重賞ウィナーレポート

2018年10月20日 富士S G3

2018年10月20日 東京競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ロジクライ

プロフィール

生年月日
2013年02月22日 05歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:13戦5勝
総収得賞金
191,209,000円
ハーツクライ
母 (母父)
ドリームモーメント(GB)  by  Machiavellian(USA)
馬主
久米田 正明
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
須貝 尚介
騎手
C.ルメール

 「2年以上は牧場で管理していたと思いますよ」とロジクライの思い出を質問した際に、まず林宏樹調教主任はそう話してきた。確かに牧場の取材で林調教主任が管轄する木村厩舎で、ロジクライの姿を幾度となく見かけてきたことを、その言葉を聞いて思い出した。

 3歳の1月、シンザン記念(G3)で初重賞制覇を果たしたものの、スプリングS(G2)の前に左前の深管骨りゅうで休養。その後は骨折も判明したロジクライであったが、ここまで復帰に時間を要したのは、爪のトラブルに加え、あまりにも大きくなりすぎた馬体重も関係していた。

 「手術の後は厩舎で管理していましたが、その頃には600㎏近くにはなっていたと思います。ケアをしながら運動量を増やしていき、馬体を絞りながら昨年の5月ぐらいにはハロン15秒台の時計を出せるまでになったのですが、その後は爪を痛めて、またペースダウンをせざるを得ませんでした」

 実はこの休養期間、ずっとロジクライの背中に乗っていたのは林宏樹調教主任だった。

 「初めて乗った時から背中のいい馬でしたが、体質がそれほど強くは無かったので、時間をかけながら調教を進めてきました。今回の調整でも自分が入厩まで跨がろうと思いましたが、久米田オーナーや須貝先生も根気よく復帰を待ってくれましたし、その思いに応えなければと思っていたのも事実です」

 「入厩の目処が立ったのは夏を迎えてから。なんと、その予定が決まった後に跛行を起こした時には、まだ、ここにいたいのかなと思いました」とのエピソードも林調教主任は教えてくれる。

 復帰後は1600万下からの始動となったが、節分Sを勝利してオープンに返り咲くと、続く六甲Sにも勝利。マイラーズC(G2)こそ7着に敗れるも、中京記念(G3)で2着、京成杯オータムH(G3)でも3着と、重賞馬らしい底力を発揮していく。

 実は中京記念(G3)の後、ロジクライはノーザンファーム早来に戻ってきていた。

 「久米田オーナーからは、乗った感覚を教えて欲しいと言われました。重賞を使ってきた後ですが、目立った疲れも無く、むしろシャキッとしていた印象もあったので、これならいい状態でレースに向かえますと伝えました」

 その判断が正しかったことが証明されたのが、この富士S(G3)だった。1000m通過57秒4という速い流れを2番手で待機したロジクライは、残り1ハロンで前を行くマルターズアポジーを交わして先頭へと踊り出る。後方からはワントゥワンなどが追い込んで来るも、セーフティーリードを保ったまま、2着に2馬身差をつけるゴール。その雄大な馬体通りの「横綱相撲」のレースぶりで、実に2年9か月ぶりの重賞制覇を飾った。

 「レースの後、オーナーが感動で涙を流されていたと聞いて、胸が熱くなりました。須貝先生やスタッフの皆さんのおかげで、復帰後も順調にレースを使えていますし、これまでの重賞制覇とはまた違った感慨もありました」

 この勝利でマイルChS(G1)への優先出走権を掴んだロジクライ。次走は勿論、G1の舞台となる。

 「スピード能力があるだけでなく、好位で折り合いも付けられる上に、終いもしっかりとしているので、メンバーが強くなってもいいレースができるはずです。自分自身、これほど長く背中に跨がってきた馬はまずいませんし、この馬から様々なことを教えられました。ハーツクライ産駒らしく、年齢を重ねながら力も付けていますし、マイルChS(G1)でもいいレースを見せてくれると思います」