重賞ウィナーレポート

2014年03月27日 桜花賞(GDJ)

2014年03月27日 浦和競馬場 曇 重 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:シャークファング

プロフィール

生年月日
2011年04月08日 03歳
性別/毛色
牝/栗毛
戦績
国内:11戦3勝
総収得賞金
30,815,000円
パイロ(USA)
母 (母父)
ノースソング  by  アンバーシャダイ
馬主
鮫島 明洋
生産者
元道牧場 (三石)
調教師
秋吉 和美
騎手
矢野 貴之
  • シャークファングの半妹ノースソング2013(牝1歳、父オレハマッテルゼ)
    シャークファングの半妹ノースソング2013(牝1歳、父オレハマッテルゼ)
  • 半妹は元道牧場の放牧地を元気に駆け回っている
    半妹は元道牧場の放牧地を元気に駆け回っている
  • シャークファングの写真を手に生産者の元道弘直さん
    シャークファングの写真を手に生産者の元道弘直さん
  • 新ひだか町三石に位置する元道牧場の放牧地
    新ひだか町三石に位置する元道牧場の放牧地
  • 元道牧場の看板
    元道牧場の看板

 今年で5年目となる『グランダム・ジャパン』シリーズが開幕。その初戦を飾る3歳シーズン「桜花賞(浦和)」は、圧倒的1番人気に支持されていたノットオーソリティがレース直前に競走除外となり、場内騒然とする中でゲートが開いた。そんな波乱を予感させるレースを制したのは、前哨戦のユングフラウ賞でノットオーソリティの2着していたシャークファング。5番人気と決して評価は高くなかったが、好スタートからハナを奪って逃げ切る見事な勝利だった。

 シャークファングの生まれ故郷は、新ひだか町三石の元道牧場。昭和37年の創業で、繁殖牝馬4頭を抱える家族経営の牧場だ。過去には、2007年の東京プリンセス賞を制したアグネスターフなどの活躍馬を生産。現役馬では、JRAのダートで3勝を挙げて準オープンまで昇格しているシグナルプロシードなどがいる。

 「序盤から先頭に立ちましたから、とにかく道中は“行け!行け!”という気持ちでした。直線に向いてもう一度引き離した時、これは勝てるかもしれない…と思いました」とレースを振り返るのは、場主の元道弘直さん。奥さまといっしょにテレビの前で声援を送っていたそうだ。「デビュー戦の内容が強かったので、先々を楽しみにしていた馬なんです。2勝目を挙げたあとから大敗がつづいたのですが、前走のトライアルで2着に入り、運が向いてきたかなと感じていました。矢野貴之騎手の手綱捌きも素晴らしかったですね。息子の嫁は応援馬券が的中したみたいで、興奮していましたよ(笑)」と喜びのコメントを寄せてくれた。

 シャークファングの幼少期について元道さんに伺うと、「人間に対して従順で、手もかからず扱いやすい馬でした。だんだんとトモの筋肉も発達して、早くからスピードのある動きを見せていたのですが…。生まれつき左前脚の繋ぎが極端に立っていて、せりでもなかなか買い手がつきませんでした」と振り返る。サマーセール、オータムセールともに主取りとなって2歳を迎え、日高町のグリーンマイルトレーニングセンターに移動。さらなる調教を積み、ラストチャンスとなるトレーニングセールへ上場。そこで好時計を出し、競走馬としての道を切り拓いた。

 「慎重に脚元を見ながらの調教でしたが、順調に消化できました。能力は高いものを感じていたので、この馬の個性と向き合い、マイペースで育っていけば大成できると思っていました」と話すのは、育成を担当した矢野琢也社長。シャークファングがデビュー戦で後続に1.7秒突き放す快勝を見せたとき、矢野さんは元道さんにお祝いの電話をかけたそうだ。元道さんも「グリーンマイルさんでの育成が素質開花につながったのでしょうね」と育成スタッフに感謝する。

 シャークファングは、父パイロ、母ノースソング(その父アンバーシャダイ)という血統。現3歳世代がパイロの本邦初年度となり、産駒の重賞制覇はブラックヘブン(ハイセイコー記念)に次いで2頭目。初年度から南関東の馬場で存在感を示している。一方の母ノースソングは、JRAの芝レースで1勝を挙げて繁殖となり、5番仔としてシャークファングを産んだ。3代母には、グローリアスソング、デヴィルズバッグ、シングスピール、ダノンシャンティらの祖となるバラードがいる名牝系の出身だ。現2歳の牡馬(父ソングオブウインド)はJRAデビュー予定で、現1歳の牝馬(父オレハマッテルゼ)は今年のサマーセール上場を検討しているという。「1歳は牧場で育っています。牝馬ながら馬格があり、柔らかさも持ち合わせています。放牧地ではいつも先頭を切って走っていますよ」とシャークファングの半妹を紹介。姉につづく活躍を夢見ている。

 「シャークファングには、これからも無事に走って欲しいです。秋吉和美厩舎の皆さん、鮫島明洋オーナーに喜んでもらえるような走りを願っています。幸先よくグランダム・ジャパンシリーズ初戦に優勝できたので、総合でも上位に食い込んでくれると最高ですね。家族経営の牧場なので、私はなかなか競馬場まで行けませんが、次は息子に応援へ行ってもらおうかとも考えています」と愛馬へエールを送る元道さん。生まれつきのハンデを背負いながら、生産者、育成者の努力によって競走馬となり、大きなタイトルへ挑もうとしているシャークファング。トレードマークであるサメのメンコがさらに迫力を増すよう、『グランダム・ジャパン2014』の舞台で大暴れしてほしい。