重賞ウィナーレポート

2018年06月13日 関東オークス(中央交流) Jpn2

2018年06月13日 川崎競馬場 晴 稍重 ダ 2100m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ハービンマオ

プロフィール

生年月日
2015年04月02日 03歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:6戦2勝
総収得賞金
41,850,000円
ハービンジャー(GB)
母 (母父)
ダンシングマオ  by  ゴールドアリュール
馬主
森口 隆一郎
生産者
登別上水牧場 (登別)
調教師
中舘 英二
騎手
松岡 正海
  • .ハービンマオの母ダンシングマオと今年生まれた当歳馬(牡、父ベルシャザール)
    .ハービンマオの母ダンシングマオと今年生まれた当歳馬(牡、父ベルシャザール)
  • 登別上水牧場の放牧地
    登別上水牧場の放牧地
  • 昼夜放牧で心身ともに強い馬づくりを目指している
    昼夜放牧で心身ともに強い馬づくりを目指している
  • 登別上水牧場の生産馬たちは野生の鹿が放牧地に入ってきても動じる様子はない
    登別上水牧場の生産馬たちは野生の鹿が放牧地に入ってきても動じる様子はない
  • 登別上水牧場の厩舎
    登別上水牧場の厩舎
  • 登別上水牧場の看板
    登別上水牧場の看板

 川崎競馬場が舞台となる『グランダム・ジャパン2018』3歳シーズンの最終戦「関東オークス(Jpn2)」は、6番人気のハービンマオが優勝。道中は前とは大きく離れた中団で脚を溜め、3~4コーナーで一気に進出。直線では先に抜け出していた地元馬ゴールドパテックを一歩ずつ追い詰め、ゴール寸前で外からかわして初重賞タイトルをもぎ獲った。

 ハービンマオの生まれ故郷は、登別市の登別上水牧場。ユートピア牧場、青藍牧場と並び登別市に3軒ある競走馬生産牧場のうちのひとつで、過去には1976年の京王杯オータムハンデキャップに優勝したライバフツトや、1985年の新潟3歳ステークス(G3)を制したダイナエイコーン、1986年の中山大障害(春)など障害重賞3勝を挙げたライバコウハクなどの活躍馬を生産。また、ウイナーズサークルが勝った競馬最盛期の日本ダービー(G1)で3着したサーペンアップも同牧場の生産馬である。

 「ハービンマオの関東オークス(Jpn2)はテレビで観戦していました。人気もなかったので気軽な気持ちで見ていたのですが、あの強い勝ち方には正直ビックリしちゃいました。生産馬の交流重賞勝ちはジーナフォンテンのエンプレス杯(G2)(2003年)以来となりますので、久しぶりで本当に嬉しかったです。ジーナフォンテンはスパーキングレディーカップ(G3)(2002年)にも勝っていますから、不思議に川崎競馬場とは相性がいいですね」と笑顔を見せるのは、登別上水牧場の創業者・上水清氏さん。現在は息子さんに代表権を譲り、スタッフ2名とともに馬産の中心地から離れた登別の山あいで、強い競走馬づくりに日々励んでいる。

 「昔は今みたいに競走馬のせりが盛んではなく、ほとんどが庭先での取り引きでした。高速道路も整備されていなくて、オーナーや調教師さんがなかなか足を運んでくれずに苦労した時代もありました。『登別温泉で1泊して、ゆっくりしていってください』と誘い、馬を見に来てもらったこともありましたよ(笑)」と笑う上水さんだが、登別上水牧場はいまや日本でも主流となってきた昼夜放牧の先駆者でもある。
 「生産馬の放牧時間をできるだけ長くしたいと考え、ここに牧場を構えてすぐに1歳馬の昼夜放牧を試みました。その頃の日本で昼夜放牧をしている牧場はほとんどなく、欧米の牧場で見てきたものを参考に手探り状態で始めたのですが、当時は『馬がかわいそう』とか『夜間に何かあったらどうするんだ』といった批判も多かったですね。ただ昼夜放牧をした効果は絶大で、病気しづらく丈夫な体に育つことに加え、馬が人に対してすごく従順になり、驚くほどコミュニケーションがとりやすくなったんですよ。真っ暗なところに何時間もいて人恋しくなるんですかね(笑)。今では当歳馬も、生まれて1ヶ月後には昼夜放牧に切り替えています」と話す。ハービンマオも、当歳時から昼夜放牧されて健やかに育った1頭だ。「母にとっての初仔ですから小柄でしたけど、病気や怪我もなく順調に育ち、性格も扱いやすい馬でした。いまは450キロ台まで体も成長し、逞しくなりましたね」と当時のことを懐かしそうに振り返る。

 ハービンマオの母ダンシングマオは社台ファームの生産馬で、ゴールドアリュールの3世代目産駒。現役時代はダートの短距離で4勝を挙げ、7歳まで中央競馬で活躍したスピード馬だった。「ダンシングマオは森口オーナーがセレクトセールで購入した馬なのですが、引退後に縁あって譲り受けることになりました。初年度にハービンジャーを交配して生まれた初仔は森口オーナーに所有してもらう約束をしており、その仔がハービンマオだったんです」と明かしてくれた。ダンシングマオは今春、父ベルシャザールの元気な牡馬を出産。姉の活躍を受け、当歳馬に対する上水さんの期待も日に日に高まっている。

 そしてハービンマオは次走、古馬との初対戦となる「ブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)」へ出走。クイーンマンボ、ラビットラン、プリンシアコメータなどダート牝馬路線を牽引する古馬のトップホースが揃う中、最後の直線で追い上げて堂々の5着に健闘した。「ブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)は門別競馬場へ駆けつけて応援しました。ハービンマオのレースを現地観戦するのは初めてだったたのですが、立派に成長した姿を見られて嬉しかったです。パドックでは少し入れ込んでいましたが、あの強いメンバーを相手に上々のレース内容だったのではないでしょうか。今後の活躍がますます楽しみになる一戦でした」とレースの感想を語ってくれた。登別上水牧場創業以来、中央と交流をあわせた重賞タイトル数は現在「9」個だそうだ。ハービンマオはまだまだこれからの3歳馬。今後もダートグレードの常連として多くのレースに出走し、記念すべき「10」個目のタイトルを生まれ故郷の登別へ送り届けてほしい。