重賞ウィナーレポート

2013年11月12日 ローレル賞(GDJ)

2013年11月12日 川崎競馬場 曇 良 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クライリング

プロフィール

生年月日
2011年02月18日 02歳
性別/毛色
牝/芦毛
戦績
国内:6戦2勝
総収得賞金
26,355,000円
ハーツクライ
母 (母父)
リングジアラーム  by  スウェプトオーヴァーボード(USA)
馬主
吉田 正志
生産者
追分ファーム (安平)
調教師
田中 淳司
騎手
御神本 訓史
  • クライリングの母リングジアラーム(9歳)
    クライリングの母リングジアラーム(9歳)
  • 父(スウェプトオーヴァーボード)、母(ターンバックジアラーム)ともに芦毛馬で、本馬もきれいな芦毛の馬体をしている
    父(スウェプトオーヴァーボード)、母(ターンバックジアラーム)ともに芦毛馬で、本馬もきれいな芦毛の馬体をしている
  • クライリングが育成時代を過ごした追分ファーム・リリーバレー
    クライリングが育成時代を過ごした追分ファーム・リリーバレー
  • 屋根が取り付けられた周回コース
    屋根が取り付けられた周回コース
  • 坂路コースにも屋根があり、通年で調教が行える
    坂路コースにも屋根があり、通年で調教が行える

 ダートグレード競走の「北海道2歳優駿(Jpn3、門別)」を勝ったハッピースプリント(牡、北海道・田中淳司厩舎)や、「ジュニアグランプリ(盛岡)」優勝&「東京スポーツ杯2歳S(G3・東京)」2着のプレイアンドリアル(牡、北海道・田部和則厩舎)など、今年のホッカイドウ競馬に所属する2歳馬はとにかくレベルが高い。南関東でも、「鎌倉記念(川崎)」をニシノデンジャラス(牡、北海道・堂山芳則厩舎)が、「平和賞(船橋)」を北海道から移籍したばかりのナイトバロン(牡、船橋・出川克己厩舎)が制するなど、2歳交流重賞をことごとくホッカイドウデビュー組が席巻している。

 牝馬路線も、その例外ではないようだ。『グランダム・ジャパン2013』2歳シーズンの第3戦「ローレル賞(川崎)」に北海道から遠征して臨んだクライリング(牝、北海道・田中淳司厩舎)が、1番人気の支持に応え、2着馬に1馬身半差を付ける快勝。5月9日の門別デビュー戦「フレッシュチャレンジ競走」を圧勝して以来、半年ぶりとなる美酒をアウェーの地で味わった。

 「管理をする田中(淳司)先生からも、『輸送を考慮して余裕を残した作りだが状態は良い』との話も聞いていましたし、万全の態勢でレースに臨めると思っていました」と話すのは、追分ファーム事務局の伊関太郎さん。その言葉通り、当日の馬体重は前走のエーデルワイス賞(Jpn3)からマイナス4kg。初の長距離輸送を無事にクリアし、本来の力を存分に発揮することができたようだ。

 クライリングの血統を紐解くと、その祖母ターンバックジアラームは、CCAオークス(G1)、マザーグースS(G1)など、米G1レース5勝を含む22戦8勝の戦績を残したアメリカ産の名牝。アメリカで1頭の産駒を残して日本へ輸入され、追分ファームでの繁殖生活をスタートさせた。すると、日本で初めて産み落としたハレルヤサンデー(牡、父サンデーサイレンス)が、JRAで7勝を挙げてオープンまで出世する活躍を見せる。さらに、5番仔となるリングジアラーム(牝、父スウェプトオーヴァーボード)もJRAで新馬勝ちを収め、現役引退後にはその優秀な血をつないでいくべく、生まれ故郷の追分ファームへ戻って繁殖牝馬となった。そして、ハーツクライを交配して初仔として生まれてきたのがクライリングだったのだ。「本来であれば母と同様にクラブで募集させていただく血統の馬ですが、クライリングは生まれながらに脚元の不安を抱えていました。競走馬としての未来を考えた時、いろいろな困難が立ちはだかるかもしれないとのことで、追分ファームのマネージャーである吉田正志の名義でデビューを目指すことになったんです」と、クライリングがデビューに至った経緯を教えてくれた。

 常に脚元を気づかいながら、追分ファームで慎重に育成されていったクライリング。本格的な騎乗調教も追分ファーム・リリーバレーで行われ、生まれてからの経緯をよく知るスタッフによって管理されていった。追分ファーム・リリーバレーは、2010年11月末にプレオープン、2011年6月上旬に坂路コースを含む全ての施設や事務所が完成してフルオープンし、以後、追分ファーム生産馬を中心に幾多の優駿を競馬場へと送り出してきた。全長1020mの坂路コース、外周1000m、内周600mの周回コースには、いずれも屋根が取り付けられており、厳しい寒さや雪が降り続く冬期間でも、通年で変わらない調教が行える。その恵まれた環境で、クライリングもペースを落とすことなく乗り込みが続けられていった。「田中先生にも頻繁に足を運んでもらい、調教の進度を確認していただきました。クライリングの活躍は、リリーバレーのスタッフにとっても自信につながったと思います」と話す伊関さん。今や牝馬ダート路線の頂点に立つ生産馬メーデイアに続き、追分ファームが手塩にかけた牝馬の活躍に表情も明るい。

 クライリングは、ローレル賞後に川崎の山崎尋美厩舎へ転厩。大晦日に行われる「東京2歳優駿牝馬(大井)」で、『グランダム・ジャパン2013』2歳シーズンの総合優勝を狙う。「血統的に更なる成長力も望めそうですし、環境は変わりますが、東京2歳優駿牝馬でも力を発揮してくれると信じています」とエールを送る伊関さん。現在のところ、カクシアジ(牝、北海道・田中淳司厩舎)が『グランダム・ジャパン2013』2歳シーズンのポイントを大きくリードしているが、最終戦の結果次第では大逆転の可能性も残している。同厩舎出身馬による2歳女王争いから、除夜の鐘が鳴る数時間前まで目が離せなくなりそうだ。