重賞ウィナーレポート

2021年11月03日 JBCLクラシック(中央交流) Jpn1

2021年11月03日 金沢競馬場 曇 良 ダ 1500m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:テオレーマ

プロフィール

生年月日
2016年02月02日 05歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:21戦6勝
総収得賞金
174,007,000円
ジャスタウェイ
母 (母父)
スターズアラインド(IRE)  by  Sea The Stars(IRE)
馬主
水上 行雄
生産者
笠松牧場 (荻伏)
調教師
石坂 公一
騎手
川田 将雅
  • 浦河町役場には勝利を祝う垂れ幕も
    浦河町役場には勝利を祝う垂れ幕も
  • 国道235号線沿いに看板が立っている
    国道235号線沿いに看板が立っている

 2021年は金沢競馬場で行われたJBC競走。各レース共に熱戦が繰り広げられた中、ダートの牝馬最強馬決定戦とも言えるJBCレディスクラシック(Jpn1)には12頭がゲートイン。コースレコードを更新するなど、速さと強さを証明したのは、1番人気の支持を集めた笠松牧場の生産馬であるテオレーマだった。

 「レースは父(水上行雄代表)と母が金沢まで応援に行っていました。1番人気の支持にはなっていましたが、前哨戦は敗れていましたし、金沢のコースも初めてだったので、自分としては今後に繋がっていくレースであってほしいと思っていました」と話すのは、笠松牧場の水上千歳さん。この日、千歳さんは生産馬であるオディロンの応援をするために、JBC2歳優駿(Jpn3)が行われていた門別競馬場に来ていた。

 初重賞制覇をあげた、マリーンC(Jpn3)でもメンバー中最速の上がりを記録していたように、末脚を武器としていたテオレーマであるが、今回は小回りの競馬場を意識したかのように、徐々に位置取りを上げていくと、4コーナーでは先行勢の後ろに取り付いていた。

 「4コーナー手前で画面か切り替わって、2列目にいるのを見た時にぞわっとしました。後はそこから抜け出せるかどうかでしたが、最後までひやひやハラハラしながらも一人で見ていたので、ゴールの瞬間は声も出せませんでした」

 一方、金沢へと送り出す前には 「時間があればゆっくりしてきてください」 と千歳さんから伝えられていた水上夫妻であったが、次から次へと祝福の連絡があっただけでなく、次々とお祝いの品や来客が相次ぐ牧場を案じて、最も早く帰れるルートで北海道へと帰ってきたという。

 ここで改めて、Jpn1初制覇をあげたテオレーマのバックボーンを、千歳さんから聞いてみたい。母のスターズアラインドは、2014年のタタソールズ12月セールの取引馬となるが、血統好きなら誰もが注目せざるを得ないのが、そこに成立している強いクロスである。

 ガリレオの肌に、なんと兄弟のシーザスターズを配合したことにより、血統内にはアーバンシーの2×3という、とても野心的な牝馬クロスが成立していたのだ。

 「せり名簿が届いた際、社長を含めたみんなで気になる馬をあげていった時に、『なんか凄い血統馬がいるぞ』と、意見が一致したのがスターズアラインドでした。クロスだけでなく、母Senora GalileiがTeofilo(カルティエ賞最優秀2歳牡馬)の全姉という血統背景も魅力でした」

 せりの下見でも馬体チェックを行ったが、やや小ぶりには出ていたものの、印象に残る馬だった。

 「強いクロスが馬体には見えないところでどう作用していくのだろうかと考えましたが、後々、このクロスがエッセンスになっていけば面白いなとの思いもありました。」

 縁があってせり落とすことができたスターズアラインドに、ジャスタウェイの配合を決めたのは水上代表だという。

 「これだけ強い母系のクロスは、配合種牡馬を選ぶにあたって、難しいファクターとなります。様々なことを総合的に判断し、新種牡馬のジャスタウェイを選んだのではないかと思います」

 初子らしく、産まれた頃は小柄だったというテオレーマだったが、成長を遂げていくうちにスケール感を増していった。

 「放牧地ではあまり目立っていませんでしたし、その後の成長過程を見ても、今の活躍は全く想像できませんでした」

 デビュー戦は芝1600mだったものの、その後は一貫してダートの中距離を戦いの場に選んでいく。

 「デビューやその後の戦いぶりを見ても、その後の重賞での活躍は予定できたとは言えませんし、むしろ、重賞を使い始めた頃は本当にいいのだろうかとの気持ちもありました。」

 ただ、初めてのダート重賞挑戦となったマリーンC(Jpn3)を勝利すると、前哨戦のレディスプレリュード(Jpn2)では1番人気を集めての2着。このJBCレディスクラシック(Jpn1)の勝利を受けて、今後はダート牝馬重賞戦線の主役となっていくことは間違いない。

 しかも、現役を引退した暁には、Jpn1を勝利した繁殖牝馬として、牧場に迎え入れられる未来も見えている。

 「引退後、繁殖牝馬としても大きな期待をしています。この馬は所有馬でもありますが、その一方で生産者でもあるので、牝馬でここまでの活躍をしてくれた馬が帰ってきてくれるのは物凄く嬉しいです」 と話す千歳さんだが、勿論、それはまだ先の話。テオレーマにはまだまだダート重賞のタイトルを勝ち取ってもらうだけでなく、史上3頭目となるJBCレディスクラシック(Jpn1)連覇も狙ってもらいたい。