主人が出産で取り上げたのはグランブリッジの世代が最後になってしまったんです」と洋子さんは話す。ご主人なしではとても管理しきれないので、グランブリッジの母ディレットリーチェを含め、当時いた繁殖牝馬のほとんどを手放してしまったそうだ。
グランブリッジの母ディレットリーチェは千代田牧場の生産馬で、ダンカークの仔がお腹に入った状態でジェイエス繁殖セールに上場された。「主人はダイワメジャーの肌馬が欲しくてディレットリーチェに目をつけたようです。そして翌年、とても気に入って毎年のように種付けしていたシニスターミニスターを交配し、生まれてきた牝馬がグランブリッジでした」と、誕生までの経緯を説明してくれた。改めてその牝系を遡ると、1962年のオークス馬オーハヤブサや、1982年のエリザベス女王杯を制したビクトリアクラウンの名前もある由緒正しき血統だ。
グランブリッジは当歳秋まで金舛牧場の放牧地で育ち、離乳後に知りあいの牧場へ移動。そして1歳秋、セプテンバーセールに上場されることになる。「本来はサマーセールに上場する予定だったのですが、馬体がまだ小さかったので、1か月待ってセプテンバーセールに上場しました。結局、馬体はたいして大きくならなかったのですが、無事に落札していただけてほっとしました」と当時のせりを振り返る。
栗東の新谷功一厩舎に入厩し、2歳9月にデビューしたグランブリッジだが、初戦は7着、2戦目も大きく離された3着と、2歳時はなかなか結果が出なかった。3歳1月の3戦目で初勝利を挙げ、4月の5戦目で2勝目を飾る。そして、全国から精鋭3歳牝馬が集う関東オークス(Jpn2)に4番人気で挑むことになった。「デビュー当初は道中で後方に置かれてしまうことが多かったのですが、3歳になってだんだん前に行けるようになり、関東オークス(Jpn2)は2番手から抜け出して強い勝ち方をしてくれました。距離も長い方が合っているように感じました」と初重賞勝利を挙げたレースを振り返る。
その勢いを駆って門別で行われる古馬牝馬重賞・ブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)へ挑むことになったのだが、このレースは2014年に牝馬限定レースとなってからの過去8回を含め、昨年までの33年間で1度も3歳馬が勝ったことがないというジンクスがある。ご家族総出で門別競馬場へ応援に駆け付けた洋子さんも、その点は気になっていたようだ。「みんなが口を揃えて『3歳馬には厳しい』と言うので、正直『勝つのは難しいかな』と思っていました。なので家族にも、『馬券を買うなら複勝で』と言っていたんです(笑)。レースはゴール前で観ていて、目の前で勝ったのを確認した時は、みんなで手を取り合って大喜びしました」と歓喜の瞬間を回顧してくれた。
「うちの生産馬はみんな1勝するのにも苦労してきましたから、こんな大きな舞台で勝ってくれるなんて夢のようです。本当に信じられません。主人は馬が大好きな人だったので、グランブリッジの活躍を空の上で喜んでくれていると思います。次走はJBCレディスクラシック(Jpn1)に直行するそうですが、とにかくこれからも無事に競走生活を送ってほしいと思っています」と洋子さんはエールを送る。
過去にJBCレディスクラシック(Jpn1)を3歳で制したのは、ホワイトフーガ1頭だけ。同馬はグランブリッジと同じく関東オークス(Jpn2)を制したあとに、ブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)に挑んで3着。そして秋にビッグタイトルをつかみ獲り、翌年にJBCレディスクラシック(Jpn1)連覇という快挙をなし遂げている。この時点ですでに古馬を破っているグランブリッジは、それ以上の可能性を感じさせる逸材。JBCではきっと、幸夫さんが天国からその背中を押してくれるに違いない。