2018年11月26日 プリンセスC(中央認定)(GDJ)
優勝馬:シェリーアモール
プロフィール
- 生年月日
- 2016年04月13日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:7戦2勝
- 総収得賞金
- 17,258,000円
- 母 (母父)
- ケイズビーナス by タイキシャトル(USA)
- 馬主
- 吉橋 英隆
- 生産者
- 長田ファーム (門別)
- 調教師
- 山口 竜一
- 騎手
- 山本 聡哉
『グランダム・ジャパン2018』2歳シーズンの第5戦「プリンセスカップ(水沢)」を、北海道からの遠征馬シェリーアモールが優勝。道中2番手追走から3~4コーナーで早くも先頭にたち、直線に入っても後続を寄せ付けずにそのまま押し切ってゴールイン。5月の門別デビュー戦を圧勝して以来の2勝目を、初遠征となる重賞の舞台で飾った。
シェリーアモールの生まれ故郷は、日高町清畠の長田ファーム。1998年のチューリップ賞(G3)を制して桜花賞(G1)で1番人気に支持されたダンツシリウス(父タマモクロス)や、2002年~2005年の間にJRAの芝重賞を5勝したマイソールサウンド(父タマモクロス)などを生産した牧場で、現在は二代目の長田保雄さんと奥様の2人で6頭の繁殖牝馬(預託含む)とその仔たちを管理している。タマモクロスの代表産駒を2頭も生産したことについて伺うと、「父がタマモクロスの株(種付権利)を持っていたので、たまたまですよ」と謙虚な答えが返ってきた。
「父の代には30頭近く繁殖がいたときもあったのですが、今は夫婦2人が目の届く範囲でやっています。現在、自己所有の繁殖牝馬が5頭いるのですが、そのうちの3頭がここで生まれて戻ってきた馬で、シェリーアモールの母ケイズビーナス(父タイキシャトル)もその1頭です。子供の頃のことを知っていると性格やクセを把握できていますし、なにかと扱いやすいですからね」と話す長田さん。「ケイズビーナスは牧場に戻ってきて10年ほどになるのですが、受胎があまりよくなく、これまでにシェリーアモールを含めて2頭しか産駒がいないんですよ。昨年も不受胎でしたが、今年はカレンブラックヒルの仔を受胎していますので、来春無事に生まれてくれることを願っています」と、マイソールサウンドの半妹にあたる母馬を紹介してくれた。
シェリーアモールが生まれた当時のことを伺うと、「もともと母馬の乳首が飲みづらい形をしているので、生まれて数日は手伝いながら母乳を飲ませていたことを覚えています。そのあとは病気や怪我もなく、いたって順調に育ちました。性格もまったくクセがなく、手のかからない馬でしたね」と振り返り、「そういえば、流星の形がサンデーサイレンスにそっくりだったんですよ。祖母のチアズスミレがサンデーサイレンス産駒なので、隔世遺伝したのかもしれないと話していたことがありました」と言い、当歳時に撮ったあどけない顔の写真を何枚も見せてくれた。
1歳春まで長田ファームの放牧地で元気に育ったシェリーアモールは、コンサイニングを経て夏の北海道市場・サマーセールに上場したものの、買い手がつかずに主取りとなってしまう。「当時は少し緩い感じの印象を受ける動きをしていましたし、馬体も小さかったので仕方がないと思っていました」と話す長田さん。仕切りなおして秋のオータムセールに上場すると、183万6000円(税込)の価格で無事に落札された。「買っていただいた吉橋オーナーとは、その時が初めてのお取り引きでした。あとで聞いたのですが、サマーセールの時から気にはかけていただいていたようで、オーナー自らが馬を気に入って購入してくれたそうです」と、シェリーアモールが競走馬への一歩を踏み出した日のことを話してくれた。
シェリーアモールは、今回のプリンセスカップを制する前に門別競馬場で6戦を戦ってきたが、そのほとんどのレースを奥様が現地で応援しているそうだ。「門別競馬場のパドックを歩いているとき、当時の呼び名で声をかけると目が合う時があるのですが、気のせいですかね(笑)」と奥様は笑うが、シェリーアモールが歩んできた栄冠賞→フルールカップ→フローラルカップ→エーデルワイス賞(Jpn3)という道は、ホッカイドウ競馬でデビューした2歳牝馬の王道と言えるだろう。「強い馬とばかり戦ってきましたからね。今回の勝利は、その経験が生きたのだと思います。暮れには東京2歳優駿牝馬(大井)に挑戦すると聞いていますし、これからますます強い相手と戦っていくことになるのでしょうね。その中でも、故障せずに長く活躍してくれることを願っています」と愛馬にエールを送る長田さんご夫婦。生産馬のことを愛情たっぷりの笑顔で話すお2人の顔を見ていると、ここで育って繁殖牝馬として戻ってくる馬たちは、とても幸せな馬生を送っているように感じた。