重賞ウィナーレポート

2019年04月29日 新潟大賞典 G3

2019年04月29日 新潟競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:メールドグラース

プロフィール

生年月日
2015年05月26日 04歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:15戦5勝
総収得賞金
183,468,000円
ルーラーシップ
母 (母父)
グレイシアブルー  by  サンデーサイレンス(USA)
馬主
(有) キャロットファーム
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
清水 久詞
騎手
D.レーン
  • 厩舎回りはいつ見ても美観が整えられている
    厩舎回りはいつ見ても美観が整えられている
  • 山内厩舎と桑田厩舎は、同じ育成グループとなる
    山内厩舎と桑田厩舎は、同じ育成グループとなる

 「育成時は動きや馬体共に、決して目を引くような馬ではありませんでした」とメールドグラースを育成した、ノーザンファーム早来の山内大輔厩舎長は話す。とはいっても、決して期待をしていなかったわけではない。父のルーラーシップは育成時に山内厩舎長も幾度となく跨がってきた思い入れの強い馬であり、父を彷彿とさせる成長力もメールドグラースからは感じられていた。

 「イヤリングから来たばかりの頃は小柄な印象がありましたが、それでも父の産駒は時間が経つにつれてしっかりとしてくるので、その変わり身に期待をしていました。乗った印象としては距離があった方がいいなと思えましたし、跨がってもらった他のスタッフからも、『ひょっとしたらいいところがあるかも知れません』との評価が聞かれていました」(山内厩舎長)

 とはいっても、山内厩舎長はその時点のメールドグラースに対して、大きな期待は持てずにいた。同期生の育成馬の中には、クラシックの期待も持たせてくれるような大物感溢れる動きを見せていた馬もいれば、早期のデビューから2歳重賞を沸かせてくれるような、仕上がりが進んだ馬もいた。メールドグラースはそのどちらにも当てはまらなかった。だからこそ、しっかりと競走馬としての階段を上らせていくことに専念した。

 その後の調整も順調に進んだこともあり、2歳の9月にデビューを果たしたものの、そこから4戦続けて3着となかなか勝ちきれず、初勝利をあげたのは6戦目のこと。ただ、ほぼ休み無くレースを使われてきたのは、牧場でしっかりとした乗り込みを図られた成果とも言えよう。

 「なかなか勝ちきれませんでしたが、それでもレースを使う度にしっかりとしてきた印象がありました。勝負所でもたつかないようになってきてからは、レースぶりも安定してきた印象を受けました」(山内厩舎長)

 2勝目をあげたのは3歳の8月ながらも、その時点で2着1回、3着5回の成績を残しており、掲示板を外したのも2回しかなかった。まさに馬主孝行と言える活躍を残していたメールドグラースであるが、今年に入ってから1000万下で3勝目をあげると、続く尼崎Sも勝利して、一気にオープン入りを果たす。

 「尼崎Sでは強い勝ち方を見せてくれました。とはいっても、いきなりの重賞挑戦はどうかなと思っていましたし、ここは試金石になるだろうなと見ていました」(山内厩舎長)

 デビューから15戦目での挑戦となった新潟大賞典(G3)。16頭の出走中、10頭がノーザンファーム生産馬となったが、その中には山内厩舎で育成されてきたアストラエンブレムの姿もあった。

 「人気(5番人気)だけでなく、重賞の実績もアストラエンブレムの方が上でしたからね。レースもアストラエンブレムを先に追っていたのは事実でした」(山内厩舎長)

 このレース、メールドグラースは7番人気の支持を受けていた。重賞初出走馬としてはなかなかの人気のようにも思えてくるが、このレースで1番人気を集めていたのは、同じ4歳馬であるロシュフォール。ハンデ戦となったこのレースだが、その斤量もロシュフォールが55㎏だったのに対して、メールドグラースは54㎏と差が付いていた。

 しかしながら、レースで先着したのはメールドグラースだった。好スタートから中団でレースを進めて行くと、最後の直線では馬場の真ん中に進路を取ると、一気に先行勢を交わしていく。

 「直線に入ってからもアストラエンブレムを見ていました。思ったよりも伸びないと思っていた矢先に、外から来たのがメールドグラースだと気付いてからは、必死になって応援をしました」(山内厩舎長)

 ゴール板手前、後方に待機していたロシュフォールが一気に差し脚を伸ばしてくる。だが、その動きを見たメールドグラースは、そこからグイッと一伸びした場所がゴールだった。

 鞍上を務めていたオーストラリアのレーン騎手は、その週から短期免許で騎乗したばかりであり、この新潟大賞典(G3)が重賞初制覇。その前日には東京競馬場で4勝をあげていたが、その勝ち鞍の中には山内厩舎で育成されていたラボーナもいた。

 「ラボーナも道中でもたつく馬だったので、ジョッキーに勝たしてもらったなと思っていました。この重賞もレーン騎手の手綱捌きによるところが大きかったのでしょうし、清水久先生や厩舎の皆さん、そして、中間を調整してくれていたノーザンファームしがらきのスタッフにも感謝するだけです」(山内厩舎長)

 この後は鳴尾記念(G3)で重賞2勝目を目指すことになったメールドグラースだが、本格化の兆しを見せた中での重賞制覇は、山内厩舎長にも更なる期待を持たせている。

 「レースごとに馬が変わってきているのだと思います。次は重賞馬として戦うレースとなりますが、ここでも育成時に自分が抱いていた評価を、いい意味で裏切ってくれるような結果を期待しています」(山内厩舎長)