重賞ウィナーレポート

2014年10月16日 エーデルワイス賞(中央交流) Jpn3

2014年10月16日 門別競馬場 曇 稍重 ダ 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ウィッシュハピネス

プロフィール

生年月日
2012年04月15日 02歳
性別/毛色
牝/青鹿毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
58,949,000円
ゴールドアリュール
母 (母父)
フロムスクラッチ(USA)  by  Grand Slam(USA)
馬主
前田 晋二
生産者
株式会社 ノースヒルズ (新冠)
調教師
沖 芳夫
騎手
戸崎 圭太
  • ウィッシュハピネスの母フロムスクラッチ(9歳)
    ウィッシュハピネスの母フロムスクラッチ(9歳)
  • 母フロムスクラッチもJRAダート短距離で3勝を挙げた活躍馬
    母フロムスクラッチもJRAダート短距離で3勝を挙げた活躍馬
  • 現在、フロムスクラッチはハーツクライの仔を受胎中
    現在、フロムスクラッチはハーツクライの仔を受胎中
  • 新冠町美宇地区にあるノースヒルズの放牧地
    新冠町美宇地区にあるノースヒルズの放牧地
  • この地から2年連続して日本ダービー馬が巣立った
    この地から2年連続して日本ダービー馬が巣立った

 中央・地方含み2歳牝馬限定で行われる国内唯一のダート重賞、それが門別競馬場1200mを舞台に行われる「エーデルワイス賞(Jpn3)」だ。「グランダム・ジャパン2014」2歳シーズンの第2戦にも組み込まれているその一戦を制したのは、これがデビュー3戦目と浅いキャリアながら1番人気に支持されたウィッシュハピネス。好スタートを決めてハナを奪うと、抜群のスピードを披露して3馬身差の逃げ切り勝ちを収めた。

 ウィッシュハピネスの生まれ故郷は、新冠町美宇地区に牧場を構えるノースヒルズ。同牧場グループの大山ヒルズ(鳥取県)と連携しながら生産・育成を行っている。毎年、約50頭の競走馬を競馬場へ送り出しているが、その中から昨年はキズナ、今年はワンアンドオンリーと、生産馬が日本ダービー(G1)を2年連続制して世代の頂点に立っているほか、アフォード、クラレント、ヒットザターゲットなど、現役の活躍馬だけでも枚挙に暇がない。2歳世代からも、すでに2勝を挙げているジャストドゥイング、ティルナノーグをはじめ、13頭の生産馬がJRAで勝ち上がり。さらにウィッシュハピネスのエーデルワイス賞(Jpn3)勝利は、ノースヒルズにとって9世代連続の生産馬重賞制覇ともなった。

 「優勝できて嬉しいです。1番人気に推されましたが、キャリアの浅いメンバー同士の対戦でしたからね。力関係はわかりませんし、ナイター競馬も初めてなので、レース前はそのあたりがどうかなと思っていました。ただ、輸送減りがなく、パドックでは良い状態を保っているように感じていました。スタートから戸崎圭太騎手がうまくレースを進めていて、直線に入るあたりの手応えで勝てるのではと思いました。最後また引き離しましたし、強い内容でしたね」とレースを振り返ってくれたのは、同牧場ゼネラルマネージャーの福田洋志さん。当日はスタッフ約30名が車を乗り合わせて門別競馬場へ駆けつけ、歓喜の瞬間を分かち合った。ホッカイドウ競馬重賞の口取りは、育成馬オーブルチェフの北海道2歳優駿(Jpn3)以来となる。

 「夕方仕事を終えてから各々乗り合わせで競馬場へ向かいました。スタッフ総出で応援に行ける機会はなかなかないですからね。移動の車中から楽しみな気持ちでいっぱいでした。牧場を離れて1年足らずですが、すっかり競走馬らしくなっていて、レースに向けて闘争心あふれる姿に成長を感じました。一緒に働いている仲間とレース観戦し、口取りにも入ることができて、本当に嬉しかったです」と喜びに沸いた夜を思い出すのは、応援団の中にいたスタッフで繁殖チーフの鵜飼祐樹さん。生産馬がダートグレードを優勝する瞬間に立ち会えたことは、牧場の皆さんにとっても大きな励みとなったことだろう。

 ウィッシュハピネスの父は、エスポワールシチー、スマートファルコン、コパノリッキー、クリソライト、オーロマイスターなど、現代のダート競馬を牽引する産駒を次々と送り出しているゴールドアリュール。一方の母フロムスクラッチ(その父Grand Slam)も、JRAのダート短距離で3勝を挙げた活躍馬だ。サラトガの1歳セール上場時に沖芳夫調教師の勧めで前田幸治オーナー(ノースヒルズ代表)が購入したアメリカ産馬で、その母系を遡ると、南半球で種牡馬として成功したサザンヘイローや、日本で重賞を2勝しているケイアイレオーネがいるファミリーの出身だ。5歳で競走生活を退き、2010年から同牧場で繁殖牝馬となった。「9歳となった現在も健康状態は良好で、元気に繁殖生活を送っています。牧場の中では若い部類ですが、出産・子育てを経験して母馬らしくなりました。アメリカ産馬なので、日本にいる種牡馬と配合しやすい血統背景は強みですね」と殊勲の母を紹介。現在はハーツクライの仔を受胎しているそうだ。

 その母の2番仔として誕生したウィッシュハピネスの牧場時代について、「母に似て筋肉質で、パワフル。優れたスピードを感じさせるタイプでしたね。病気やケガもなく、扱いで手を焼いた記憶はありません。冬季の昼夜放牧も経験し、順調に育って1歳の暮れに大山ヒルズに移動しました」と振り返る鵜飼さん。同牧場の栄養コンサルタントを務めるスティーブ・ジャクソンさんからも高い評価を受けていたという。

 「今回勝てたことで、ローテーションが楽になりましたからね。距離が延びてもやれそうですし、芝でも…と思わせる馬です。今後、さらに大きな舞台へ挑んでいって欲しいです」と期待を込める福田さん。JRA所属馬のため「グランダム・ジャパン」シリーズのポイント対象馬とはならないが、来年のJRA牝馬クラシックや今後の牝馬ダートグレード路線で頻繁にその名と接することになるかもしれない。「ウィッシュハピネス=幸運を祈る」。オーナーがその名に込めた思いは、さらに煌びやかな舞台で大きく花開きそうだ。