2022年03月27日 高松宮記念 G1
優勝馬:ナランフレグ
プロフィール
- 生年月日
- 2016年04月05日 06歳
- 性別/毛色
- 牡/栗毛
- 戦績
- 国内:29戦6勝
- 総収得賞金
- 400,137,000円
- 母 (母父)
- ケリーズビューティ by ブライアンズタイム(USA)
- 馬主
- 村木 克成
- 生産者
- 坂戸 節子 (門別)
- 調教師
- 宗像 義忠
- 騎手
- 丸田 恭介
上半期のスプリント王決定戦「第52回高松宮記念(G1)」。瞬きする事すら許されない極限のスピード争いを制したのは日高町の坂戸牧場生産のナランフレグだった。
同馬は、ゲートインを果たした18頭中8番人気。戦前の評価は伏兵の域を出なかったが、坂戸牧場の渡辺明治代表は「追い込み一手のナランフレグにとって、1枠2番は開き直れるという意味で良い枠順だと思いました。うまく前が開いてくれれば掲示板くらいには載ってくれるだろうと思いましたが、まさか勝つとは…。内ラチの狭いところを割って出てきたのでゴール前までどこを走っているのか分からず、気が付いたときにはゴール前でした。本当に驚きました」と、予想を超えた愛馬の快走の報に、嬉しそうに顔をしわくちゃにした。
北海道沙流郡日高町豊郷にある坂戸牧場は1968年創業。現在代表を務める坂戸節子さんの夫、正弘さんが脱サラでスタートさせた牧場だ。半世紀を超える、その歴史の中で、存在していた新潟県競馬で活躍したグレートコマンダー(朱鷺大賞典、同2着、三条記念、金蹄賞、南部杯2着)やナランフレグの半兄で京王杯スプリングC(G2)3着インプレスウィナー、あるいは99年の巴賞に勝ったゴールドサンデーなどを送り出してきたが、JRAの重賞制覇は初めてのこと。初の重賞制覇がまさかのG1勝利となった。
現在は20ヘクタールの土地に繁殖牝馬8頭。社長の坂戸さん。牧場代表の渡辺さんと、従業員1名。その中で1番年齢が低い坂戸さんですら古希を超えているというベテラン揃いの牧場だ。
「自分たちには馬しかないけど、もう昔のようにはできない」と笑いながら、それでも強く丈夫な馬づくりに励んでいる。
ナランフレグの母ケリーズビューティにゴールドアリュールを配合したのは渡辺さんだという。「縁あって牧場で引き取ることになりましたが、ケリーズビューティは、大きな可能性を持った繁殖牝馬だと思っていました。慢性的な脚部不安を抱えていたために、競走馬として大成することはできませんでしたが、近親に年度代表馬2回のホウヨウボーイがいる。これだけの血統馬は、探してもそうはいません」と高く評価している。その期待どおりに初仔からフサイチコンコルドとの間にインプレスウィナーを送り出してくれたが、そのあとはなかなか牡馬を生んでくれない。こればかりは神のみぞ知るところだが、それでも初めての出産と、1年間母体を休ませたあとに牡馬が生まれていることから、期待を込めて配合したのがゴールドアリュールだった。
「インプレスウィナーの父はノーザンダンサー3×3のフサイチコンコルド。ならば同じようにノーザンダンサーのクロスが生じ、そして受け皿が広いダートコースでも走れるように」と白羽の矢がたてられた。そうした思いが通じたのか、生まれた牡馬は「馬体的には母親の良い後駆を受け継いでいるという印象です。気が強い馬で、今でもやんちゃな一面があると伝えられているけれども、それが競馬に行って良い方向に向いているのだと思います」と当時を振り返りつつも「芝適性を見出してくれた厩舎関係者の方々には感謝しかありません」と感謝の言葉をつづけた。
「いつも一生懸命に走ってくれる馬。これからも無事に、長く競走生活を送ってほしい」とエールが送られている。