2014年04月20日 ル・プランタン賞(GDJ)
優勝馬:クロスオーバー
プロフィール
- 生年月日
- 2011年04月20日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:21戦5勝
- 総収得賞金
- 12,646,000円
- 母 (母父)
- スズカミンクス by アサティス(USA)
- 馬主
- 酒井 孝敏
- 生産者
- グランド牧場 (静内)
- 調教師
- 別府 真司
- 騎手
- 別府 真衣
『グランダム・ジャパン』3歳シーズンの第3戦「ル・プランタン賞(佐賀)」を、高知から遠征したクロスオーバーが快勝。別府真衣騎手を背に先行策から抜け出し、後続に2馬身の差をつけて、1月の花吹雪賞(佐賀)以来となる重賞2勝目、通算5勝目を飾った。
クロスオーバーの生まれ故郷は、グランダム・ジャパンシリーズではすっかりお馴染みのグランド牧場。コテキタイ(12年・桜花賞)、ハニーパイ(12年・エーデルワイス賞(Jpn3))、イチリュウ(13年・桜花賞)、ハードデイズナイト(13年・留守杯日高賞)、ピッチシフター(13年・秋桜賞)らの生産馬が指定レースに勝利し、毎年のようにシリーズを盛り上げてきた。
「遠征競馬となりましたが、強い内容でしたね。優勝できて嬉しいです。3歳春にして、精神力の長けた馬に成長しました」と愛馬のレースを振り返って感心するのは、グランド牧場の伊藤佳幸社長。昨年5月の道営デビューから毎月コンスタントに走り、このレースがすでに21戦目。高知へ移籍してからは、JRAの桜花賞(G1)トライアル・チューリップ賞(G3)や、古馬混合の牝馬ダートグレード・マリーンカップ(Jpn3)にも果敢に挑戦。遠征競馬で強い馬たちと戦ってきた経験が、強靭でタフな精神力を築いてきたようだ。
「長きにわたって力を入れてきた血統で結果を出せたことも嬉しいです」と伊藤社長が話すように、父サウスヴィグラス×母の父アサティスの配合は、グランド牧場が先駆けとなったニックスといっても過言ではない。2度のNARグランプリ年度代表馬を獲得したラブミーチャンを筆頭に、南関東で現19勝をマークしているスマートジョーカー、また前述のコテキタイ、ハニーパイなど、同配合のグランド牧場生産馬が輝かしい結果を残してきた。
クロスオーバーの血統を遡ると、3代母にウイニングカラーズの名前がある。牝馬ながらに1988年のケンタッキーダービー(G1)を制した名牝中の名牝だ。1875年から続くケンタッキーダービーの長い歴史の中で牝馬による優勝は3度しかなく、ウイニングカラーズ以降は今日まで出現していない。その貴重な血は日本でも根付き、産駒のゴールデンカラーズが牝馬クラシックの前哨戦で活躍、その仔で牝馬重賞戦線を長く沸かせてきたチアフルスマイルも繁殖入りし、その枝葉を広げつづけている。また、2003年のジャパンカップ(G1)、2004年の宝塚記念(G1)を制したタップダンスシチーは、ウイニングカラーズの甥に当たる。
クロスオーバーの母スズカミンクスもグランド牧場の生産馬で、JRAでデビューして2歳時に1勝を挙げ、エーデルワイス賞(G3)へも駒を進めた期待馬だった。引退後に生まれ故郷へ戻って繁殖入りし、サウスヴィグラスとの交配で4番仔として産み落としたのがクロスオーバーだった。「母馬と同じく小柄な馬体でしたが、元気一杯でした。調教過程はスムーズで、同世代の中でも仕上がりは早かったです」と牧場で過ごした時代を振り返る。
「クロスオーバーの妹弟も順調に育っています。将来を楽しみにしていますよ」と紹介してくれたのは、父バトルプランの1歳牝馬と、父ヴィクトワールピサの当歳牡馬。どちらも産駒がこれからデビューする期待の種牡馬で、牝系の優秀さを考えると、グランド牧場ブランドの新たなニックスが生まれる期待も高まる。
「クロスオーバーには、グランダム・ジャパンシリーズの優勝争いを含め、今後も長く活躍してくれることを期待しています」とエールを送る伊藤社長。1927年創業、3つの繁殖場(新ひだか町真歌、新ひだか町豊畑、新冠町高江)と2つの育成場(新ひだか町真歌、岩手県遠野)を構える名門牧場が送り出した良血牝馬。小さな体に秘めた闘志とタフさは、牧場時代の鍛錬や厩舎の努力がつくり上げてきたものだろう。チャレンジなきところに成功なし―。高い舞台へ挑戦しつづける可憐な花が、どこの舞台で大輪の花を咲かせるか注目だ。