重賞ウィナーレポート

2014年04月24日 東京プリンセス賞(GDJ)

2014年04月24日 大井競馬場 晴 良 ダ 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:スマートバベル

プロフィール

生年月日
2011年03月16日 03歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:8戦3勝
総収得賞金
26,638,000円
サウスヴィグラス(USA)
母 (母父)
ユアカラー(UAE)  by  ジェイドロバリー(USA)
馬主
大川 徹
生産者
カタオカステーブル (静内)
調教師
川島 正一
騎手
澤田 龍哉
  • スマートバベルの弟ユアカラー2013(牡1歳、父ソングオブウインド)
    スマートバベルの弟ユアカラー2013(牡1歳、父ソングオブウインド)
  • 新ひだか町豊畑に位置するカタオカステーブルの放牧地
    新ひだか町豊畑に位置するカタオカステーブルの放牧地
  • レジェンドハンター、キタサンチャンネル、キタサンヒボタンなどの生産馬が中央の重賞を制覇している
    レジェンドハンター、キタサンチャンネル、キタサンヒボタンなどの生産馬が中央の重賞を制覇している
  • カタオカステーブルは育成も手がけ、フリオーソなどのG1馬もこの坂路コースで鍛えられた
    カタオカステーブルは育成も手がけ、フリオーソなどのG1馬もこの坂路コースで鍛えられた
  • カタオカステーブルの看板
    カタオカステーブルの看板

 南関東牝馬クラシック第2弾「東京プリンセス賞(大井)」は、『グランダム・ジャパン2014』3歳シーズンの第4戦にも組み込まれている。1着賞金も2000万円と地方牝馬重賞としてはビッグマネーが用意されているその一戦を、7番人気(単勝25.6倍)の伏兵馬スマートバベル(船橋)が制した。圧倒的1番人気のノットオーソリティが外から抜け出しを図ったところ、抜群の瞬発力を活かして内からグイグイと脚を伸ばし、1馬身1/4の差をつけてゴールイン。見事に重賞初制覇を飾った。

 スマートバベルの生まれ故郷は、新ひだか町豊畑のカタオカステーブル。1955年創業の牧場で、現在の繁殖牝馬は9頭。生産のほかに育成も手がけており、あわせて10名のスタッフが日々強い馬づくりに励んでいる。過去の生産馬には、キタサンチャンネル、キタサンヒボタンの兄妹がいて、2001年にはその兄妹がニュージーランドトロフィー(G2)とファンタジーS(G3)を制する大活躍をみせた。また、笠松所属馬として中央の重賞に挑戦し、1999年のデイリー杯3歳S(G2)を制して朝日杯3歳S(G1)でも2着に健闘したレジェンドハンターも同牧場の生産馬だ。育成馬としては、フリオーソ、アジュディミツオー、ネームヴァリューといった錚々たる馬たちが巣立っている。

 「道中ロスなくまわって、澤田龍哉騎手の落ち着いた騎乗が光りましたね。初めての大舞台ながら、人馬とも素晴らしい走りだったと思います」と愛馬のレースを振り返って喜びのコメントを寄せてくれたのは、カタオカステーブル専務の片岡拓章さん。実は前日、羽田盃へ生産馬のドバイエキスプレスが出走し、ハッピースプリントの2着に入る健闘をみせたばかり。2日つづけて生産馬が南関東クラシックの大舞台で活躍したことに、自然と笑顔がこぼれてくるようだ。「追い切りで2頭は併せ馬をし、好時計を出していました。両馬ともに本番を楽しみにしていたんですよ。立て続けにこれだけの結果を出してくれて、本当に嬉しいです」と興奮冷めやらぬ様子で話してくれた。

 「スマートバベルは当歳時から手のかからない馬で、気性は素直でした。離乳前、放牧地ではドバイエキスプレスと一緒に過ごしていました」と牧場にいた時代を思い出す。

 スマートバベルの母ユアカラーはUAE生まれ。ジェイドロバリーの直仔で、牝系を遡ると英国オークス馬オーソーシャープの名前もある。カタオカステーブルがオーナーとなり、船橋競馬からデビューして6戦を戦ったが勝利には恵まれず、そのまま繁殖として迎え入れることになった。サウスヴィグラスとの配合については、「ミスタープロスペクターのクロスを狙って配合しました」と話す。

 そうして母の3番仔として誕生したスマートバベルだが、競走馬としてデビューするまでの道のりは平坦ではなかった。1歳時にサマーセールへ上場したものの、買い手がつかずに主取り。2歳を迎え、千葉サラブレッドセールの公開調教で終い1ハロン11.7秒の好時計を叩き出したが、ここでも買い手はつかなかった。「時計も悪くなかったし、大丈夫だと思っていたのですが…。せりの後は頭を抱えました」と当時を振り返る片岡さん。父サウスヴィグラスとはイメージの離れた馬体が、せりで敬遠された一因だったようだ。

 紆余曲折がありながらも、無事にオーナーがついて母と同じく船橋競馬からデビューすることになったスマートバベルは、デビュー戦こそ5着だったが、その後は連を外さない堅実なレースぶりでクラスを上げていき、ついにクラシックの大舞台で重賞のタイトルをつかんだ。「無理のないローテーションで競馬を使ってきたことが、今回の勝利につながったのだと思います」と話す片岡さん。実力馬ノットオーソリティをねじ伏せたレースぶりからして、今後も南関東の牝馬重賞路線で主役を張っていけそうな逸材だ。

 またスマートバベルの下には、父ヴァーミリアンの2歳牡馬と、父ソングオブウインドの1歳牡馬が生まれており、こちらにも片岡さんは期待を寄せている。「2歳の仔は、母姉と同様に船橋競馬でデビュー予定です。育成での動きも良くて、デビューを楽しみにしています。1歳の仔は背が高く、スマートバベルとタイプが似ていますね。現在、元気に夜間放牧をしています」と弟たちを紹介してくれた。

 「今後も大きなレースに出走するとなれば、北海道から駆けつけたいです」と愛馬の更なる活躍を楽しみにする片岡さん。ラブミーチャンが引退した地方競馬に、サウスヴィグラス産駒の牝馬が再び旋風を巻き起こしてくれることを夢見たくなる。