重賞ウィナーレポート

2019年04月21日 フローラS G2

2019年04月21日 東京競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ウィクトーリア

プロフィール

生年月日
2016年03月27日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
98,594,000円
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
小島 茂之
騎手
戸崎 圭太
  • 昨年の阪神JF(G1)の優勝馬である、ダノンファンタジーの育成も行った村上厩舎
    昨年の阪神JF(G1)の優勝馬である、ダノンファンタジーの育成も行った村上厩舎
  • ウィクトーリアの母であるブラックエンブレムも、ノーザンファーム生産馬となる
    ウィクトーリアの母であるブラックエンブレムも、ノーザンファーム生産馬となる

 牝馬の騎乗育成を担当しているスタッフならではの喜び。それは育成を手がけた母の仔に携われることだという。

 ウィクトーリアの母であり、現役時には秋華賞(Jpn1)も制したブラックエンブレム。その輝かしいキャリアのきっかけと言える初重賞制覇はフラワーC(Jpn3)となったが、この勝利は現在、調教主任を務めている日下和博調教主任が、厩舎長時代に初めて制した重賞でもあった。

 当時、日下厩舎で育成スタッフだった村上隆博厩舎長は、その時の思い出を振り返る。

 「厩舎として結果を残そうと誰もが思っていた中で、先陣を切って重賞を制してくれた喜びは、今でも覚えています。ブラックエンブレムは調教から動きも良く、期待をしていた馬でしたし、気の強さも競馬ではいい方向に出てくれたと思います」(村上厩舎長)

 ブラックエンブレムは繁殖牝馬となってからも、高い能力を産駒へと伝えていき、ブライトエンブレムが札幌2歳S(G3)を優勝。アストラエンブレムも重賞戦線を沸かす活躍を続けている。

 ウィクトーリアはブラックエンブレムにとって、3頭目の牝馬となるが、その姉2頭を含めた全ての牝馬は、村上厩舎で騎乗育成が行われていた。

 「繁殖牝馬としてのブラックエンブレムは、配合種牡馬の馬体を産駒に伝える印象がありました。ただ、馬体のサイズが違っても、競走馬としての雰囲気はよく似ていましたし、気持ちを表に出すあたりもまた、母を彷彿とさせていました」(村上厩舎長)

 しかしながら、育成を手がけた三姉妹ではウィクトーリアが最も母とよく似ていたという。配合種牡馬の馬体を産駒に伝えるという通りに、ディープインパクトを父に持つオーロラエンブレムは420~430㎏代の馬体で競馬をしており、オルフェーヴルを父に持つマルーンエンブレムの前走(太宰府特別)は、384㎏でしかなかった。

 しかしながら、現役時は500㎏を優に超える馬体をしていたヴィクトワールピサの産駒であるウィクトーリアは、フローラS(G2)出走時で466㎏。これはブラックエンブレムが秋華賞(Jpn1)を制した時の馬体重(452㎏)よりも恵まれた馬体をしていると言える。

 「イヤリングからの移動時は、ようやく母に近い作りをした馬が来たと思いました。育成時は他の馬たちと比べると遅れ気味ではありましたが、暖かくなってからペースを上げたところ、それに比例するかのように一気に良化を遂げ、これなら早い時期にデビューができるのでは、と思えるようになりました」(村上厩舎長)

 その期待通りに、芝1800mで行われたメイクデビュー函館を勝利したウィクトーリアであったが、兄ブライトエンブレムとのきょうだい制覇を目指した札幌2歳S(G3)は、スムーズな競馬ができずに7着に敗退。そのレースの後、ウィクトーリアが村上厩舎に戻ってきたが、肉体面だけでなく、精神的ダメージも感じ取れたと村上厩舎長は話す。

 「新馬戦でいいレースを見せてくれたと言えども、まだ成長途上だったのでしょうし、この時点では揉まれる競馬がストレスになのかなとも思いました」(村上厩舎長)

 その言葉通りというのか、先手を奪えなかった赤松賞は5着に敗れているものの、続く3歳500万下は鮮やかな逃げ切りで優勝。このフローラS(G2)もペースを握る存在と注目されたが、スタートのタイミングが合わず、後方からのレースを余儀なくされてしまう。

 しかしながら、ウィクトーリアは馬群の中でもスムーズな追走ができていただけでなく、最後の直線では馬群の切れ目から一気に抜け出ると、ゴール板手前では内で粘り込みを図るシャドウディーヴァよりも、ハナ差だけ先に抜け出していた。

 「勢いこそありましたが、ゴールの瞬間は届いているのかな?と思いました。今後に繋がるレースができたとも思いますし、本当に頑張ってくれました」

 そう話した村上厩舎長は、「1戦ごとに十分なケアをしてくれている、小島先生や厩舎スタッフの皆さん、そして、厩舎の意向を反映できる管理ができているノーザンファーム天栄のスタッフがいなければ、この結果は出ていないと思います」と感謝の言葉を述べる。

 この後はオークス(G1)への出走を目指すこととなったウィクトーリアだが、このレースには、村上厩舎の育成馬で、昨年の阪神JF(G1)の優勝馬であるダノンファンタジーも出走を予定している。

 「一世代で複数頭の育成馬をクラシックに送り出せることは、厩舎としても喜ばしいことです。ダノンファンタジーも巻き返してくれると思いますし、ウィクトーリアもオークス(G1)ではどんなレースを見せてくれるか楽しみです。2頭共に距離はこなしてくれると思いますし、いい結果を期待したいですね」(村上厩舎長)

 2歳女王の復権となるか、もしくは母と娘でのG1制覇が叶うか。いずれにせよ、この2頭の牝馬もまた、いつかは母となり、そして、娘たちは村上厩舎長の元で管理をされることになるのだろう。