重賞ウィナーレポート

2021年05月13日 のじぎく賞(GDJ)

2021年05月13日 園田競馬場 晴 稍重 ダ 1700m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クレモナ

プロフィール

生年月日
2018年04月03日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:20戦3勝
総収得賞金
21,055,000円
クラグオー
母 (母父)
トゥバン  by  アドマイヤドン
馬主
門別 敏朗
生産者
門別 敏朗 (門別)
調教師
長倉 功
騎手
田中 学
  • T・H・Tステーブルで種牡馬生活を送るクレモナの父クラグオー(11歳)
    T・H・Tステーブルで種牡馬生活を送るクレモナの父クラグオー(11歳)
  • 父クラグオーの当歳馬
    父クラグオーの当歳馬
  • 門別敏朗牧場で繁殖生活を送るタイムビヨンド
    門別敏朗牧場で繁殖生活を送るタイムビヨンド
  • 門別敏朗牧場の放牧地
    門別敏朗牧場の放牧地

 5月に園田競馬場で行われた『グランダム・ジャパン2021』3歳シーズンの第6戦「のじぎく賞」は、地元・兵庫のクレモナが3馬身差の快勝。2歳6月の門別デビューからちょうど20戦目にして、嬉しい初重賞勝利をなし遂げた。

 クレモナのオーナーブリーダーは、日高町の門別敏朗さん。現在は息子の門別尚省さんが代表を受け継いで生産を行い、門別競馬場のすぐ近くでデビュー前の馬の馴致や育成を手掛けるT・H・Tステーブルも経営。また門別さんは装蹄師でもあることから、ホッカイドウ競馬が開幕する春先は特に多忙を極めるという。「仕事中だったのでレースはスマホで観たのですが、強い勝ち方でしたね。6番人気でしたが、他の人気馬が距離に不安がありそうだったので、チャンスはあるかなと期待していました」と愛馬の初重賞勝利に声を弾ませる。

 クレモナは北海道・堂山芳則厩舎からデビューした馬だが、その血統を見て「おっ!」と声をあげた地方競馬ファンも多いのではないだろうか。父のクラグオーは、両親(父クラキングオー、母クラシャトル)ともに北海優駿(ダービー)馬で、全姉のクラキンコはホッカイドウ競馬の三冠馬。クラグオー自身もホッカイドウ競馬の重賞を勝った活躍馬で、その一族はすべて倉見牧場のオーナーブリーディングホース、そしてクラキングオー、クラキンコ、クラグオーはともに堂山芳則調教師の管理馬だった。「私がもともと装蹄師としてホッカイドウ競馬の堂山厩舎に出入りしていて、クラキンコも担当させてもらっていたんです。ダービー馬の父母から生まれた担当馬が三冠馬となったのを目の当たりにして、とても感動しました。そして倉見牧場さんの馬づくりに対する姿勢に共感し、弟のクラグオーが引退する際に『うちで種牡馬にしたい』と申し出たんです。倉見さんも快諾してくれて、今も産駒たちの動向を気にしてくれています」と、クラグオーがT・H・Tステーブルで種牡馬となった経緯を話してくれた。

 クラグオーは種牡馬入りした初年度に2頭、その後は毎年1頭ずつ産駒を残しており、クレモナは2世代目に生まれた牝馬。その年に1頭しか生まれていない産駒が重賞馬となるのだから、すごいとしか言いようがない。「この血統の底力と体の丈夫さを感じています。なにしろ、堂山厩舎のハードトレーニングを耐え抜いてきた一族ですからね。倉見さんも『タフに使い込みながら強くなっていく血統』と仰っていました」と話す。

 その言葉通り、デビューしてからの数戦は大きく離されての敗戦がつづいたクレモナだが、6戦目で2着してからは上位争いをするようになり、2歳10月の10戦目で初勝利。ホッカイドウ競馬のシーズン終了とともに兵庫競馬へ移籍し、かつてホッカイドウ競馬に在籍していた井上幹太騎手が手綱を取ることになった。「移籍初戦は出遅れて負けてしまったのですが、レース後に井上幹太騎手が『この馬、走ると思いますよ。距離が伸びたらもっといいと思います』と連絡をくれたんです。その後も何度か連絡を取り合っているうちに『佐賀のル・プランタン賞とか合うんじゃないですかね』と井上騎手が言うので、3歳春になっても北海道に戻さずに兵庫に置いておくことにしました。結局、佐賀遠征もなくなって井上騎手も乗り替わってしまったのですが、そのまま兵庫にいたことで重賞を勝てたのですから井上騎手のおかげとも言えますね(笑)」と笑顔を見せる。

 クレモナはのじぎく賞で重賞初制覇を飾ったあと、牡馬相手の高知優駿(高知)3着、全国から強豪牝馬が集うロジータ記念(川崎)5着と遠征した重賞でも健闘。「クラグオーも2歳の時に鎌倉記念(川崎)に遠征して2着しましたが、クレモナは父の特徴を最も受け継いでくれている印象です。性格は人懐っこくておとなしいのに、メンタルが強くて輸送も初めての環境もまったく苦にしませんから」と遠征先でも好走できる要因を分析する。

 「4歳春には北海道に戻し、6月のヒダカソウカップ、7月のノースクイーンカップを目標にしています。そしてグランダム・ジャパンの古馬チャンピオンが獲れたら…なんて夢見ています」と話す門別さん。ノースクイーンカップといえば、2016年の同レースを制して同年の道営記念でホッカイドウ競馬の頂点に立ったタイムビヨンド(船越牧場生産)が現在、門別敏朗牧場で繁殖生活を送っている。春には父ゴールドドリームの2番仔が誕生する予定だそうだ。「タイムビヨンドにも、いつかクラグオーを交配したいと思っているんです。父の両親が北海道のダービー馬で、母は道営記念馬って夢がありますよね。これからもクラグオーの産駒で、ホッカイドウ競馬を盛り上げていければと思います」と未来に夢を膨らませる。長きに渡って倉見牧場が紡いできた血統にロマンを感じ、それを次世代につなげていこうとする生産者がいる。昔から競馬が“ブラッドスポーツ”と呼ばれる所以。その原点を垣間見たような気がして、とてもうれしくなった。