重賞ウィナーレポート

2021年10月28日 ラブミーチャン記念(GDJ)

2021年10月28日 笠松競馬場 晴 良 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:エムティアンジェ

プロフィール

生年月日
2019年04月04日 02歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:9戦3勝
総収得賞金
34,185,000円
マクフィ(GB)
母 (母父)
ギリア(USA)  by  Fusaichi Pegasus(USA)
馬主
田中 竜雄
生産者
門別牧場 (門別)
調教師
佐藤 茂
騎手
栗原 大河
  • エムティアンジェの半妹(牝当歳、父ブラックタイド)
    エムティアンジェの半妹(牝当歳、父ブラックタイド)
  • 放牧地を元気に駆け回るエムティアンジェの半妹
    放牧地を元気に駆け回るエムティアンジェの半妹
  • 門別牧場の放牧地
    門別牧場の放牧地
  • 門別牧場のエントランスサイン
    門別牧場のエントランスサイン

 『グランダム・ジャパン2021』2歳シーズンの第3戦「ラブミーチャン記念(笠松)」は、金沢から参戦した2番人気エムティアンジェが3馬身差の快勝。中団追走から早めに押し上げ、3~4コーナーからは1番人気グラーツィア(北海道)との一騎打ちに。直線に入ると外からグイグイ脚を伸ばしてグラーツィアを振り切り、金沢プリンセスカップにつづく重賞2勝目を飾った。

 エムティアンジェの生まれ故郷は、日高町の門別牧場。1926年創業と95年に渡る長い歴史を持ち、現代表の門別貴紘さんが4代目。日高地区でも有数の老舗牧場で、2007年のシルクロードステークス(G3)を制したエムオーウイナーなどの活躍馬を送り出してきた。現在は生産、育成、コンサイナー事業などを総合的に手掛け、スタッフ一丸となって強い馬づくりを目指している。

 「エムティアンジェは細身でしたが、体のラインのきれいな馬でした。ただ当歳の時、放牧中に尻を鹿につつかれて大怪我を負ったんです。それをケアするのに苦労しましたから、よく覚えているんですよ。離乳する頃に怪我は完治したのですが、傷跡が残ってしまったのでせりで売るのは諦め、自社名義で競馬を使うことにしました」と、門別さんはエムティアンジェが牧場で過ごした時期のエピソードについて話してくれた。

 門別牧場のオーナーブリーディングホースとして北海道・堂山芳則厩舎に入厩し、ホッカイドウ競馬が開幕した4月に早々とデビューしたエムティアンジェ。しかし初勝利は6戦目の8月まで待たされることになってしまう。「門別競馬場で走ったレースは、ほとんど現地で観ています。なかなか勝てない時期がつづきましたが、まだまだ中身が入っていない印象だったので、成長すればそのうち勝ってくれるだろうと思っていました」と話し、「初勝利を挙げたあと、お付き合いのある金沢の佐藤茂調教師の紹介で現在のオーナーへ引き継ぐ形となりました。金沢へ移籍してから重賞で2勝、2着1回と好走していますから、ようやく中身が伴ってきたんでしょうね。これからまだ成長すると思いますよ」と、デビューからの戦績を振り返る。

 エムティアンジェの母ギリアは、父がケンタッキーダービー馬フサイチペガサス、母の父がブリーダーズカップクラシック(G1)優勝馬エーピーインディという米国縁の良血馬だったが、今春に父ブラックタイドの牝馬を産んだあと、残念ながら病気のために亡くなっている。「今年生まれた当歳はエムティアンジェとタイプが違う印象で、姉の同じ時期と比べてもしっかりしていますね。どんな馬に成長していってくれるか楽しみです」と当歳馬に期待を懸け、「母のギリアが亡くなってしまっただけに、エムティアンジェにはぜひとも将来、牧場に戻って血をつないでいってほしいです。サンデーサイレンスの血が一切入っていないので、配合もしやすいですからね」と未来にも夢を膨らませている。

 「1つでも多く勝ってくれることに越したことはないですが、とにかく無事に競走生活を送ってほしいというのが1番の願いです」と生産馬を思いやる門別さん。まだあと数年は現役馬として競馬場を沸かせる勇姿が見られそうだが、門別牧場が創業100年を迎える頃、仔育てに奮闘するエムティアンジェの姿が、この広い放牧地のどこかにあるかもしれない。